第二十五話
「行くぞ、エリー」
「わかった」
戦艦大和に動きは無いが主砲だけはこちらを狙い続けている。
すると突然後ろから突然の爆発が起こる。
それは空母から発艦したと思われる艦載機の爆撃だった。
気付くと俺とエリーは多数の攻撃機に周りを囲まれていた。
多くの方向から弾丸が飛んでくるがエリーの障壁には敵わなかったため、受け止められた弾丸は跳弾して飛んでいくかぽろぽろと拉げた形になり下へと落ちていった。
「チョコマカト面倒ナッ!」
エリーも広範囲に及ぶ氷の範囲魔法により攻撃機のエンジンを無理やり氷結させた為、多くの攻撃機が失速し、落下していった。
エンジンを止めるのはいいんだが背中に乗っている俺も寒くてしょうがない。
「ようやく近づけたな」
「主ヨ、モウ殺ッテシマッテ構ワナイカ?」
「いいと思うよ」
エリーの得意な紫炎が美しいレーザを大和に向けてはなったが届く前に紫炎は何かの壁によって遮断されてしまった。
「アノドラゴンモ随分強固ナ障壁ヲ持ッテイルヨウダナ」
まさかあの戦艦大和が障壁を持っているなんて。
しかし大和は攻撃を一向にしてくる気配が無い。
「どうするか、このままずっと飛んでても何も起きそうに無いしなぁ」
様子を見ようと少しスピードを落としたとき、まるでその時を待っていたかのようにやつは主砲から発砲する。
空間を振るわせるとてつもなく大きな爆音はさながらドラゴンの咆哮のようだ。
その弾丸はエリーにギリギリぶつかるかどうかという所で外れ、遥か後方に飛んでいった。
そして軌道線を描き、飛んでいった弾は空母に当たる。
空母は突然の出来事に慌てて障壁を張ろうとしたが、努力の甲斐も無く障壁を破り飛行甲板に大穴が開き次の瞬間、爆発落下していった。
「これは......」
「ヒドイナ」
だが、これで大和の主砲の威力が障壁を破るということが分かった。
「あれ、回転し始めたぞ」
「何ヲスルツモリダ?」
船体を半回転させ、そのまま俺達を背に艦隊は帰っていった。
一体を何しに来たのだろうか。
俺たちは気付いていなかった。
大和についている三基の主砲の内、後ろについている一基がエリーを狙っていたことを。
黒煙を吐き出しながら放出された弾丸はそのままエリーの頭部を消し去り、地面に突き刺さり数秒後に爆発した。
「エリーッ!」
糸が切れたように落下して行く漆黒のドラゴン、俺はエリーと一緒に落下して行き、地面につく前に魔法を発動し落下速度を軽減させる。
「大丈夫ですかエリーッ!?」
するとエリーはその声に答えるかのように体を起こし、頭部辺りに淡い青色の粒子を集めた。
首元から徐々に元通りになってゆくエリーの顔。
「我ハチョットヤソットジャ死ニハシナイ」
「エリー、大丈夫だったのか」
エリーは体を人間サイズにすると興奮気味に話した。
「それにしてもあのドラゴンは凄かったのだ!また何時か戦いたい者なのだ」
「それはそうとしゃべり方が少し変わってないかエリー」
頭を手甲弾で抜かれたせいなのか口調が少し変わってしまった。
すこし経ってから辺りの様子を確認する。
爆発の影響で大きく歪んだ土地、倒れている冒険者を手当てして回っている兵士など、ここは地獄絵図だった。
「なぁ、そこの医者様さんよ」
「......なんだ」
俺は仮設の拠点に集められた怪我人を治療して回っていた。
その中の一人の冒険者に声をかけられる。
「無いはずの腕が痛むんだよぉ。まるで指先から釘を打たれてるみたいに痛ぇんだよぉ」
「......」
腕があるべき場所を摩りながら俺に聞いてくる。
黙るしかできなかった。俺は無言で他の者の治療へと移る。
「何故だ、何故それほどの力がありながら冒険者たちを守らなかったッ!」
後ろに来て俺に怒鳴り散らしているのは神の使徒と呼ばれている前の世界、日本からの転生者のようだ。
「俺は逃げろと言っていたはずだが?」
「だからと言って守らない理由にはならない!」
確かに俺も悪いのだろうが彼も彼で仲間が簡単に死んでしまったことに半ば八つ当たりに来たのであろう。
「決闘だ、俺と戦えッ!」
「何故そうなるんだ......」
「いいか、次の日の明け方、この仮設テントの裏に来い。詳しい話はそこでするッ!」
よくわからないが何故か彼は俺と戦いたいようで決闘を申し込まれてしまった。
とにかく今は怪我人が最優先なので治療に戻った。
少し短くなってしまいました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。




