第五話
順調に握手会は進んだ。
「次が最後の方ですね。」とスタッフの方が確認する。
そこで男性リスナーが入ってくる。
「おうーどうもー」と俺から話しかける。流石に慣れた。
「こんにちは。」と会釈する男性。
「大丈夫?ごめんね、本当に押してて。」
「いえいえ、外はちょっとした騒ぎになってましたが。」
「まじで?いや本当に悪いわ。あ、握手する?」
「あ、お願いします、」と握手をする。
「どう?最近。なんか要望とかあれば聞くけど。」
「うーん……。そいえば、ウィンタさんでないんですか?」
「おい。お前」と笑いながら応じる。
みんな要望聞くとウィンタと口を揃えていいあがって。
男性はキョトンとこちらを見ている。
「色々事情があるんだって。めちゃくちゃ人気だし。彼女。」
「なんかアイドルだったりするんですか?」
なわけ。
「いや、普通に友達。」
「付き合ってたりしないんですか?」
「しないって。本当に。リスナーから殺されるわ。」と冗談半分に返答する。
「そうですね。いやあのときの放送やばかったですからね。」
「いや俺もあれくらいわかせたいんだけどね…」
「でも普段も面白いっすよ。」
「ありがとね。」と少し笑って反応する。
「本当にギリギリ滑り込めてよかったです。ありがとうございました。」
「こちらこそね。今日はやらないけど、これからもよろしくね。」
「あー了解です。」と苦笑いする男性。もっと見てやってくれ。
「じゃあ本当にありがとね。もう疲れたんで。お疲れ様。」と俺は笑い頭を下げる。
「え、いや、本当にありがとうございました。」と男はもう一回頭を下げた。
「じゃあはいよろしくねー。」
男性が頭を下げて出ていく。
その夜。
「おい、真冬。本当に来たんだが。」
真冬は配信のない日はよく家にいる。今日は土曜日だが、イベントということで配信はオフである。
「え?本当に?」と携帯をいじってた真冬が机まで来てパソコンを覗き込む。
「ああ。これ。」と俺は見せる。
『すみません、今日最初に握手会に参加させていただいたものです。一度うちに持ち帰りましたが、やはり本気でベルさんのもとで働きたいです。もしよければご検討宜しくおねがいします。』
「すごい、本気だね。」と真冬。
「どう思う?見た感じあのひと本気そうだったけど。」
「僕は良いと思うけど…」
そこで一つお願いをする。
「もしリアルに会うんだったら真冬も来てくれない?」
「え?僕?」と驚く真冬。
「やっぱ女子いたほうが相手も安心するだろうし。」
「まあそうかもしれないけど。」と真冬。
「もし嫌なら大丈夫だけど、俺的にも真冬がいると安心だし。」と俺。
コミュ障に初対面サシはきつい。
「うーん、わかった。でもウィンタってことはバラさないでね。」と真冬。
「あーおっけい。ありがと。」
「で、いつにする?」
「まあ相手に日程を聞いて俺とお前で合わせる感じで。」
「そうだね。」
「じゃあ日程検討ついたら連絡するわ。」
「了解。」と真冬が近くの椅子に座る。
「で、今日はマリカどう?」
「おーいいね。」
「お前既にテレビに繋ぎ始めるのやる気満々だな…」
「え?楽しいしいいじゃん」
さすがの真冬。
結局そのあと俺はマリカをして、いつも通りボロ負けしました。
ちょっと前に述べた通り、真冬のゲームに関する才能はすごい。
とにかく吸収が早く、ある程度学ぶと自分でスキルを磨いていく。
なにかゲームを紹介しても、五分経てば真冬の独壇場となる。まあ、俺は負けていてもわりとゲームを楽しめるのでワチャワチャやっているのだが。
読んでいただきありがとうございます。
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