第八話 ダンジョン
「ーーいてください、--てください」
「抱いてください!」
うぉ!?
って、俺の聞き間違いか、朝は眠いし起立するし嫌になるよ。
「起きてください! もう朝ですよ!」
なんだ、もう朝なのか。
起きてを抱いてに聞き間違えてしまう俺って……
いろいろと溜まってるのかな。
「さぁ準備してください、ダンジョンに行きますよ!」
今日のアンナはやけに張り切っている。
それもそうか、アンナはやっと武器をもてたのだ。
一緒に戦うのが楽しみだな。
「そうだな、装備も揃えたし行ってみるか」
こうして俺達はダンジョンに挑戦するのであった。
ダンジョンのモンスターは外の魔物よりも結構強く、最大で6層までたどりついたパーティがいたが、あまりにモンスターが強すぎて全滅しかけたのだとか。
それでも最下層に行った者がいないと言うのだから、それだけモンスターが強いんだろう。
とりあえず俺とアンナはダンジョンの入り口まで来た。
入り口には何人かのギルドの職員らしき者が冒険者を先導していた。
どうやらダンジョンに入るにはギルドの許可が必要みたいだ。
許可といっても、死んでも責任は取らない、という内容の同意書を書くというものだ。
どうやら同意書を書かせる前は、仲間が死んだのをギルドに文句をつけてくる者が多かったらしい。
ギルドの職員の指示に従い、契約書を書いた後、俺達はダンジョンに入ることになった。
「意外と明るいんですね」
「なんか、思ってた通りと言うかなんと言うか」
迷宮の中は意外にも普通で、周りを石で囲まれた通路を進んでいく形だ。
少し細い通路は壁に埋め込まれている光る宝石で案外明るかった。
先に進むとやはりダンジョンというだけあって魔物が現れた。
でてきたのは小さな緑の小人みたいなのと、青い毛で覆われた二足歩行の牛だった。
多分ゴブリンとミノタウロスだと思う。
相手の魔物は俺達を見つけた途端、勢いよくこちらに向かって
突進してきた。
「アンナ!ゴブリンを頼めるか?」
「はい! わかりました」
俺はミノタウロスがアンナに注意が引かないように剣を抜き、そのままミノタウロスに走っていった。
多分ゴブリンならアンナでも倒せるだろう。
突進してくるミノタウロスをなんとか避けながら剣を突き刺そうとする。
実際本当のミノタウロスと戦のはとても怖い。
大暴れしている闘牛を間近で見ているような感覚だ。
なんとか角の攻撃をかわしながらやっと剣を突き刺した。
そして相手に魔力を流し込むイメージで剣に魔力をこめる。
やはり外の魔物よりも多い魔力を流さないと魔石を破壊できないか。
魔力を流しているとミノタウロスは内側から淡い光を出しながら、
小規模な爆発をしたかのように消えたのであった。
「アンナ、大丈夫か!」
後ろではアンナとゴブリンが戦っていた。
どうやら彼女はゴブリンの攻撃を、武器で防御するのがやっとのようだ。
このままではアンナが危ない。
今思うと、目が見えるようになってからまだ剣の技も教えてない。
しかも、ろくに剣も振ってないのだ。
俺はゴブリンの細い首を狙い、スパッと切り落とした。
するとまず切り落とされた首は色が抜け灰になり、体が小規模な爆発を起こし消えた。
「アンナ、大丈夫か!」
「は、はい、なんとか……助けていただきありがとうございます」
アンナは笑顔でそう答えてはいたが、その笑顔はいつもと違く、少し暗い雰囲気だった。
進んでいくと俺達は下へと続く階段があったので、降りていくことにした。
「いったいどこまで続いてるんでしょう」
「そうだな、多分あと五回ぐらいは降りるんじゃないかな」
ここに挑戦した冒険者の最高到達地点が6階だそうだ。
ここに来る前、てっきり俺はダンジョンは30階やそこらあるかと思っていたのだが、強い冒険者で6階しかいけないとなると、ここのダンジョンは意外と浅そうだな。
魔王や、その幹部が作ったと言うわけでもなく、人間の賢者が作り出したものだ、そこまで鬼畜な仕様にはしていないだろう。
だがそれだけ浅い階層で強い魔物が出てくるのは気をつけなければいけない。
出てくるモンスターは、とりあえず俺が引き付けて倒して行った。
アンナはとりあえず後ろの方で魔物に狙われないように俺の背後にいるように言った。
進んでいくうちでどんどんアンナの表情が暗くなっている気がした。
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