第二十四話
どうも、シュートです。
俺は今、訳の分からない轟音で起きた所です。
その音は窓を激しく揺らし、幾重の人々を恐怖に陥れた。
「何が起こっているんだ?」
「我にもよくわからないが、どうやら壁に大きな穴があいたみたいだ」
「な、何なんですか!?」
外を見ると王都周辺をぐるりと囲む強固な壁が一部大きな穴が開き、崩れていった。
「一体誰がこんなことを」
「向こうの方角は確か、魔王が支配している地域との国境線があった筈です」
となると仕掛けてきたのは魔王か?
まさか二十メートル近くある壁を一瞬で崩壊せるほどの力があったとは。
その後、もう一発程仕掛けてくる思われた攻撃は来ず、ギルドは全冒険者を町の南にある中央広場に集めるよう呼びかけていた。
「先程の攻撃を国王様は魔王からの宣戦布告と受け止めた。よって冒険者達は我ら王国兵士と共に戦場で戦ってもらおう!」
これって強制なのか?
とてつもなく行きたくないのだが。
「なお、来ない場合は国家反逆罪として牢獄行きなので冒険者諸君は必ず来るように!」
その言葉を聴いて先程野次を飛ばしていた冒険者達は一斉に静まり、一気に顔色が真っ青になった。
「主、行くのか?」
「ああ、とりあえずは行かないとな。牢獄に入りたくないし」
「私はシュート様が行く所ならどこへでも付いて行きます!」
王都の人口は一万人程で冒険者はその内の三割を占める三千人だ。
冒険者のほとんどは「とりあえずなって置けばなにかと便利だろう」という考えでなっている物が多く、戦いなれていない下級者が多い。
対して王国兵士達は三百人ほどしかいないので、下級が多いといえ三千の冒険者はかなり足しになるだろう。
かくして冒険者は次の朝、西の城門付近に集められた。
まだ明け方で、凄く肌寒い。
先日降った雪もまだ残っており、地面もぬかるんでいる。
「良く来たな勇敢な冒険者諸君ッ!」
団長らしき人物が声をかける。
「俺たちはまず国の境から十キロ離れた所に拠点を設営する。まずはそこまで移動だッ!」
用意されていた馬車に食料や資材、武器などを載せて移動する。
一時間ほど馬車で揺られているといつの間にか着いていた。
「大きな山が見えますね」
「そうだな」
「これから我より強いやつが来るのか?」
アンナは観光気分、エリーは戦闘モードに入っており、目を輝かせている。
「さぁ、早い所テントを立てるぞッ!」
これから戦争が始まるっていうのに団長さんはいつも元気だ。
テントも立て終わり一段落が着いたので敵の様子を試しに千里眼で見てみる。
「向こうのかなり遠くのほうに何か見えるな」
千里眼にも限界があり、それ以上距離を伸ばすと酔うので酔う一歩手前でとめる。
少し小さいが敵の様子はよく分かる。
浮いているが翼が無いのでドラゴンではなさそうだ。
と言うかあれはどこかで見た覚えがある。
舷側に大きく張りだしたバルジ、空中に浮かんでいるので必要ないと思われる球状艦首。
鐘楼の後ろの煙突からは黒い煙ではなく、青い魔法の粒子がでている。
全長二六三メートル、十八インチ四六センチの主砲はかなりの迫力がある。
この世界においてそれは浮かんでいた。
―超弩級戦艦大和―
ほとんどの人が一度は名前を聞いたことがあるだろう。
他にもアンナ―じゃなかった、まな板の様に船の上が平らな艦、空母が二隻。
大和を先頭にするような形で隊列を成している。
「なぜあんな物がこの世界にあるんだ......」
そう言ってしばらく観察していると、大和と思われる戦艦が横を向き始めた。
そして砲塔をこちらに向け、砲塔がこちらを向く。
「やばいッ!全員今すぐここから逃げるんだ!」
皆は何を言っているかわからないという顔で俺を見ながら笑っている。
ここから戦艦まで大体二十キロは離れているだろう。
だが戦艦にとって二十キロの動かない的は格好の獲物だ。
「アイツ、なにしてるんだ?」
「わからない。もらしたんじゃないのか?」
どうやら召集を受けたのは神の使徒たちも同じだったようだ。
そして装填が終わった戦艦大和は激しい煙を噴出し、発砲した。
その数秒後、弾丸は地面を深く抉り、時限信管により弾丸は派手に爆発をした。
落ちた場所は俺たちがいた所から五十メートル程離れていたが、それでも迫力は凄まじかった。
「あいつ等、わざと一発目を外したな。次は完全に当てに来るはず」
「主、あれは新種のドラゴンか何かか?かなり強そうだぞ」
エリーはどうやら近くまで行って確認してきたみたいだ。
近くにいた神の使徒たちは騒ぎ出す。
「ど、どうするんだよッ!?」
「俺もわからない。分かるのは次で俺たちに絶対に当ててくることだ」
「ッ!?」
その一言で周りは一斉にパニック状態になり、戦争所ではなくなってしまった。
「だが大丈夫だ。俺たち神の使徒と王国兵士たちが力を合わせれば絶対に勝てるッ!」
「ほ、本当なのか?」
「まずは距離を詰めなければ話にならない。相手に歩兵はいないのは確認が取れた。一気に近づくぞッ!」
一気に冒険者達の士気が高まる。
そして行動はすぐに開始された。
「総員、突撃ッ!」
一斉に叫びながら相手に接近して行く。
だが相手はここから約二十キロ先にいる浮いている戦艦や空母。
「しょうがない。行くぞアンナ、エリー」
「わかった」
「頑張ります!」
途中神の使徒達の助けもあって、十キロ程まで近づいた頃だった。
疾っくの疾うに総点は完了していたであろう戦艦の主砲から煙が上がる。
「総員衝撃に注意しろッ!」
相手は榴弾を使ってきたのか地面に当たると激しく爆発し、辺りを荒野に変えた。
数十メートル離れているからといって安心はできない。
榴弾は爆発によって弾丸の破片が広範囲に飛散するように設計されているため、非常に危険だ。
ほとんどの冒険者は神の使徒が張る障壁で守られたが、その範囲外だった冒険者は無残にも数々の破片が体中に深々と突き刺さり、見るも無残な姿になっていた。
「こんなのどう戦えってんだよッ!」
「いいから前を向いて走れ、話はその後だ」
そのまま走っているといつの間にか一キロ程までに近づいていた。
これだと俺たちは完全にいい的だ。
そして一斉に魔法を唱え始める。
「やめろッ!今すぐやめるんだッ!」
「力は円環する、ッ!?――」
神の使徒含め多くの冒険者達は至近距離からの砲撃を喰らい、死亡した。
あたりに広がるのは前あった平原とは比べ物にならない凸凹した大地と荒野だった。
「しっかりしろ輝樹ッ!早く起きろッ!」
「俺の、俺の右腕はどこに行ったんだ?ある筈の腕がないんだ」
彼は砲撃をまともに浴びて体中火傷でただれていた。
魔力である程度は守っていたみたいだが、戦艦の火力をまともに受ければそれも無意味だろう。
右腕の付け根から下は無く、出血も多い。このままだと助からないだろう。
「俺の分まで、生きろよ......」
「輝樹ッ!?起きろ輝樹、輝樹ッ!」
そして二発目が飛んでくる。
それをエリーが持ち前の魔力で障壁を広範囲で作り出し、弾丸を受け止めた。
「あのドラゴンは我と渡り合える気がする」
「俺も行こう。お前一人だと何をするかわからないからな」
あれをドラゴンと思っているの良いとして、共食いと称して鉄の塊食べさせるわけにも行かないからな。
「私も行きます!」
「いや、アンナはここで待っていてくれ。障壁は常に張っておくから安心な筈だよ」
「はい、気をつけて行ってきてくださいね」
俺はエリーの背中に跨り、空に浮かぶ超弩級戦艦へと向かった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
初めて近代兵器を書いてみましたが私の技量不足で上手く書けていませんが頑張っていきますのでよろしくお願いします。
榴弾:手榴弾を大きくして筒に入れて遠くに飛ばすようなものだという認識です。
鉄鋼弾:相手の装甲を貫通させるためのものという認識です。
間違っていたらすいません。




