第23話 聖職者の集い
お待たせしました!
遅くなってしまい申し訳ありませんでした
では、本編をどうぞ!
少女が立っていたのは少し積もった雪の上でした。
ひどく寒い。去年最後の夜でした。
この寒さと暗闇の中、あの少女は道を歩いてマッチを売っているのです。
「本当に着いたのね……」
少女は少し疑うように当たりをキョロキョロとし始めます。
「で、なんでレイカの家じゃなくて寒空の下なのかしら……」
「それはこの時はまだ、あの家にはあいつの父親が暮らしてるからな。いきなりお前なんかが家に現れたらとんでもない事になる。それを見越して時計がここに飛ばしてくれたんだろう」
相変わらず少女の頭の中にはレイカの声が響いてきます。
「レイカ、これからどうすればいいの?」
「聖職者を狩ることを最優先にする。俺たちにとって聖職者はいるだけで邪魔だからな」
忌まわしいような声が響き、少女にもその感情が痛いように伝わってきます。
「じゃあまずこの先にある教会に行くの?」
「いや、この街の聖職者は基本この時の俺が片付けるからな…… 俺らは海を超えた先にある街に向かって聖職者を殺すことにしよう。そこから聖職者がこの街に流れてくるのを防ぐためにな」
少女は近くにある民家の屋根に飛び乗り、レイカが言う海を越えた先の街を眺めました。
「あんな遠いところに行くなら結構時間がかかるわね……」
深くため息をつき、少女は髪についた雪を軽く払い落とします。
「お前の背中にある片翼はなんのためにあるんだ?今は夜だからバレやしないさ」
「本当に大丈夫なの?」
疑うよう少女が呟き、少女は静かに片翼を出しました。
手鏡を取り出し、少女は自分の顔を確認する。
「翼を出すと目の色も元に戻っちゃうのね…… 不便……」
「それと引き換えに力を得たんだ。わがままを言うな」
少女は不貞腐れるように翼を広げ、海を越えた先の街を目指しました。
数分も経たずに少女は街に到着しました。
「やはり海を越えただけあって人々の文化が全く違うわね」
少女はマジマジと街の人間を観察し、聖職者らしき人間を探しました。
「とりあえず教会に行くぞ。そこに行けば1人くらいは聖職者がいるはずだ」
「分かったわ……」
そう言って少女はしばらく歩き、教会の前にたどり着きました。
「翼と目を戻せ」
「分かってるわ」
翼と目を戻し、少女は教会のドアをノックしました。
「すみませ〜ん!どなたかいらっしゃりませんか?」
少女がそう叫び、しばらくすると教会の中から神父か出てきたのです。
「こんな寒い日になんの用事でしょうか。本日の巡礼は終了しましたよ?」
少し不思議そうな顔をしながら、神父は少女の顔をのぞき込みます。
「すみません…… 私旅の者で今日の泊まる宿がなくて…… 1日だけでいいので泊めてくれませんか……?」
「そういう事でしたか。どうぞお入りください、私達は旅の者を匿うのも仕事ですから」
そう言って神父は笑顔で少女を教会の中に招き入れました。
教会に入った瞬間、少女の顔が少し痛みに歪んだのです。
「ぃ……!」
「どうかなされましたか?」
「い、いえ…… なんでも……」
少女は痛みに耐えながら神父について行きます。
「良い教会を引いたな、ここはゴリゴリの正統派の教会だ。だから、悪魔の血が入ったお前の体を蝕んだんだよ。この教会を潰せればこの街も終わりだ」
少女の頭にレイカの声が響きます。しかし、少女は痛みに耐えるので必死でそれどころではありません。
「ここの部屋でお過ごしください。お疲れみたいですしごゆっくりしていってください」
そう言って神父は部屋の扉を締めて出ていきました。
その瞬間、少女は膝から崩れ落ち呼吸を荒くします。
「大丈夫か?」
「ハァ……ハァ…… 大丈夫に見えるの……?」
「その体になって初めてのこの痛みだからな。余計なんだろう、安心しろそのうち慣れる」
レイカはまるで知らん顔という様子で、少女の痛みに見向きもしません。
「なら、さっさとここを潰す事だな。そこの壁に貼ってある紙を見ろ、ちょうど1時間後にこの教会にこの街にいる聖職者がこぞって集まるらしいぞ。そこを狙わない訳にはいかんだろう」
少女はその声を聞きながら片翼を出しました。
すると、少女の顔から少し痛みの表情が和らいだのです。
「この姿だと痛みが少ない……」
「そうか、ならもうその姿でいる事だな。どうせ1時間の辛抱だ」
そう言ってレイカは話すのをやめました。
1時間後、少女が過ごしていた部屋の下のエントランスが騒がしくなり始めました。
「そろそろか…… 準備はいいか?」
「そんなの初めから出来てるわよ。あの子を助けるだもの。なんだってやるって決めてるの」
そう言って少女は物凄いスピードで扉から飛び出し、片翼使って空を飛びエントランスに集まる聖職者達を見下ろしました。
「な、なんだあいつは!?」
1番初めに気づいたのは少女を教会の中に入れた神父でした。
少女は漆黒の片翼を靡かせ、その神父に対して怪しい笑みを浮かべました。
「あの子が生きる為にはあなた達は邪魔なの…… だから、全員1人残らず殺すわよ?」
そう言い終わると、少女は神父のすぐ側まで近づき、伸ばした爪で神父の首を切り落としました。
神父は何が起きたのか分からないという顔で、頭と胴体が離れていきました。
「な、何をするんだ!お前悪魔だな!?」
近くにいた神父が少女にそう問いかけました。
すると、少女はまたしても怪しい笑みを浮かべて近くにあった女神像に飛び乗りました。
「私は愛する人を守るために、人間で悪魔になったの。そこら辺にいる悪魔と一緒にしないでくれる?」
最後の一言はレイカから少女に伝えられた気持ちでした。
「おい、そのお前が乗ってる女神像を破壊しろ。お前の体の痛みはそいつが原因だ」
少女はその言葉を聞いて女神像から離れ、女神像をマジマジと眺めました。
「そう…… こいつのせいであんな痛みを味わったのね……」
少女は肩をプルプルと震わせ、女神像を殴り壊しました。
すると、少女の体にまとわりついていた痛みが綺麗に無くなり、少女の体か軽くなったのです。
「貴様!!そんなことをして許されると思ってるのか!!」
「許されるわよ。だって、愛はどんな事があっても正義なんだから」
少女はそう呟き、砕けた女神像の顔を握りつぶしました。
女神像が粉々になっていく事に少女の体は軽くなり、力が戻ってきます。
「おい、ここにいるのは聖職者だけじゃない…… 面白いことにエクソシストがいやがる。さっさと始末しないと俺を体から出されるぞ」
少女はその言葉を聞き周りを見渡すと、確かに他の聖職者とは違う人間がいたのです。
「あいつね……」
少女はエクソシストを睨みつけて、臨戦体制になりました。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
次回更新は何としても3日以内に更新したいと思います。




