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ステキな女の子に向かって、彼は、とんでもない懇願をしたのでした。
「ワープしてほしい……!」
説明を始めます。
「ぼくは、見える範囲限定で、ワープすることができるんだ」
小学生なのに、大真面目に、まるで中学生のようなことを言ってます。
「人にさせることも可能だ」
言ってて、恥ずかしくないのでしょうか?
「その力を使って、上に上がって、様子を見てほしい」
嗚呼、外聞お構いなしに、もう、怒濤の攻勢です。
「連絡通路がなかったら、諦めます。素直に国道を辿る……」
「でも、もし通路があったら、ラッキーじゃないですか!」
「え……?」
「おっしゃる通りです。ですが、そうでなきゃならない、真っ当な事情があるんです!」
ワープ君、もう“必死のパッチ”で弁舌を奮ったのでした。
「ぼくは、きみの物を持ち歩くことできるけど、きみは、ぼくの物を持ち歩けないだろう……?」
説得の台詞としては意味不明でしたが、つまりは熱意に絆されたのか、やがて――
見えない女の子は、ワープ君に同意した、様子だったのでした。
大っぴらに喜色満面な、ワープ君だったのです。
早速です。彼は声に力を込めて、さながら呪文を、唱えたのでした。
「ワープ!」
ぴゅん! という音が聞こえたような気がしました……?
おもむろに、顔を上に上げるワープ君。やがて頷き――
「ラッキー……」
と一言。
次に、地面に落ちている、見えない何かを拾い集めるそぶりを見せたのち。
真っ赤な顔で、それを大事そうに抱えながら――
これまた見えない、聞こえない案内に導かれるように橋の向こう側面へ進み――
ひっそりと目立たなかった、国道橋の上に上がる連絡通路を、つつがなく発見。
目出度く、当初のルートに復帰することが、叶ったのでありました。