第46話 魂を変化させた少女
お久しぶりです。
久しぶりの更新なので楽しんでください
赤ずきんの姿をした少女は顎に手を当て考え事をしています。
「これからどうするんだ」
レイカからそう聞かれた少女ですが、答えないまま頭の中で考えをまとめている様子です。
「まさか私の力で姿そのものを変えるとは思わなかったわ」
「まぁ、私もこんなことをするなんて思いもしなかったわよ」
少女は考えがまとまったのか、少女は人が居ない路地裏まで移動してボロボロの翼を広げました。
「どこに行くんだ?」
「レイカが殺した人たちのところに行くことにするわ。あの子が殺す前に私が始末することにするの、あなたなら誰から殺したなんてのも覚えてるでしょ」
「なら、最初は猟師だがあいつは俺の家に直接尋ねてくるからやめといた方がいいだろう」
レイカは猟師を殺したときのことを思い出しながら、少女にそう言いました。
「じゃあ次は?」
「ヘンゼルとグレーテルだな、森の中でお菓子の家を見つけるまでは彷徨ってるはずだ」
ヘンゼルとグレーテルとは、レイカが猟師を埋める際に出会った幼い兄妹です。
レイカと行動を共にした時にお菓子の家を見つけその中でレイカに殺されてしまいました。
「ヘンゼルとグレーテルを先に殺せば、猟師を殺した時に邪魔されずにそのまま帰れるわけだな」
「でも今から探してもしょうがないから一旦近くの宿に泊まることにするわ」
少女は森から一番近い宿に入り、そこで一晩過ごすことにしました。
宿にはベッドと机があるだけの質素な作りの物でした。
「今もうあの子の中にはあなたがいるのよね……」
「ああ、そうだ。今頃あいつの父親を殺した頃だろう」
「この世界軸だと誰が生きていて誰が居ないのかしら」
前回で少女の体は随分と変わりました。
ただの少女から二体の悪魔を体に取り込んで、完全な悪魔になったからです。
レイカと契約をし、半悪魔に。変化の悪魔が宿っていた心臓を食べた事により完全な悪魔へと進化したのです。
「まずこの世界に変化の悪魔は居ないだろうな。契約をした俺と違ってこいつは存在自体を食われちまったからな、アリスの中にも入ってないだろう」
「ジャンダは生きてるの?」
「なんの不自由なく生きてるだろうな」
ジャンダの事を聞いた時、少女は苦虫を噛み潰したような顔をしました。
自分から聞いたのだが、やはり因縁の相手が生きているというのは心地がいいものではなかったのです。
「ジャンダはここでもしっかり殺すとして……早速ヘンゼルとグレーテルとやらに会いに行きましょうか」
そう言って少女は森へと向かって行きました。
いとも簡単にヘンゼルとグレーテルを見つけ、少女は今現在暗闇に潜みながら兄妹の様子を伺っています。
「こんなにあっさり見つかるとは思わなかったわ」
「さすがに夜は眠いのか相当注意散漫になってるな」
兄妹は時折欠伸をしながら、ノロノロとしたペースで歩いていました。
「で、もう殺すのか?」
「こんなところでコソコソしてるのも嫌だしね、さっさと殺すわ」
そう呟いて少女は兄妹の真後ろに立ちました。
「誰だ!って……赤ずきん?」
「っ!?」
ヘンゼルが振り返り少女を見ると、自分の知っている人物と分かり直ぐに警戒を解きました。
「こんなところで何をしているの?」
少女は動揺を表に出さないように、できるだけ当たり障りのないような口調で2人に話しかけます。
「僕達は休めるところがないか探してたんだ、赤ずきんこそどうしたんだ?こんな遅い時間にこんな森の中なんかに」
「おばあちゃんの様子を見たくて……」
ヘンゼルはよく話すが、グレーテルは全くと言っていいほど少女と会話をしません。それどころかずっと少女の事を睨みつけています。
「おかしい、こいつらこんなに警戒心のある奴らじゃなかったはずだ」
少女の頭の中でレイカの声が響きます。
このおかしな状況を疑問に感じつつも、それほど気にもしていないようなそんな声色です。
「どうしたのグレーテル、こっちにいらっしゃい?」
睨みつけているグレーテルに苛立ちを覚えたのか、少女は優しい声で自分のところに来るように誘います。
「穢れた声で私に話しかけないでよ!この悪魔!!」
そう、グレーテルが言った瞬間。
グレーテルの首が体から離れたのです。
「え……?」
ヘンゼルは何が起きたのか全く分かりませんでした。
気がついたらグレーテルの首が落とされ、大量の血を噴き出し倒れているのです。
「人間風情が私に対して悪魔だなんて罵らないでくれるかしら」
「赤ずきん……!お前グレーテルに何をした!!」
ついに状況が理解出来たのか、ヘンゼルがものすごい剣幕で少女を怒鳴りつけます。
「何って失礼な態度をとる人間を殺しただけよ」
「グレーテルが何したって言うんだ!」
「私のことを悪魔だなんて罵ったじゃない」
もうそこには残虐な少女の姿しかありません。
悪魔となった少女は、自らを犠牲にして自分のことを愛してくれた人を救おうとしているのです。
そんな少女の思いは誰にも干渉されません。
そして、ヘンゼルも気づいているのです。
グレーテルの首が落とされた時既に、自分が喰われる側だということに。
しかしそれを悟られないように、自分自身で気づきたくないが故に必死に抵抗します。
「私はね、赤ずきんなんかじゃないわよ。もっともっと悪い悪魔なんだから」
ヘンゼルが自分の首を隠すために手で覆った瞬間、ヘンゼルの心臓に風穴が空いたのです。
少女は銃を使い、ヘンゼルの心臓を撃ち抜いたのです。
「私が同じ手であんたを殺すと思ってるの?相当頭がお花畑ね」
口から大量の血を吹き出しながら倒れるヘンゼルを横目に、少女はトランプを取り出しそのまま2人の死体目掛けて投げつけました。
すると、2人の死体はトランプの中に吸い込まれそのまま消えていきました。
そしてジャックのトランプが、2人の兄妹がナイフを構えているイラストに変化し、トランプに「Hansel and Gretel」と文字が浮かび上がりました。
「こんなにあっさり仕留められる奴らが本当に使えるのかしら」
「使ってみりゃいいだろうが」
その言葉を聞いて、少女は「Hansel and Gretel」のトランプに手をかざし、魔法陣を光らせます。
すると、トランプが光り輝きその場から消えてしまいます。
いつものトランプと違う点は消えたトランプの光が少女ではなく少女の隣にあり、どんどんその光が大きくなっていることです。
その光が消えると、そこにはもう1人の少女の姿があったのです。
「ほう、そのトランプの効果は分身体を作り出すことだったんだな」
そして、その自分そっくりの少女はレイカの声を発しているのです。
「あんたが出てくるのは癪だけど、カードの重ねがけもできるからそれぞれで別のトランプの効果を使うこともできそうね」
効果がわかったからか、少女はすぐさまトランプの効果を解除し分身体を消してしまいました。
「レイカ、あなたは次に私が仕留めていない奴で誰を殺したのかしら」
「残念ながらジャンダをトランプに入れられなかった以上、次はラプンツェルだ。そして生憎ラプンツェルは俺が処刑される前日に接触してる、それまで時間を潰すのにまた隣街だな」
それを聞いて少女は、ボロボロの翼を広げゆっくりと隣街まで飛んでいくのでした。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
次回も気長にお待ちください。




