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ここからは特に書き記すものはありません。何たって、国道をそのまま真っ直ぐ行けばいいだけですから。
移動手段も、普通に徒歩です。途中、バス停に差し掛かったときに、タイミングよくバスが来ても、利用しません。
下手にバスに乗って、福良の地区内でバスがあちらこちら、思いもよらずゾーンアウトしてしまったら、目も当てられませんしね。それに、ゴールはやっぱり自分の足でした方が、カッコイイのです。
そういうわけで、ゴール――!
「ピロリン♪」という認証音。パムホを確認します。ゴールは自動判定です。そこには、ゴールの証として、「ゲームクリア」のデコレーション文字、そして現在地を示す○印と、これまでのログ線が表示されていたのでした。
「うん……!」
さすがに、嬉しさがこみ上げてきます。
それは、960m×19.2kmの、比で言うと1対20の、細長い帯でした。くるくると巻けそうな、巻物でした。まさしく、一巻の、“冒険の書”だったのです。
地表上のA地点からB地点まで、真っ直ぐに線を引くと、その線分は、大圏航路になります。すなわち、線分を延長すると、地球を一周する4万kmの大円になるのです。
ということは、このゲームは、今日やりとげたことは、地球の、(一部分だったとは言え、)大円の旅だったのです。
一つのお気軽な、変てこな、仮想地球一周の旅。
ライン長、約19.2km。タイムは、4時間12分でした……。
ふと、顔をあげます。
そこに、美少女が立っていました。
そう、炬口フクラさん、です。
黄緑色の髪の毛、金色の瞳。耳がとがっていて、手足がスラリと長い。
褐色の体に黄色のスクール水着を着てて、足にはピンクのビーチサンダルを突っかけています。
彼女は一つ、魅力的に、祝するように微笑むと、やがて空気に姿を消したのでした。もう、見えません――
少年は別に不思議がることなく、再びパムホに目を落とします。
ボーナスが表示されていました。
『海から海へという難しいコースであったため、その成功を称えてポイントを10倍する』
獲得ポイント数が、192kmと再表示されています。
つぶやきます。
「これで、累計、6087kmか……。まだまだ遠いな」
パムホをポケットにしまい、港の飾り柵に寄りかかると、遠く、水平線のかなたに視線を飛ばすのでした。




