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第二十六話

 俺と決闘しろッ!か。

 今日は外に地面に刺して魔力を流せば完成するワンタッチの即席テントで外で寝ることにした。



 「アンナ、エリーもう寝るぞ、ってエリーは寝ないか?」

 「我は今日はいい。また敵が来るやもしれないからいざという時に主を守らねばならないのじゃ」

 「私は寝ます」



 エリーはテントの外で空に浮かぶ白く輝く綺麗な月を眺めている。

 俺とアンナはテントの中に入り、寝る準備をする。



 「シュート様」

 「なんだ?ってうわッ」



 彼女が後ろから腕を首にかけてくる。

 何も言わずただ後ろから黙って抱きしめられる。



 「どうしたアンナ」

 「もう少し、このままでいさせてください」



 彼女の熱が伝わってくる。 

 久しぶりに味わったその温もりはとても懐かしく、俺を安心させてくれた。



 「あの時、エリー様とシュート様が落ちた時に私ものすごく心配したんですよ?」

 「......すまなかった」

 「もう、あんな危険な真似はしないでくださいね」

 「わかった。もうしないよ」



 話し終えた後、しばらくそのまま抱きしめられたまま動かなかったが少し経った後開放してくれた。

 俺と彼女は寝る準備を整え終わったので、横になった。


 このテントは少し狭いので三人で寝るには結構窮屈だ。

 二人でも少し狭く感じる。

 

 どうしても近くなる二人の距離。

 顔の火照りは眠るまで収まらなかった。

 そしてどうやらそれは相手も同じだったようだ。




 「どうだエリー、異常は無かったか?」

 「無いのじゃ。我が確認できた範囲で異常は確認できなかったのじゃ」

 「そうか、それならいい」



 俺はテントの入り口上部にあるボタンを押しながら魔力を流す。

 刹那、煙を出し、元の小さい棒状の魔術道具に戻った。


 今はまだ夜が明けきらない未明ぐらいだ。

 確か決闘の場所って仮設テントの後ろとか言ってたよな。


 気乗りしないが仮設テントの裏へと向かったのであった。




 「待っていたぞ」



 まるで起きたてな様子の彼が仁王立ちをして待っていた。

 真ん中には木刀が一本刺さっている。



 「さぁ、その木刀を取れ。それが開戦の合図だッ」



 俺はゆっくりと木刀に近づき、木刀を握る。



 「行くぞッ!」



 俺と彼の間は約五メートルほど離れていたがその距離も直ぐに詰められ、鋭いたて振りをかませられる。



 「ハッ!」

 「ッツ!?」



 俺と同じ転生者なのにかなり剣の扱いに慣れているようだった。

 彼は大きく跳躍し、木刀を俺の頭上に向かって渾身の一撃と言わんばかりに振りかぶる。

  

 

 「必殺ッ、兜割(かぶとわり)!」

 「っとっと、危ねぇだろッ!殺す気か!」


 

 俺は慌てて脚に魔力を送り、後ろに下がり回避した。

 完全に殺しにきてるだろあれ。

 どうすればいいんだ、魔法を使うか?それとも―



 考えている間にも相手の攻撃は続く。

 やはり剣の扱いは慣れていないため、相手に簡単に弾かれてしまう。


 しょうがない、あれを使うか。


 

 相手を傷つけずにこの戦闘終わらせる方法はやはりあれしかないだろう。



 「中位闇魔法 威嚇(ハイ・インティミデイション)!」

 「なッ!?」



 相手はすぐに俺から離れ、距離をとった。

 

 

 「どういうことだ!そのいきなり体中から溢れ出ている殺気は!?」

 

 

 相手の額に汗が流れているのが分かる、いきなりのことだったのでかなり動揺しているのだろう。


 

 「それが貴様の本気と言うことだな。なら俺も本気で行かせてもらうッ!」



 片手を前に突き出すと、何かを唱え始める。



 「力は円環する、世界の断りに―」

 「遅いッ!」



 俺は彼が魔法の詠唱をしている間に距離をつめ、そのまま攻撃へと移る。

 


 「これでどうだッ!」

 「ッツ!」



 俺は全力で木刀を横になぎ払った。

 彼は対応が間に合わずそのまま直撃する。



 ゴスッと鈍い音を立て、脇腹にまともに攻撃を喰らった彼は、その場に膝をつく。



 「まだだ、まだ終わっていない!」



 木刀を突き立て、まだ立ち上がろうとする彼だったが、なかなか立ち上がれない。

 

 しょうがない、これ以上やっても意味が無い。

 こうなったらあれをするしかないな。



 「高位闇魔法、洗礼(エクストラ)殺意(インティミデイション)!」

 「ンッッ!?」



 目に見えるのではないかと言うほどの殺気が辺りに広がる。

 それは黒く、重く相手の意識を蝕んでいく。

 そして数秒後に彼の意識は飛んでいったのであった。


 

 

 「大丈夫ですか?シュート様」

 「あぁ、何とか大丈夫だ」


 

 とは言っても結局そこまで苦戦はしなかった。

 これも全て魔法のおかげだ。

 もし自分に魔法の才能が無かったら、今頃死んでいただろう。

 


 「さて、これからどうするか」

 「敵がまた来るかもしれないのだろう?ここで待ってみてはどうなのだ?」

 

 

 エリーが提案してきたので俺は「分かった」と返事をし、またいつか来るのであろう戦艦大和を待つのであった。 

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