第12話 魔女狩り
お待たせいたしました!
1週間と言いつつまた2週間ほど空いてしまいました……
では、本編をどうぞ!
「かなりの力を持ったっていうのは俺だけのことじゃないだろ?お前だって他の人間とは違う力があるように見えるぞ」
少女がニヤニヤと笑いながらヨミの顔を見つめました。
「悪魔が……!その子から出ていきなさい!!」
「悪魔じゃないって言ってるだろう?うるさいやつだな……」
少女は、あの時ハーメルンの笛吹き男から奪った笛を取り出しました。
笛にはしっかり少女の名前が刻まれています。
「笛も使ってやらないとな」
少女が笛をひと吹き鳴らすと、家の中にあった家具や食器などがヨミに襲いかかります。
「何なのこれは!?」
ヨミは家具や食器を避けつつ、操られていないナイフなどを投げて応戦し始めました。
家の中に食器がぶつかり合い割れる音が鳴り響きます。
「笛で操った食器に素手で投げたナイフで対抗するとは…… 馬鹿力といったところか」
少女がヨミと乱闘をしているうちに間にかなり時間が経っていたらしく、気づけば外は月明かりに照らされていました。
食器と家具が散乱した部屋に疲れて今にも倒れそうなヨミと、妖しい笑みを浮かべ余裕のある姿の少女が向かい合っています。
「もう夜か…… 昨日の今日だ、まだ満月だろう」
少女はそう言って、笛で操った家具で天井に大きな穴を空けました。
「いったい何を……」
そして、笑みを浮かべながら少女がその場で指を鳴らしました。
少女の後ろの何も無い空間から、あの時と同じ王座が現れます。
少女は今までと同じように足を組んで座りました。
「残念だよ…… 俺が魔女狩りをしなければならないなんてな」
「王というのは自分では戦わないものだ、だからこの街の住人に殺されてくれ」
少女は天井に空いた穴から紫色の光を飛ばし、その光は空中ではじけて街に降り注がれました。
「あなた街に何をしたの!?」
「街の心配よりてめぇの心配をしたほうがいいぞ?もうすぐ死ぬんだからさ」
すると、大量の足音と共に街の住人がヨミの家の入ってきました。
「魔女狩りだ!!!魔女を捕まえろ!!」
住民たちの目の色は紫色に変わっていて、どう見ても普通ではありません。
「魔女!?あなたたちどうしたのですか!!」
「魔女の戯言に付き合うな!!捕まえろ!」
ヨミは大量の住人たちにつかまり、十字架に縛りつけられました。
「やめて!!正気に戻って!!」
「うるさい黙れ!!よし、広場に連れて行け!」
十字架にヨミを縛りつけた住人たちは、その十字架を持って広場に移動し始めました。
広場に十字架を立てられ、公開処刑のように街の住人たちが集まっていました。
その中の人々は全員目の色が紫色になっていて、皆が皆ヨミのことを”魔女”と罵倒しています。
「皆さんどうしたのですか!?正気に戻ってください!!」
「無駄だよ、ここにいる人間がお前の声に耳を傾けることはもう二度とない。そういうふうに操っているからな」
少女が妖しい笑みを浮かべて十字架に縛りつけられているヨミに近づきます。
「レイカ様だ!」
ヨミを罵倒していた人々の中の一人が少女に気づき声を上げます。
すると、今までヨミを罵倒していた人々が今度は”レイカ様”と歓声を上げ始めました。
「どうなっているの……?」
「効力が強すぎたか、うるせぇな……」
少女は少し顔を歪ませてその歓声を沈めました。
そして、ニヤリと笑い鉈を取り出します。
「今ここに街の人間を騙し続けていた魔女がいる。今日は私自らがこの魔女を処刑しよう!」
一度やんだ歓声がもっと大きな歓声に変わり、夜の広場に響き渡りました。
「さて…… 選ばせてやる…… 火あぶりにされるのと四肢を切断されるのどっちがいい?」
少女は笑い声をあげてヨミの首筋に鉈を当てます。
「この悪魔が……!」
「魔女が何言ってやがる」
「違う!私は魔女じゃない!!」
ヨミは少女に対して、憎悪に満ちた眼差しを向けました。
「ちっ……!おい、火を用意しろ!どうやら魔女は火あぶりがお望みらしい」
「かしこまりました!!」
すると、住人たちは広場を照らしていた松明から何本か火のついた松明を調達し少女に手渡しました。
「五人くらい広場に上がってこい、一緒に火を付けようじゃないか」
少女は適当な人間を五人ほど指名し、広場に上がらせて松明を持たせました。
少女が指名した人間の中には、昼に少女にヨミの家を教えてくれた男性が混じっていました。
「レイカ様…… 本当に私どもがレイカ様と同じ場所に立ってもよろしいんでしょうか……?」
「気にするな、今日は無礼講だ。それに、この魔女を殺すことが先だろう?違うか?」
「いえ、その通りです!ありがとうございます!!」
男性が深くお辞儀をして、十字架に縛られたヨミをにらみつけました。
「私は魔女じゃない!お願い信じて!!」
「うるさい!黙れこの魔女が!私に話しかけるな!!」
ヨミの涙の訴えにも男性は耳を貸さず、少女から火を付ける指示が出るのを待っています。
「どうだ?自分の娘に殺される気分は?」
少女がヨミに近づきそう質問をします。
「あんたなんて娘でもなんでもないわ!この悪魔!!」
ヨミが物凄い剣幕で少女を怒鳴りつけました。
すると、その言葉を聞いた少女の体に異変が起きました。
「レイカ様…… なぜ涙を流しているのですか……?」
「涙だと……?」
少女が頬を触ると、エラと向かい合っていた時と同じように目から涙が頬を伝っていたのです。
涙が出ていることとは裏腹に少女は静かに笑い始めたのです。
「ふふふ…… どうやら今のお前の言葉、こいつに聞こえてたみたいだぞ」
少女は自分が付けている星形の髪飾りを指さしてヨミにそう伝えました。
「えっ……」
「どうした?急に青ざめて…… もしかしてとんでもないことを言ったということに今気づいたのか?」
ヨミはその言葉に何も返事を返しません。
「図星か、まったくバカな奴だ。家にいる時こいつの中に俺がいるということは言ったはずだろう?それを忘れていたのか知らないが、自分の娘に”あんたなんて私の娘でもなんでもないわ!”と言い放つなんてな」
何も返事をしないヨミにしびれを切らした少女は、住民たちに火を付けるよう指示を出します。
住人たちが火を付けると十字架の下の方から火が回り、あっという間にヨミを火だるまにしました。
すると、今まで黙っていたヨミが突然大声をあげました。
「私はこの街の住人や自分の娘に殺されるんじゃない!!お前に殺されるんだ!!街の住人や娘は何も悪くない!!」
涙を流しながらそう叫ぶヨミに対して、少女は指を鳴らし魔法で火の強さを上げます。
「そうだ、お前は俺に殺されるんだ。でもな、お前がこいつに言った言葉がそれでチャラになるわけじゃないからな?」
しばらくすると、ヨミは魔法で強くされた火によって黒焦げに燃え尽きました。
燃え尽きたヨミを見て、街の人々たちはまたまた歓声を上げます。
「ここにも時計塔があるのか…… いいことを思いついた」
少女は広場の近くに立っていた時計塔に飛び移り、人々を操っていた魔法を解きます。
すると、今まで歓声を上げていた人々がヨミの焼死体を見て悲鳴を上げ始めました。
街はパニックになり、時計塔の上の少女に見向きもしません。
「アハハハハ!今まであの女が死んだことに歓声を上げていたのに、魔法を解いた瞬間に悲鳴に変わる…… 最高だよ!!」
少女はその様子を見ながら大声で笑い、一通り楽しんだ後は自分の街に帰るために家の屋根に飛び乗り街の出口に向かいました。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
次回更新こそ1週間以内にあげます!




