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存在証明  作者: ワタ子
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モーニングルーティーン

『でね、今日は手も繋がれちゃった!!ドキドキした~・・・。』


めちゃくちゃいいじゃん!脈ありでしょ!


『そんなことないよ(笑)全然ない!』


え~絶対好きだって!


こんなLINEがもうかれこれ20分程続いている。

最初は楽しい他人のコイバナ。コイバナというものは、女子の定番の話題の一つである。他人の恋事情をワイワイキャッキャッと話すあの時間。実際盛り上がるし、別になにも悪いことはないのだが、私はもう付き合うだろう秒読み5秒前くらいの話はあまり好きではない。

普通ならば、付き合うか付き合わないかのレベルまで発展したコイバナは、映画でいうクライマックス。大盛り上がりだろう。

私は違う。最初から中盤くらいの好きになって、アピールし、お互いが意識し始めたくらいの話までで十分なのだ。結末は知りたい。だけど、そこまでのクライマックスの過程はあまり得意ではない。

理由として、劣等感が勝ってしまうから。 


同じ大学で、同じ歳で、こんなにも違いがあるのかと軽く死にたくなる。

理由はわかっている。 まず、顔が可愛い。 5回に1回くらいは「あの子どういう関係で繋がったの?ほら、可愛い子。」と言われるくらいだ。スカウトも何回かされている。 しかも、ベビーフェイスときたもんだから、男受けはいいに決まっている。私の経験上、大抵の男は可愛い女の子を好きになる。

中学や高校の頃、女子達のコイバナの相手は8割くらい先輩の話だった。

バスケ部のあの先輩かっこいい~、生徒会長かっこいいなど。 当時、「わかる!かっこいい!」と反応を合わせていたが、そこまで本気で同感したことはない。 かっこいいと思っても、その気持ちは無駄だから。


身長166cm。これだけで自分は恋愛対象外だ。そう、大抵の男は「可愛い」女の子を好きになる。

自分を見上げる低身長の女の子。これって男が一度は憧れるシチュエーションだろう。女の子に見下されたい男子は少数派なはずだ。

この時点で私は他の女子とスタートラインが違う。身長め、許さん。


そうこう考えているうちに、新しい通知が3つ。 

既読するべきか? いや、まだ未読にしておこう。朝からこれ以上劣等感ポイントを貯めるべきではない。今日はバイトもあるんだ。 

のそのそとベッドから身体を起こす。朝ごはんは


・・・食べれればなんでもいいか。


冷蔵庫にあったゼリーを流し込む。そういえば一人暮らしをしてから、食事に対して欲がなくなったような気がする。カップラーメンやレトルトカレーの空の容器がシンクに置きっぱなしになっている。

最初は自炊して、お弁当も作っていたのに。 


今日のメイクもいつも通り。アイラインを垂れ目気味に引いて、チークをほわっと血色感があるようにいれて、最後に可愛いピンクのリップを塗る。

だってこのメイクが男受けも女受けもするメイクだっていうから。

私だって、自分磨きを頑張っている。時々可愛いといってもらえる程にはなった。だけど、そんなもの可愛い子の隣に並べば、ただの引き立て役に早変わりだ。 

個性なんていらない。量産型女子からの脱出!みたいな記事があるが、量産型のなにが悪いんだろう。量産型ってことはつまりは、世の中の多くの人がしているということ。「普通」だということ。

普通って一番安心できる。個性なんて、自分をしっかり持っている人ならまだしも、人に流されやすく、いつも人の目を一番に気にしている私が持ったらどうなるか。


万人受けするメイク、ファッション、バッグ。

これが私の鎧。 「普通」という鎧。


今日もそんな鎧をつけて、私は玄関へと向かった。

今日も「普通」に過ごせますようにと。



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