第38話 不幸を踏みにじる幸せ
大変お待たせいたしました。
2ヶ月もお待たせして本当に申し訳ありませんでした。
今後は月一では更新できるように努力します。
では、本編をどうぞ!
少女は自分に対して剣を構える剣士を見て、小さくため息をつきました。
「あんたのせいで計画が狂ったわ…… どうしてくれるの?」
「そんなこと知るか!いいからなぜジャンダの姿をしていたのか言え!」
その言葉を剣士が発した瞬間、剣士の首を炎がかすめたのです。
「同じ質問をしてくる人は嫌いなのよ。いい加減にしてくれる?答えないって言ってるじゃない」
「なら、答える気にさせるまでだ!」
そう言って剣士は、目にも止まらぬ速さで少女に斬りかかりました。
しかし、少女はそれを軽々と剣で受け止めそのまま剣士を弾き飛ばします。
「ほら、早く話させる気にさせてよ。準備運動は終わったでしょ?」
「言われなくてもそうするつもりだ!!」
剣士はすぐさま体制を立て直し、また同じように少女に斬りかかったのです。
「芸がないのね…… 同じ行動しか取れないのは機械や単細胞生物と同じよ?」
剣士の攻撃をかわしはしますが、少女はすっかりやる気がなくなったのかあくびをしながら退屈そうな顔をしています。
「畜生!なめやがって!!」
少女の態度を見て頭に血が上ったのか、剣士は素早い攻撃をやめて力いっぱい少女の脳天めがけて剣を振り下ろしたのです。
しかし、少女にとってその剣士の行動そのものが計算のうちだったのでしょう。
少女は分かっていたと言わんばかりに、剣士の剣を自らの足で弾き飛ばしたのです。
「なっ……!」
「剣を失った剣士は一体何なのかしらね」
剣士は剣を取るためにゆっくりと後退りをします。何かを察したのか後退りをする際、決して背中は見せません。
吹き飛ぶ剣を眺めながら、少女は怪しい笑みを浮かべて剣士にそう語りかけます。
「全力をぶつけたのに…… それをあんな軽々と返すなんて、その体のどこにそんな力が……」
「相手の力を見た目で判断するなんて、あなたは戦いの場数が足りないのかしら?それとも単に馬鹿なだけかしら。それと、一つ聞かせてちょうだい。あなたは何の為に戦ってきたの?」
少女はジャンダにした質問と全く同じ質問を剣士に投げかけました。
「何のために戦ってるだと?そんなもの決まってるだろ。人の幸せを守るためだ」
その言葉を聞いた少女を大きなため息をつきました。
「人の幸せを守るため?はぁ…… 本当にくだらないわね……」
「お前に人の幸せの何が分かるっていうんだ!悪魔の分際で幸せを語るな!」
「私から幸せを奪ったのはお前たち人間じゃない。それがなに?幸せを語るな?バカにしないでよ。そのあんたが守りたい幸せの下には、それ以上の不幸が埋まっているのよ?そんなことも分からないあなたこそ幸せを語る資格がないわ」
そう言って少女はぬらりぬらりと剣を引きずり剣士に近づいて行きます。
剣士は吹き飛んでいった剣を拾い、近づいてくる少女から逃げるように距離をとります。
「お前は本当になんなんだよ!」
「恋する乙女かしら」
少女はふざけたように笑いながらそう言いました。
「何が恋する乙女だ!ふざけるな!!どうせ恋してるとか言う相手もろくでもないやつなんだろうな」
少女を挑発するためにそんなことを言った剣士は、その言葉が地雷だったとは思いもしないでしょう。
しかし、剣士は挑発が決まったと思い込み少し得意気にしています。
「ねぇ、遺言はそれでいいのかしら?」
少女は怒りに満ちた顔で剣士にそう問いかけました。
「遺言?何を言ってるん……」
そう言いかけた剣士の首筋をかまいたちのようなものが掠めました。
掠った首筋からは赤い血液が垂れます。
「もう喋らなくていいわよ。遺言は終わったんでしょ?」
「この悪魔が!ふざけるのもいい加減にしろ!!」
「悪魔悪魔うるさいわね。私は悪魔で人間だったあの子を助けるために、心も体も悪魔に変えて全てを彼女に捧げる為に生きてるの。邪魔をする者はたとえ自分自身であろうと許さない。」
少女は怪しい笑みを浮かべて自らの剣を鞘に納めます。
その姿はまさにもう勝負がついたと言っても過言ではない佇まいです。
「あなたが死ぬ前に一つ聞いてあげるわ。あなた名前は?」
「死ぬのはお前だ悪魔。冥土の土産に教えてやる、俺の名前はガインだ」
そう言って斬りかかって来る剣士に、少女は自分の輝く手の魔法陣を見せつけます。
すると剣士の体がピタリと止まったのです。
「な、なんだ……?体が……動かない……」
「さぁ、もう死んでいいわよ」
少女がそう言葉を発した瞬間、剣士の腕がゆっくりと動き出したのです。
剣士は両手で剣をしっかりと握り、なんと自分の体に刃を向けたのです。
「か、体が勝手に……!」
「ふふふ…… 人の体を操る。悪魔っぽいでしょう?」
少女が勢いよく指を鳴らすと、剣士の手がどんどん剣士自身の体に近づいていきます。
「や、やめろ!!止まれ!」
「もう無駄よ」
その言葉と共に、剣士は鎧の隙間から自分の剣で自らの体を突き刺しました。
「ジャ……ン……ダ……」
剣士は口から血を吐き出しながらその場で倒れました。
倒れ際の顔は憎しみ歪んで今にも叫びそうな様子でした。
「さて、続きをやりましょうか」
それから少女は再び街の人々を惨殺していきました。
「アハハハハ!最初の計画からは狂っちゃったけど、これはこれで楽しいわね!!」
少女は笑いながら殺しを楽しんでいます。
それはさながら新しい玩具を与えられた子供のように。
そんな楽しそうな笑い声とは対象的に、街からは阿鼻叫喚が響き渡る。
「ふふふ…… こいつ本当に面白くなってるぜ」
少女の行動を見て、レイカは怪しい笑い声をあげます。
街の人間をあらかた殺し終えた少女は、殺した人間の女性だけの心臓を食べながら民家の屋根で街の様子を眺めます。
「おい、次の朝ついにお前の望みの者に会えるぞ」
レイカはあくび声で少女にそう言います。
「っ……!あの子に……?」
「そうだ」
「この子をここまで狂わせる人間、早く会ってみたいね」
そう、次の日の朝はこの少女とレイカが初めて出会い、運命の歯車が狂い始める日なのです。
「ふふふ…… 待っててね……もうすぐ逢いに行くから……」
少女は持っている心臓を握りつぶし、怪しい笑みを浮かべてそう呟きました。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
次回の更新をお楽しみに




