第42話 シンデレラの思い出
お待たせしました。
今回は少しええ話かもしれません。
では、本編をどうぞ!
鏡の世界から出た少女は、そのままあの少女の家を目指します。
少女が鏡から出た時にはもう外は暗闇に包まれていました。
「これで、探偵マギルが殺されたことを知る人間はいないわね」
マギルは鏡の世界で殺されたのです。
必然的にその事実を知るのはこの少女ただ一人。
「どこに行くんだ?」
レイカがそう少女に問いかけます。
「あの子の家に決まってるでしょ?」
「何をしに行くんだ?」
「最後の懺悔よ……」
そう静かに言うと、少女は再び歩き出しました。
しばらくすると、あの少女の家に着きました。
少女がノックもせずに静かに扉を開けると、そこには誰もいませんでした。
「やっぱり誰もいないのね。前回来た時と同じだわ……」
「今はゴーテルのところにいっているはずだからな、そりゃいないだろう」
レイカが呆れたようにそう言うと少女はある言葉を口にしました。
「ねぇ、レイカ?次私がここであの子に会う時、私はどんな行動をしたの?マギルを私が殺した今、もう同じ行動は取れないと思うの……」
「最後俺のことを止めに来たな」
レイカは気を記憶をたどりにそんなことを言ったのです。
それを聞いた少女は静かに頷きました。
「変化の悪魔…… もしもう一度過去に戻ることになったとして、あなたは私についてきてくれる?」
「私はあなたに食べられたのよ?拒否権なんてないと思うけど?」
変化の悪魔は何を当たり前のことを聞くの?と言わんばかりに冷静にそう答えました。
レイカに関してもその言葉を聞いてため息を付いています。
「レイカも同じってことでいいのよね?」
「俺はお前と契約したんだ。お前が死ぬまで離れねぇよ」
少女は家の中を彷徨いながら昔の思い出に浸っています。
「きっかけは王子のガラスの靴事件だったわね……」
義母と姉達に殺しの身代わりにされそうになっていた少女を、レイカが助けたことが少女とレイカが出会うきっかけでした。
王子に追われていた少女をレイカは文句を言いながらも匿ったのです。
「この部屋懐かしい……」
少女は昔使わせてもらっていた2階の部屋に入り、ベッドに横になったのです。
「私はあの子に何回も命を救われた。だから、私もあの子の命を救わなきゃいけない……」
王子が殺されたと騒がれた日、少女はレイカに家を追い出されたのです。
此処で死ぬか、此処から出ていくかの二択をレイカに迫られ、少女は逃げることを選択したのです。
「私はあなたになら殺されてもいいと思った…… でも、あの時あなたはあんな状況なのに涙を流した…… あの時は私を殺したくないんだって勝手に思ってたけど、今なら分かるわ。引き金が引けなかったのよね」
レイカは少女の独り言を何も言わず静かに聞いていました。
「でもね、私この家で過ごした1日が今まで生きてきた中で一番幸せだった。どんな事と比べてもそう思うわ」
少女は話しながらだんだん涙を流し始めたのです。
話す思いで全てが遠く遠く思えたからです。
「あなたはいつも私を置いてどこか遠くに行ってはふらりと猫のように帰ってきては、めんどくさそうにしながらも私の話を聞いてくれたわよね」
少女の涙はもう止められません。枕を濡らし、嗚咽交じりの鳴き声を出し始めました。
「あなたが断頭台に捕まっているのを見た時、私は困惑したわ。なんでレイカが捕まってるのって、でも私が色眼鏡で見ていただけであなたは色んな悪事を働いていたものね。今ならしょうがないと思うわ」
あの断頭台での事件を思い出すだけで、少女の涙はさらに溢れました。
変化の悪魔も少女の記憶で、同じ光景を眺めています。
「でも、最後に私に…… 私だけに話しかけてくれたあの子は、本当に綺麗な心を持った可愛い女の子だった……」
脳裏に何度も再生されたあの少女の声は消えることはなく、まるで呪いのように少女を苦しめたのです。
だが、その声のおかげで少女は今ここにいるのです。
「あの子の為なら何でもできると思った…… あの子になら全てを捧げてもいいと思った……」
「だってあの子は…… 自分が死の淵に立たされているのに、私のことを思ってくれて…… 私に大好きと言ってくれたのよ?私、あの子にまだ返事も出来ていないのに……」
少女は泣き止み、頬の凝った涙を拭いました。
布団を綺麗に直し、少女は2階の部屋を後にしたのです。
「だから私は何としてでもあの子を救う。その為なら私はいくら手を汚しても構わない……」
そう言って少女が家から出ると、驚くことに日の出の時刻になっていたのです。
少女は気づかぬうちに一晩中思い出に耽り、泣いていたのです。
「懺悔とやらは済んだんだろう?さっさと行くぞ。俺が帰ってくる」
「ええ、そうね。あの子を助ける為の最後の日よ」
「多分俺はマギルを探しているんだろう。つまり、もう時間軸は狂い始めたんだ。ここからどうするのかはお前が決めるんだ」
マギルが殺されたことを国民が知らないということは、マギル殺しの犯人を捜すための行動もなくなるのです。
人々は以前の時のような慌ただしい様子もなく、壁にマギル殺しの犯人を捜す張り紙もありません。
「昨日の今日でマギル殺しがバレるとも思えないけどね」
「多分俺はマギルを見つけられなくて予定を繰り上げてゴーテルのところに行った。そこも時間軸を狂わせる要因だろう。しかし、確実にあの懐中時計と薬は俺の家にしまわれた。今のままだとまたお前が望まぬ惨劇が繰り返されるだろうな」
レイカがあざ笑うようにそう少女に言いました。
「そういえばお前、剣はどうした」
「2階のあの部屋にトランプと一緒に置いてきたわ。もう使わないからね」
そう言って少女は警官隊がいる駐在所を目指しました。
少女が駐在所に着くと、駐在所には沢山の警察官が集まり、今まで起きた事件のことを話し合っていました。
「あなたたち、今まで起きた事件の犯人を捜しているんでしょう?」
不意に少女が警察官達にそう話しかけると、今まで話していた警察官達が一斉に振り向きました。
「なんだお嬢ちゃん。お嬢ちゃんが何を知っていると言うんだ?」
すると、少女はあの少女が持っていた一本の鉈を取り出したのです。
「ええ、知っているわよ……」
「え……?」
少女は怪しい笑みを浮かべながら鉈の刃を警察官達に向けました。
愛する者を目の前で殺された絶望と憎悪に塗りつぶされたシンデレラは、復讐の限りを尽くすために警察官に向けて叫びをあげます。
「私が……!私こそが街を放火し、この国の王子を殺し、国民を惨殺した張本人。悪逆非道の限りを尽くしたマッチ売りの少女なのよ!」
最後まで読んでくださりありがとうございました。
まだ続きますよ。




