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独りごちのクセでもあるのでしょうか、少年が、足を止め、何もない空間に顔を向けて、会話を始めたのです!?
「はじめまして……」
一拍後、
「ぼくは九尾ワープといいます。小学5年生です」
どうやらワープというのが、彼の名前のようでした。ヘンテコですが、まぁそれはいいとして。これは一体どうしたことでしょう。ワープ君には、重度の妄想癖があるとしか、理解のしようがないじゃないですか――
おかまいなしにワープ君、平気で一人会話を続行します。
「お姉さんは……?」
間を置いて、
「“炬口フクラ”さんとおっしゃる? なるほど、なるほどです」
納得顔で頷き、そして顔を赤らめて、
「とってもお似合いな衣装だと思います!」と言葉を続けたのでした。
何にしろ。
見えないお相手は、どうやらステキな女の子のようだったのでした!
「ぼくと、パーティを組んで頂けませんか?」
「わあ、ありがとう! とっても嬉しいです」
「せんえつながら、ぼくがリードマン。きみがアタッカーということで……」
「了解ありがとう」
傍目には“気の毒な人”と思われかねない一人芝居(?)を延々とやってのけたあと、
「では、ご一緒ねがいます……」
空気相手に、まるでエスコートするかのごとくに、手を差し出して、そして少年としては精一杯にジェントルに、再び足を前に運び始めたのでした。
もはやこの現実を、受け入れるしかありません。彼を見守ろうではありませんか。
「……よろしく!」
ワープ君、最後にそう、微笑んだのでした。