第5話 人魚と繋がれた鎖
お待たせしました!
※今回の話は少しグロテスクな表現が含まれているため苦手な方はご注意ください
では、本編をどうぞ!
人魚と一旦別れた少女は修道院の近くで倒れていました。
「あなた大丈夫!?」
すると、修道院から少し老けた女性が出てきて少女にそう呼びかけました。
女性は返事が帰ってこない事に危機感を覚え、少女をそのまま修道院に連れて行きます。
「ベッドを空けて!意識のない女の子が見つかったの!!」
女性がそう叫ぶと、修道院の人々は大急ぎで少女をベッドに運び看病を始めたのです。
「ん……?ここは?」
しばらくすると少女は目を覚まし周りを確認します。
「ここは修道院です、あなたはこの修道院の近くで倒れていたんですよ?」
「そうだったんですか。助けてくれてありがとうございました」
少女が礼を言うと、女性はニコリと笑い少女に水を差し出しました。
「いえ、困った人を助けるのが私たちの役目ですから。これをどうぞ、私はここの修道院長のマリと言います。あなたは?」
「私はレイカと言います。本当に助けてくれてありがとうございました」
少女が改めて礼を言うと、マリは薬を取りに行ってくると言い残し部屋を後にしました。
マリが部屋から出ていったのを確認すると、少女は堪えられずに笑いだします。
「アハハッ……!ここまで上手くいくとは思わなかったな。何が、困った人を助けるのが私たちの役目ですだ、反吐が出る……」
少女はわざと意識を失ったフリをし、修道院へ自然に侵入できるようにしたのです。
「さて、このままここで寝ていて夜になるのを待つのもいいが、人魚が言ってた王子を探してやらないとな……」
ベッドから飛び起きた少女は、近くの机に少し修道院を見てみますと書いた紙を置き、荷物を持って部屋を出ました。
「というか、やはり修道院というだけあって女神像が置いてあるのか…… 居心地が悪いな」
少女が修道院を見て回っていると、周りの人間とは異なる服を着ている男性とすれ違いました。
「あいつか…… 確認はできたし、後は夜までゆっくり待たせてもらうかな」
少女はさっきまでいた部屋に戻りベッドに入りました。どうやらマリはまだ部屋に戻ってきていなかったようです。
「骨折り損だったな……」
少女は机に置いた紙をポケットの中に押し込みました。
しばらくすると、扉を叩く音と共にマリが部屋に入ってきました。
「薬をもってきたわ。ここに置いておくわね」
マリは薬を机の上に置くと、その薬の説明を始めました。
「で、最後にこれ。もし薬の副作用で眠れなくなった時の睡眠薬よ。かなり強力だから気を付けてね」
かなり強力か…… 良い事を聞いたな……
一通りの説明を終えるとマリは、ゆっくり休みなさいねと言い残し部屋から出ていった。
「これは夜になるのが楽しみになってきたな……」
夜になり、修道院の女性が夕食を届けに少女の部屋に入ってきました。
「体調はどうですか?」
「えぇ、おかげさまでだいぶ良くなりました。だからあなた達にお礼をしなければいけませんね……」
そういって少女は、女性の口に睡眠薬を放り込んだのです。
「え……?」
「少し眠っててください」
そして、困惑の表情を残し女性は倒れるように眠りました。
「本当に強力なんだな」
少女は女性を暖炉の中に入れて燃やしてしまおうと思い、暖炉の前まで女性を運びました。
しかし、部屋の暖炉は少女が住んでいる家の暖炉より小さく、人を入れられません。
「まぁ、こんな時のためにこれを持ってきたんだけどな」
少女は持ってきた荷物から鉈を取り出し、女性の四肢を躊躇なく切断しました。
そしてポケットにしまっていた置手紙を火種にして、手から足と次々に少女は女性の体の一部を暖炉の中に投げ入れていきます。
「四肢を切断したのに起きないとは…… いや、切断した時点で体がショック死したのか? まぁそんな事はどうでもいいか」
少女は女性が全部燃え尽きるのを確認し、不敵な笑みを浮かべました。
「よし、行くか……」
少女が出ていった部屋には、さっきまで少女に笑顔を向けていた女性の燃えカスだけが残っていました。
「マリさん、夕食ありがとうございました」
少女は女神像の前でお祈りをしていたマリに話しかけました。
「あらレイカ、体調はもういいの?」
「もう大丈夫です、薬ありがとうございました。それと、ここは海のすぐ近くにあるのにここの柱は潮風に負けずに随分と乾燥していますね」
少女はマリのすぐ近くの柱をさわり、そしてポケットからおもむろにマッチを取り出しました。
「レイカ…… あなた、何をしているの……?」
「いや、燃えやすそうだなって思ってな」
少女は、先ほどまでマリと話していた声ではなく、声をいつも通りのものに戻します。
「この修道院があると俺が少し困るんだ、だから燃やさせてもらう。修道院の者もお前以外はあらかた処分させてもらったよ」
ここへ来るまでの間に少女は、ここに住んでいる人間の部屋をしらみつぶしに訪れ、王子以外の人間を全員殺してから来たのです。
そして、王子にはすでに睡眠薬を飲ませて修道院の外に寝かせてあります。
少女は準備は万全と言わんばかりに、勢いよく柱に火をつけました。
すると、火は一気に燃え広がり修道院の中は炎に包まれ、近くにあった女神像にまで燃え移った時にマリが叫びました。
「人の恩を仇で返すなんて…… この悪魔!!」
それを聞いた少女は笑いながら荷物から銃を取り出し、マリの額に突き付けました。
「悪魔だ? 俺は人間だよ、あくまでだけどな」
そう言った瞬間、銃声と共にマリの頭が弾丸に撃ち抜かれます。
マリは叫び声も上げずに女神像に寄り掛かるように倒れました。
「ほう、声を上げなかったのか…… まぁ、そんな事したところで何も変わらないけどな」
マリの死体を眺め、少女は修道院を出て王子を約束の場所に運びだします。
「ほら人魚、これがお前の言っていた王子だろう」
少女は王子を人魚の前に転がらせて、近くの岩場に座りました。
すると、人魚は王子に抱きつきます。
「王子様!?どうやって連れてきてくれたんです?」
人魚の質問に少女は修道院を指さし、状況を伝えます。
修道院の姿を見た人魚の顔が嬉しさからどんどん絶望の表情に変わっていきます。
「わ……私はここまでしてくれとは頼んでないわ!!」
「お前の王子と結ばれたいという願いは、あそこに王子の思い人がいる限り絶対に叶わない。でも、その王子の思い人っていうのが誰か分からなかった。だから全員殺してきた」
それを聞いた人魚は、悲しみのあまり泣き出してしまいました。
「酷い…… こんなのあんまりよ……」
「酷い?酷いのはお前の方だろ。自分の願いを叶えるために俺を使い、尚且つ結果が気に食わなかったからって俺を責めたてる。どうだ、ここまで聞けばどっちが酷い人間か分かっただろ?」
そう言って少女は人魚のことを睨みます。
「私にはこの人と一緒に生きる資格がありません…… この人を安全なところに寝かせておいてあげてください」
人魚が王子を離そうとした途端、少女が口を開きました。
「何を勘違いしてるんだ?お前、このまま生きれると思ってるのか?」
少女は立ち上がり、王子と人魚の足と尻尾に罪人が付ける足枷を付け、そして王子と人魚の手を手錠で繋ぎました。
「ほら、これでいつまでも一緒だ」
人魚を掴み、少女は小さな女の子が出せるとは思えない力で2人を海に投げ捨てたのです。
いくら人魚でも、重りがあると泳げないのかどんどん沈んでいきます。
「あぁ、言うのを忘れてたけど…… お前は人魚だから大丈夫だろうが、王子の方は人間だ。すぐに溺死するだろうな、死んだ王子を寿命が尽きるまで眺めるんだな」
少女がふと修道院を見ると、異変に気づいた街の人々によって消火活動が行われていました。
「消火にかかってるのか。もう遅いだろ」
少女は暗闇の中自宅に帰って行くのでした。
次の日、新聞に修道院放火事件の記事が取り上げられていて、犯人の情報提供を求めている文もありました。
「これでこの街の教会、修道院がなくなった。さて、次は何をしてやろうか……」
記事を見ながら少女は、怪しげな笑顔を浮かべるのでした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回更新は金曜日になります
桜餅が食べたい……