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第二十七話

「どうしてこうなった……」


 目の前に広がるのは爆発により、原型が無いほどに崩壊した紺屋が広がっている。


 その荒野には何人もの傷ついた兵士らしき人々が倒れている。



「俺はただ、ただ人間と仲良くしようとしただけなのにッ!」


 そんな悲痛の叫びが艦内に木霊した。



 それは約二日前のこと。


「魔王様、準備ガ整イイマシタ。イツデモ行ケマス」

「そうか。なら今すぐ出撃だ!」

「カシコマリマシタ」


 俺の名前はフィペドリア。

 現在魔王の位に就いているものである。


 俺はさっそくこの大きい鉄の塊に乗り込み、配置されている玉座に座る。

 しかし、この乗り物は一体何なんだ? 名前は確か『ヤマト』と言ったか。



「どうですか?この戦艦(せんかん)大和(やまと)の乗り心地は、イッヒッヒ」


「そうだな。とても素晴らしい、こんな乗り物は生まれて初めてだ」

「それもそうでしょう、何せこの世界で最新の技術を多く使っている全く新しいものなのですから」


 俺の隣で不適に笑っている彼は元神で、その地位をとある神に引きずりおろされたと言う。

 名はケツァルコアトルだ。



 彼は俺の前にいきなり現れ『私の力をお貸ししましょう、そうすればあなたの望みも叶うはずです』と言って、技術提供をしてくれた。


 

 俺の望みはたったひとつ、人間と仲良くなることだ。

 今まで魔族と人間は争いあっていた関係だったが、それは先代の魔王の話であって、俺は違う。


 俺は人間が好きだ。

 特に幼い子供の女が好きなのだ。


 だが、無理に攫えば人間達との関係が悪化してしまう。

 そのために俺は人間と仲良くしたいと思ったのだ。



 そして、魔王は人間の都市の中心である王都を目指して出発したのであった。

 出発したのはよかったのだがあと少しの所で、主砲を扱う部下の手違いにより、弾丸が王都の方向へ飛んでいってしまった。



「大丈夫なのか、あれは」

「そですね、王都の外壁に大穴あける位ですかね」



 あれ、それってまずくない?

 悪い予感というのは随分と当たるものだ。


 しばらく様子を伺ってその場にとどまっていると、一日経ってから、多くの人間達が馬車に乗り、こちらに向かって来ているではないか。


 よく見ると、その馬車に乗っている者たちは皆甲冑や剣など、武装している者たちばかりだった。



「やっぱり警戒されているのか?」

「と言うよりかは排除しに来たのでしょうね」


 やっぱり駄目だったか。

 一度試しにその攻撃を見せてもらったが、とんでもない威力で山を越え、そのまま谷に落ちて行き、谷が崩壊してしまった。


 その威力が自分達の住んでいる所にいきなり飛んできたのだ、宣戦布告と受け取ってもおかしくは無いだろう。



「どうする、一度引き返したほうが……」

「魔王様、少しお待ちください。まずは様子を見ましょう」

「そ、そうだな」



 こんなことではいつまで経ってもあの可愛らしい幼い子供と触れ合えぬ出は無いか! という不満は置いておきつつ、言われた通りしばらく様子を見ることにした。


 だが少し経つと部下達が「攻撃はまだなんですか」、「早く殺さないのですか」と物騒なことを言い始めたので引き返そうとすると、突然ケツァルコアトルがニヤリと笑った気がした。


 主砲が向きを変え、砲身を冒険者に照準を合わせる。

 次の瞬間、放たれるは激しい音と巨大な砲弾。

 その砲弾は兵士の方へと飛んでいき、その辺り一面を焦土に変えた。


 俺は慌てて主砲を操作する部下へ連絡を取る。


「なっ、何をしているッ!」

「魔王様! コチラモ何ガオキテイルカ分カリマセン! 突然動キ出シテ」


 一体どうなっているんだ。

 考えている内にも次の砲撃が行われる。


 草原は瞬く間に原型を失い、冒険者も何十名と吹き飛ばされる。


 

 「どうですか? この威力は」

 「貴様が動かしているのか!」

 「そうですよぉー私が動かしているんですよぉー」


 彼はいきなり態度を変え始め、こちらを煽るように言った。


 「はなから貴方の願いなんて叶えるつもりないですしー、じゃあばいばいッ!」


 そう言って彼は光の粒子となり、何処かへ消えていった。


 そして時は冒頭へと戻る。

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