第六話 奴隷商人のもとへ
えーと、奴隷商人がいるところはここでいいのかな。
そこは町の路地裏にあり、薄暗く少し危ない空気を醸し出していた。
「すいません。奴隷を買いたいのですが」
「奴隷をお求めのお客様ですね。少々お待ちを」
少し体格のいいオネエっぽい人が出てきた。
入る場所間違えて無いよな。
「ではこちらに」
店の奥に案内された。
「今回はどのような奴隷をご所望でしょうか?」
そうだな。女の子でできれば可愛い人がいいな。
「女性でできれば可愛い人がいいです」
「少しお待ちください。条件に合う奴隷を探してきますので」
少し待たされた後、数名の女性が連れてこられた。
布一枚だけしか羽織っておらずいろいろとぼろぼろだ。
「彼女たちはどうでしょう?」
一人は黒髪のロングで体つきも悪くない。顔も美人さんだ。
年齢は俺より年上で20歳ぐらいだろうか。
二人目は青い髪色で後ろで縛っている。
自分より背が小さく年も自分と近そうだ。
三人目は赤髪のロングで、体つきも悪くない。
顔も美人だし、年も俺と近い、かな?
俺の好みだ。
「この人たちの値段はいくらだ?」
「そうですねぇ、だいたい金貨25枚ほどでしょうか」
そのくらいなら持ってるから大丈夫だ。
金貨20枚以上稼いでいてよかった。
少し考えた後、俺は長い赤髪の女の子にすることにした。
「じゃあこの赤髪の子にするよ」
「かしこまりました。それでは金貨20枚をお支払いください」
あれ、25枚より下がったけどどういうことだ?
「どうして値段が下がったんだ?」
「その子は生まれつき視力がとても悪くかなり近くのものでもぼやけているようなんですよ」
奴隷商は不敵に笑っていた。
多分俺が買おうとしてた奴隷がわけありだったからか?
「はい、金貨20枚いただきました。まことにありがとうございました」
俺は彼女を連れ店を後にした。
彼女の髪は赤く、目も綺麗な赤色をしていた。
平均より結構胸は無いが体は引き締まっていて、ボディラインが美しい。
だが、体にはいたるところに打撲痕や傷が目立っていた。
「あ、あなたがわ、私を買ってくれたんですか?」
「うん、そうだよ」
「あ、ありがとうございます! 生まれつき目が悪く見えづらい私を両親は借金の返済のために私を奴隷に……」
彼女は肩を落としながら話してくれた。
「君の名前は? 俺はシュート」
「私の名前は、無いんです。両親は私に名前をつけてくれなかったんです」
「そうなのか」
「なのでシュート様、よかったら私に名前をつけてくださいませんか?」
いきなり女の子の名前を決めろと言われてもな。
名前か、どうすればいいのか。
今後共に旅をするんだし、しっかりした名前付けたいな。
しかしつけるとなると悩むな。
「じゃあアンナって呼ばせてもらってもいいかな? あとシュート様じゃなくて俺はシュート、 呼び捨てでいいよ」
シュート様なんて恥ずかしい。
可愛い人から呼ばれたことなんて一度も無いから凄くドキッとするな
「名前をつけてくれてありがとうございます! シュート様がそういうのであればわかりました。シュートさん」
呼び捨てでは読んでくれないか。ま、いいや。
まだ出会って間もないし、これから慣れていけばいいよね。
こうして俺は可愛い奴隷、アンナを買い一緒に旅をすることになった。
まずは服を何とかしなくては。
アンナが着ているのは布一枚をただ羽織ったような貧相なものだった。
とりあえず服は近くの店で売っていたものを買った。
下着やワンピースなどは自分で選ばせた。
高いかどうかはよく分からないが金貨2枚した。
そういえば生まれつき目が悪いんだっけ。どうしようかな。
魔術で何とかできないかな……
そんなことを考えているうちに俺は泊まっていた宿に戻り一度じっくり考えてみた。
アンナをつれていたので二人分の料金を取られて二人部屋に変えられた。
「アンナ、今日はもう遅いからもう寝ていいよ」
「お、おやすみなさいませ。シュートさん」
そのあともいろいろと考えてみたものの、思いつかなかった。
「やぁ、またまた登場バアルさんだ」
毎度毎度よくでてくるな。
「今日は君に伝えることがある」
なんだ?
「君はあの子の目を何とかしたいのかい?」
ああ、このまま見えずらいままだと可愛そうだ。
「そこで君にプレゼントだよ。君に膨大な魔術の知識をプレゼントしておいた」
いきなりだな、いつの間にしたんだ?
「君が前頭痛がしてた時さ。あげたはいいけどまだ鍵がかかっているんだ。その鍵は生活している内に徐々に解除されていくはずだよ。とりあえずほんの少しだけ開放させておくよ」
その瞬間様々な魔術に関する知識が一気に入り込んでくる感触があった。
痛い、頭が凄く痛いッ!?今まで味わったことが無いかなり激しい痛みだ。
「それだけ情報量が多いと言うことだよ。よし、これで君は世界に一人だけの魔術士になれたわけだ」
余り実感がないな。
そういえばバアルって悪魔だよな、神々しい光放っているけど。
「確かに悪魔といえば悪魔だね」
対価とか必要ないのか?悪魔なら対価を要求するもんだろ?
「対価なんて必要ないさ。しいて言えば君がこの世界を満喫してくれればそれでいいよ」
ずいぶんなもんだな。
言われなくても十分満喫するつもりだ。
「そうか。それならよかった。ではまたね」
バアルと話が終わるとすぐに気を失った。
「――――ください」
「―――てください」
「おきてくださいッ!」
起きると目の前には赤髪の美しい女子が俺を起こしてくれていた。
「やっと起きました。いつまでも寝ていては体に悪いですよ」
「起こしてくれたのか。ありがとうアンナ」
そういうとアンナは少し照れるように視線を下に向けた。
「アンナ少しこっちに来てくれ」
アンナは疑問を抱くようにこちらに近づいてくる。
夢の中でバアルから魔術についてかなり教えてもらった。
多分この世界に俺より詳しい人はいないだろう。
「目を閉じていてくれ」
アンナは俺を信じて目を閉じた。少し頬を赤らめている。
あ、これ変に意識しているな、どうしよう。
そしてお俺は彼女の目の位置に手を当て、バアルにもらった魔術の知識を元に脳内に散らばっている膨大な知識を拾い集め、回復魔法を唱えた。
「部分的回復!」
俺が手を当てている目の部分にはほのかに光が集まり、徐々に治まっていく。
知識をえる途中で自分についても一つ知った。
バアルが俺の体に何かしたのか魔法を使ってもほとんど疲れないのだ。
えーっと、目がいきなり見えたらビックリするかな?
少し危なそうだし注意を払っておくか。
部屋を少し暗くし、アンナに呼びかける。
「ほんの少しずつ、目を開けてみてくれアンナ」
彼女はゆっくりと目を開ける。
「……す、すごいです。今まで見たこの無い鮮明な風景です。これはシュートさんが治してくれたのですか?」
「ああ、俺が治した」
正確にはバアルから貰った力なんだけどな。
「あ、ありがとうございますッ! 奴隷になった私を買い取ってくれてなおかつ私の目まで治してくれるなんて……」
アンナは初めて見た鮮明な景色に喜び、涙を流していた。
「そんなに喜んでくれると、俺も治した甲斐があるよ」
どうやらちゃんと彼女の目は治ったみたいだな。
これで一緒に王都まで目指せるな。
少しおかしい部分もあるかもしれませんがあったらすいません。
新しい旅の仲間アンナさん。これからまだま続きます。
これからも応援よろしくお願いします!




