表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪逆非道なマッチ売りの少女  作者: ポカ猫
第3章 変幻自在の赤ずきん
48/49

第48話 強欲の杯は満たされず

あいやしばらく

 目を瞑ると決まって同じ夢を見る。

 貴女の首が落とされた、あの場面が何度も何度も映される。

 何も出来なく、手を差し伸べることすら出来ず。

 あの時の私はなんて無知で、そして無力だったのだろうか。

 たった一人の少女が幸せになるために、その為だけに生きたはずなのに。

 夢の中でくらいあの子を救えても良かったはず、だけど夢は私には優しくなかった。これがお前の罪だと言わんばかりに、私にそれを突きつけてくる。


「ん……」


 少女は目に涙を溜めながら、ゆっくりとベッドから身を起こします。


「随分とうなされてたみたいだな」

「ええ、今日のはちょっと一段と酷くてね」


 レイカの悪態をするりと聞き流し、少女は自分のカードを確認します。


 「GREED」と書かれたそのカードは、良くも悪くも少女自身を表しているのは明らかでした。


 彼女自身の願いへの強欲さがそうさせたのか、それともレイカの強欲さが移ったのか。


「おい……!」


 レイカに呼ばれ、少女は我に返ります。


「今回は見に行かねぇのか?赤ずきんの公開処刑を」

「行かないわよ、だって私が赤ずきんなんですもの」


 ケタケタと笑う少女にはもう、人間として大切なものがこぼれ落ちていっているように感じます。


 一人の少女を助けたいという、ただそれだけのしかしとても大きな「強欲の杯」は、どんな事があっても埋まることはないのです。


「ジャンダを殺しに行くわ」

「随分と焦ってるじゃねぇか」

「なんだか胸騒ぎがするのよ」


 そう言って少女は、足早にジャンダの住む小屋に向かいます。








 山奥にある忌まわしきジャンダ、少女が魔法を使う為のきっかけを作った元騎士団員。


「来るのは分かってたよ」

「ええ、お出迎えどうも」


 向かい合う二人、目を合わすだけでジャンダは全身が震える感覚に見舞われます。


 まるで本能が警告を出しているかのような、そんな異様な雰囲気を年端もいかぬ少女が纏っているのです。


「悪魔が来るのは分かってた。でも、契約悪魔だなんてね」

「誰が契約悪魔ですって?」


 少女が両翼を広げ、目の色を変えます。


「いやぁ、知ってる悪魔の気配がしたものだからね、契約悪魔だと思っただけよ。その感じからすると()()()()か……」


 ネームド、言葉通り名前付きの悪魔のことです。

 災厄の悪魔、変化の悪魔。低級悪魔とは違う1人だけで強大な力を持つ悪魔のことです。


「名くらいは名乗ってもらろうか、死ぬ前に名前も言えないのは屈辱でしょ?」

「名前……名前ねぇ……」


 少女は悩むように首を傾げ、目を瞑り考えます。


「私は()()()()()。強欲に暴食をし、色欲を満たす為に嫉妬をしてみたり、怠惰な停滞を促し、傲慢な態度で憤怒する。そんな全ての罪をこの身で表し、全てを壊す悪魔よ。一人の少女を守るためにね」


 怪しい笑みを浮かべながら、少女はトランプを取り出します。


「災厄の悪魔が作ったのが大罪の悪魔だなんて、なかなか皮肉が聞いてるんじゃないの?」

「あいつはそこらのネームドより格が違う。なんせ俺とお前が中にいるんだ」


 レイカと変化の悪魔の会話が頭の中で響きます。

 変化の悪魔と災厄の悪魔、そこから生まれた大罪の悪魔。


 憎むべきものへの慈悲など一切無い、今の少女にこれ程似合う名前はありません。


「GREED」


 少女は「GREED」のトランプに手をかざし、魔法陣を光らせます。


「さぁ、初のお披露目をさせてもらうわよ」


 自分を包み込んだ魔法陣を叩き割り、少女は姿を現します。


 右手には拳銃、左手には鉈。


 生えていた翼は大きなリボンに変わっています。


 手の魔法陣はトランプ解除の魔法にしか反応しなくなった、完全に過去の「レイカ」の戦闘スタイルです。


「強欲のカードはその時貴女が欲する姿に貴女を変えるカード。まさに強欲にね」


 強欲さ故にあの少女になってしまったと付け加える。


 地面の水溜まりを見ると手に持っている物以外は、幸せになれるはずだったあの少女の姿そのものなのです。


 きっと誰にも害されず、悪魔なんかにも会わず、良い家族に巡り会えていたら。きっとこうなっていたであろう姿をしているのです。


 自分が目指すべき場所はこうだと示されているようで、しかしながら手に持つものが幸せへの足枷と言わん対比を生み、少女の表情をぐちゃぐちゃにしました。



「ジャンダ……特別サービスよ。私の()()()()の姿で殺してあげる」

 少女は振り切れない想いを握りしめ、ジャンダをキッと睨みつけます。



最後まで読んでくださりありがとうございました。


次回更新はちと早めにやりたいね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ