第2話 猟師とお菓子な兄妹
お待たせしました!
皆さんに楽しんでもらえるよう、頑張っていきますのでよろしくお願いします。
では、本編をどうぞ!
大悪人が処刑されてから数日が経ち、街には穏やかな空気が戻りつつありました。
「俺の代わりに処刑された赤ずきんの知り合いの猟師が、真犯人を探しているみたいだな」
少女は街を歩いている時に、そんな風の噂を聞いたのでした。
なんでもその猟師はあの夜に赤ずきんと一緒に居たらしく、そのため赤ずきんを身代わりにした人物を、酷く憎んでいるそうです。
「まぁ、ある訳がないが、もしもの時の為に早めに始末しておくか」
そう言うと、少女は身支度を済ませ、闇市へと向かいました。
闇市に着き、目当ての物を見つけると少女は店の主人を呼び出します。
「この薬いくらで売ってくれますか?」
「お嬢ちゃん、本当にこの薬を買うのかい?相当恨んでいる相手がいるのか?」
主人が少女を見ると、少女は不敵な笑みを浮かべました。
「始末しなければいけない人がいるんです」
「訳ありって事かい、いいだろう。金貨10枚で売ってやるよ」
主人が言った値段は、明らかに子供が出せる値段ではありません。これで諦めるだろうと思った主人はニヤニヤと少女を見ます。
「ありがとうございます。これ、口封じ用の代金と言うことで、少し上乗せしておきますね」
少女は薬の入った瓶を主人の手から取ると、空いた主人の手に金貨20枚をのせました。
「えっ……?」
主人は一瞬何が起こったのか分からず、唖然としてしまいました。
「ま、毎度ありがとうございました!」
少女の背中を眺め、主人にはそう言うしかありませんでした。
家に着いた少女は、猟師が必ず自分の所に来るだろうという確信を持ち、猟師を始末するための準備をします。
しばらくすると、家の扉をノックする音がして、その後にすみません!と言う声が聞こえたのです。
「はい、どちら様でしょうか?」
少女は誰が訪ねてきたのかを知っているのに、わざとらしく扉を開けました。
「あなたに少し用がありまして立ち寄りました、失礼ですがお邪魔しても宜しいでしょうか?」
猟師は帽子を取り、少女に軽く会釈をした後、自らの用事を伝えたのです。
「えぇ、どうぞあがってください。今お茶を入れますので少しお待ちください」
少女は猟師を家にあげ、紅茶の準備を始めました。
「どうぞ、砂糖とミルク、レモンはお好きに入れてください。」
猟師の前に紅茶を置き、少女は猟師と向かい合う形で椅子に座りました。
「用と言うのは他でも無い、この前処刑されてしまった赤ずきんの事なんです」
猟師は少女に対して、さながらお前が犯人だろうと言わんばかりに睨みつけました。
「あの夜、何をしていたか教えてくれませんか?」
「………………」
すると少女は黙り込み、下を向いて唇を噛み、震えだしたのです。
「猟師さん、あなたは重大な間違いを3つ犯しました」
「何だって?」
少女は椅子から立ち上がり、猟師に向かって笑顔を向けました。
「1つ目は、私の家に1人で来てしまった事。2つ目は、砂糖やミルクではなく、レモンを紅茶に入れてしまった事。3つ目は………… 俺の正体をすぐに見破れなかった事だ」
少女の目が赤く光り、銃を猟師の口の中に突きつけたのです。
「な……!」
「体が動かないだろ?即効性の痺れ薬だ、お前は砂糖やミルクに何か入っていると警戒したみたいだが、俺はそうなると分かっていたからレモンを薬に漬けておいたんだ」
少女は銃の引き金に指をかけ、猟師に向けてこう語りました。
「途中で俺が震えていたのは、何もかもが計画通りに進んで笑いそうになったからだよ。今から大好きな赤ずきんの所へ連れてってやるよ、せいぜいあの世で仲良くな」
そして引き金を引き、猟師の口から血が飛び散りました。
「あまり銃声が響かなかったな、今度からはこのやり方にするか」
そう言って、少女は猟師を麻袋の中に詰め込み、山に向かいました。
「ここら辺にするか……」
少女は地面に穴を掘り、麻袋ごと猟師を地面に埋めたのです。
少女が山を降りようとすると、どこからか話し声が聞こえてきました。
「なんだ?子供の声?」
声がする方に歩いて行くと、そこには少年と少女がキョロキョロと周りを見ながら、小さな声で話していたのです。
「後から見つかると面倒だ、なら今近づいてしまう方がいいか」
少女は二人の方へ行き、男の子の肩をトントンと叩き、振り向かせました。
「うわっ!びっくりした…… 君は誰だい?」
「私……この森で迷っちゃって……」
少女は目に涙を浮かべ、少年に抱きつきました。
「そんなに怖かったのかい?僕らも今帰り道を探しているところなんだ、良かったら君もついてくるかい?」
少年の問に静かに頷き、少女は少年から離れました。
「僕の名前はヘンゼル、こっちは妹のグレーテルだよ」
グレーテルは少女にお辞儀をし、そのままヘンゼルの後に隠れてしまったのです。
「私の名前はレイカって言うの、よろしくね」
(この演技にも慣れてきたな……)
その後、3人は山を歩いていると、屋根がケーキ、壁がパン、窓が砂糖で作られた小さな家を見つけました。
ヘンゼルとグレーテルは一目散に家にかぶりつきはじめました。
2人が夢中でその家を食べていると、中から三角の帽子を被り、紫のローブを着た老婆が現れた。老婆は3人の手を取って家の中に誘い、食事やお菓子で3人をもてなしたのです。
「森の中を彷徨って大変だったでしょう、疲れが取れるまでしばらくここに泊まっていきなさい」
老婆は3人をベットに案内し、寝る前に飲みなさいとジュースを1杯ずつ渡しました。
ヘンゼルとグレーテルはそのジュースを飲むとすぐに寝てしまいましたが、少女は飲まずにジュースを洗面台に捨てて、老婆の部屋の扉を叩き、老婆が出てくるのを待ちました。
しばらくすると、老婆が出てきて、少女を部屋の中に招き入れて椅子に座りました。
「どうしたんだい?眠れないの?」
「いえ、優しくしてくれたおばあさんにお礼をしたくて」
少女は笑顔で老婆に近づき、空になったコップを老婆に渡したのです。
「あなた、私たちを食べる気でしょ?」
「そんな事する訳ないじゃない、どうしてそんな事をすると思うの?」
すると、今まで笑っていた表情を一変させ、老婆を鋭く睨みつけたのです。
「目を見ればわかる、俺と同じ人殺しの目だ。格好の獲物が来たと思ったんだろうが…… 残念だったな、あのジュースの中に眠り薬でも入れてたようだが、あんな怪しいもん飲むのは相当な馬鹿だけだよ」
老婆は悔しそうに少女の顔を見ました。
「飲まなかったらどうしたってんだい。ここは私の家だ、あんたをこの場で殺すなんで朝飯前だよ」
少女は嘲笑うかのように老婆を見て、肩をすくめます。
「お前、どっちが優勢かまだ分かってないみたいだな」
そう言うと、少女は銃を構えてニヤリと笑いました。
それを見た老婆は、青ざめ、生かしてくれと少女にすがりつきます。
「醜いな、人殺しなら最後までそれを貫けよ」
老婆の胸を銃弾で撃ちその後、ヘンゼルとグレーテルが眠っているのを確認し2人をキッチンのオーブンに詰め込みました。
「お前ら2人に恨みはないが、俺の事を知っている人間は、ガキでもいてもらうと困るんだ」
そして、少女はオーブンの火を付けて2人を焼き殺してしまいました。
少女は老婆の家にあった財宝を手にし、自分の家に帰ったのでした。
あれから数日が経ち、新聞で森の奥で子供が2人の焼死体と、老婆の死体が見つかったと言う記事が載っていました。
「今頃見つけるとは…… 恐ろしく人間は愚かだな」
少女は新聞を見つめ、部屋には少女の笑い声が響き渡りました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回更新は水曜日か木曜日になります。
メリークリスマス!!