第二十九話
どうも、シュートです。
私は今、魔王の領土との国境付近に建てられたテントの裏で、何時来るかわからない敵を待っているところです。
「来ませんね」
「そうだな」
そんな他愛も無い会話があたりに響く、そしてすぐに静まり返り静寂になるこの場。
その後、三十分程誰も何も喋らないこの空気が続いた。
俺もさすがにそれは退屈だったので、たまには頭の中に未だ混在している数多くの魔法を整理してみるのも良いだろうと思い、徐に作業を開始する。
整理と言うか、有象無象に追加された魔法の中で使ってみたい魔法があれば試す、と言う程度だ。
「マキ○マイズ○ジッ――」
「それ以上はいけないのじゃ!」
エリーに慌てて押さえられる。
よくわからないが使用してはいけない禁術なのか? いつもは呪文の文字でい意味を理解しているのだが、今回のはよく分からなかったしやめておこう。
適当に色々と発動してみる。
自分の影を無くしたりそもそも視えなくしたりと面白い魔法も多い。
他にも武器や防具に属性を付けるなどもあり、多種多様で扱いきれる自身が無い。
調べていく内に俺は奇妙な魔法を発見した。
神殺し(ロンギヌス)―随分な名前の魔法だ。
俺は手を前に突き出し、実際に発動させようと試みた。
「ッツ―!?」
発動させた刹那、視界が白に染まり、何も見えなくなる。次の瞬間、俺は浮遊感と嘔吐感に俺は意識を手放した。
「シュート様、シュート様大丈夫ですか?」
「あ、ああ。大丈夫だ」
起き上がろうとするが、なかなか起き上がれない。
身体の中から何かが丸々抜けた感覚、酷く疲れている。
「主は何をしたのじゃ? 身体の中の魔力が殆ど残っておらぬでは無いか」
「ちょっとある魔法を試していたんだが……」
辺りを見渡しても前と変わっている様子は無い。
となると地形破壊や人に影響するようなものではないのか。
俺はもしやと思い少し経った後、そこらに生えている木の枝を折り、それを手に持ち先程の魔法を発動させた。
やはり前と同じく目の前が白く染まり、その場に倒れこみ失神した。
「またやりおったのか」
「……」
俺は無言で頷く。本日二回目の魔力枯渇に喋る気力も残っていない。
エリーは不思議そうにこちらを見ている。
「魔力回復は物凄く早いのに、魔力保有量が少ないとは……全く、奇妙なものだ」
魔力は魔力保有量、つまりは魔力を貯めておける限界値があり、それと比例して魔力回復も早まるらしいが俺は魔力回復は早いくせに魔力保有量が釣り合っていないそうだ。
それはそうと手に持っているこの木の枝はどうなっているのだろうか。
いつの間にか日も落ちて薄暗くなり、ある程度回復した頃、エリーに尋ねた。
「エリー、これを見てどう思う?」
「す、すごく、大きいのじゃ……じゃないのじゃ!? なぜそんな木の枝に神殺しが付いておる!」
「試しに付けてみたんだが、駄目だったか?」
「駄目も何もそもそも神殺しなぞ片手で数えられるほどの名のある剣、それこそ我をも殺せるであろう聖剣くらいにしか普通は付いておらぬ」
神殺し、名前の通りやっぱり凄いものだったんだな。流石俺が気絶するだけはある。
いや待て、そうなると神殺しは普通は聖剣ぐらいなのある武器でないと付いていないとなると、たった今俺はこの手で聖剣に匹敵する武器を作り上げたと言うことか?
流石にそれはないか。
他にも照準補正、鋭利硬質化や投擲強化〈極〉なども付けてみたがイマイチ実感が無い。
折角なので試しに投げてみることにした。
念のため、王と方面とは逆方向に投げてみる。
「せいっ!」
ヒュ、―ズバンッ!
衝撃波が起きるほどの物凄い勢いで、手から放たれた木の枝はそのまま雲を付き抜け、山を越えて行った。
「どこまで飛んでいったんでしょうね」
「月まで届いたのでないか?」
興奮していて忘れていたが投げた方向が王都とは反対、魔王の領土方面とはまだ気付いていなかった。
しかもその王都に位置する所に的確に投げている事を。
折角のゴールデンウィークなので一本出しておくことにしました。
文字数は少ないと思いますがこれからもこんな感じで頑張っていきますのでよろしくお願いします。




