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配信者の楽しい大学生活。  作者: 瑞希
学園祭
2/35

第二話

4000字とか言って数えたら2800でした。ごめんなさい。


 俺はリスナー(俺の放送を聞いてくれている人)からの殺人予告に恐怖を覚えつつ放送を立ち上げる。


「おっけー入ってますかー?」俺はマイクに向かって呼びかける。


(入ってる)

(聞こえる)

(おっけ。)

(おそすぎなめんな)

(◯ね)

(遅)


 死ねというメッセージは仕様として送れないので、いや送れないからって似たような言葉で罵倒するのやめろ。

 

 既に閲覧は三百程度。

「五分は本当にすみません。でーあの、そんなに言う?俺はどんだけ殺人予告されなくちゃいけないんだよ。」と俺は画面越しには見えないであろうが頭を下げる。


(草)

(殺人予告はよくわからんな)

(はよ進め)


「で、今日は、まあ色々来てますから。」

 

 お金を先程稼いでるとは言っているが、別にこの配信で馬鹿みたいに稼いでるわけではない。


 真冬が作ったグッズ。本当に人気が出るのだ。通販等も含めて。まさに金のなる木。

 

 なんてゲスなことは言いません。はい。


 ちなみに今度は初の握手会のセッティングもしている。

 握手会はもちろん無料で完全にこちらの赤字だ。グッズの売上で開催できたもの。


「まずはこれ。」と俺はTwitterのDMをキャプチャーして画面に映す。


 基本的にDMに相談などが押し寄せる。


 内容は様々。重い物からネタまで。なんでもかんでも取り上げてるわけではない。意見が言えると判断したものは配信の許可をとり、配信に出す。本当に重いものは、DMで完結させる。

 はっきり言って、想像できないような、釣りを疑うような内容も多い。そういうのも含めて配信に出すことはしない。

 

 だが、人間にとってやはり相談できる相手は大切だと思うのだ。

 インターネットだからこそ。顔が見えず、これから付き合うことはないと断定できるからこそ相談が可能のこともあると思う。


「どう思う?これ。既に連絡は取れるんだけど」

『ベルさんDM失礼します。相談です。…』以後略。

「まあ要約すると、高校生なんだけど、アニメとかが好きなんだって。で、それが親にバレたと。」

 そこでスカイプのベルが鳴る。真冬とのリア垢ではなく、配信用のアカウントだ。


「お、かかってきた。ちょっとこのあとは本人から。もしもし」

『はーい。聞こえます。すみません、宜しくおねがいします。』

「で、悪いけど親にバレてからの話お願いできる?」

『グッズ全部破棄ってか壊されました。』

「うん、とのことです。これリスナーどう思う?」


 あくまで平坦な口調でリスナーに意見を聞く。

 どちらかと言えば、俺の意見よりも周りの反応を知りたい人が多いのだ。


(流石に可哀想)

(いやそれはないだろw親)

(親頭硬すぎ。)

(自分で稼いだ金?)


「リスナーからそれってアルバイトとかで稼いだお金かって来てるけどどっちなん?」

『ほとんどアルバイトですね。たまにお小遣いとかも使ってますけど』

「まじか。それなら話は確かに変わるかも。まあどっちにしてもひどい気がするけどね。俺は。」


(ひどすぎね?)

(親が悪い)

(親がゴミ過ぎ)

(オタクを見下すな。)


「それはひどいね。確か相談内容はこれからどうするかって話でしょ?」

『はい、やっぱりひどいですよね。』

「うん。全部壊されたの?」

『はい。隠してたものを除いて。』


(まじ?)

(てか今まではどうだったの?)


「今まではどうだったの?」リスナーを代弁する。

『今までは親入ってこなかったので。外出中に勝手に入られたって感じです。鍵を締め忘れてしまって。』

「そうなのね。うーんやっぱこれは親が一方的に悪そうだけどな。」


(それな)

(もうつまらんし切っていい)

(可哀想過ぎw)


「可哀想だな。確かに。でもやっぱ止めないほうがいいよ。」

『そうですか。』

「てかそもそもここで止めろって言って君やめるの?」

『……多分結局やめないと思います。』

「だよなー。それに好きな趣味を親の都合でやめさせられるってのはおかしな話だからな。」

『ですよね…』

「じゃあ、ということで。」

『はい。』

「じゃあお疲れ様。」


「やっぱ少しこういうの多いよね。これこそいじめとか差別じゃないの?って思うけど。」


(草)

(それ。バカだよな)

(じゃあやめとけw)

(清潔とかの話もあるけどな。)


 なんともネット廃人が集まってるようで安心しました。

 まあこんな感じだ。


 このあといくつかの悩み相談を終える。

 (おつおつ)とコメ欄にあふれるころには、既に日付変更線を超えていた。


「はい、お疲れ様ー。またね、明日もあれ?明日はどうだっけ。」


 明日はやらないよ、と真冬からLINEが入る。

 よくまあこの時間まで配信見てたな。暇か。


「明日はないっすね。Twitterで告知するね。確認よろしくね。はーいおつかれ。」と俺は配信を切る。

「はあ。」と俺は思いっきり背もたれにもたれかかってため息をつく。


 この仕事は疲れるものの、楽しい。


 人によっては、相談を晒し上げ、嘲笑う(いや嘲笑ってないから)最低な行為と思われることもある。しかし、自分なりに努力をしているつもりだ。できるだけ多くの人の相談に乗り、解決している。それを肯定してくれているリスナーもたくさんいる。もちろん、真冬も理解を示してくれている。


 どうやら掲示板界隈ではゴシップ嘲笑男やら相談晒し上げ野郎だとか罵倒されているらしいのだが、ここで否定しておこう。あとしばく。

 

 ちなみに、悩み相談に乗るときにはコツがある。

 

 とりあえず相手を肯定してから自分の意見を言うことだ。


 〇〇なんですよね…と言ってる相手に、いやそれは△△だろ。というのはナンセンス。

 そう言ったところで、大抵、やっぱそれはわかってるんですけどね…と返ってくる。


 もちろん、わかってんならやれよksとか言うのもナンセンス。

 そもそも悩みとか言ってくる大半は協調を求めているのだ。


 言い方を変えれば、自分の考えを肯定してほしい。自分の選択に自信を持ちたい。

 だからさっきの人も、もともと否定したところでその方法は取らないと言っていた。


 そもそも好きなものを他人の都合で諦めるなんて人生やっていられない。親にそんな権利はない。


 当たり前のことを当たり前に言って相手の決断を促す。そこでその理屈を相手に納得してもらわなければその相談は解決しない。


 さあ、寝るか。

 と、その前にTwitterを開き、配信の謝礼と、週末に迫った初握手会の連絡を入れる。

 

基本二十時に投稿しています。明日も見ていただけると嬉しいです。

感想、指摘お待ちしております。

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