第二十二話
探し続けて約半日、もう日も傾いてきて森は薄暗くなっていた。
「今日はここで野営するか」
森の中で少し開けた場所に出たのでそこにテントを張ることにした。
「そ、そうですね、初めてを外で営むことになるのですね。少し明るいですが幸い人はいないのでよかったですかね......」
「いや、ただここにテント張るだけだからね!?」
テントはクエストに来る前に町の大通りにあった魔法道具の露店があったのでそこで買ってきたものだ。
魔法道具と言うだけあって値段はやや高めだったが性能も結構高い。
このテントの凄い所はボタンを押すだけですぐにテントが張れるという点だ。
非常にコンパクトで三十センチほどの棒状のものを地面に突き刺し先端についているボタンを魔力を流しながら押す。
ボンッ
煙を上げながら現れたのは中に中に四人ほど寝れる位の広さを持つテントだ。
「魔法道具って便利ですねぇ」
王都はやはり魔法についての研究が盛んらしく多くの魔法関連の道具や武器などが売られていた。
他にも買ったものはいろいろある。
飲む時に魔力で水を作ってくれる水筒や魔力着火剤が出る筒などを買ったのだがほとんど自分で何とかなるのであまり必要はなかった。
「主、魚が焼けたぞ」
「わかった、ありがとうエリー」
これまた市場で買った魚をエリーが使える異空間に物を収納できる魔法で保管してもらっていたのを出してもらい、串で刺して焼いたものだ。
「結構美味いんだなこれ」
「美味しいです!」
「うまいぞッ!」
そんなこんなで腹を満たした俺たちは明日に備えるためにすぐに眠りに着いたのであった。
次の朝。
「おはようございますシュートさん」
「おはようアンナ」
いつの間にか俺の上に圧し掛かっている彼女を俺は無理やりどかし、起床した。
エリーはいつもの様に寝ていない様子だ。
そしてテントをしまい、散策を開始する。
昨日と同じく捜索は難航していた。
一角白兎の気配さえ掴めない為全く場所が分からないのだ。
魔力探査もまるで引っかからない。
こんなのではらちが明かない。
「やっぱり見つかりませんね」
「我ももう一度空から見つけてくる」
こんなに長く散策しているのに音を上げない二人はすごい。
「気配が全く感じられませんね」
「そうだな......そうだッ!」
「どうしたんですか?」
「気配が全く無いならその気配がまったく無い所を探せばいいんじゃないか?」
とある魔法高校の生徒の師匠が"彼を騙すなら気配を消すんじゃなくて気配を偽れ"みたいな事を言っていた気がする。
つまりは魔力探査で気配が全く感じられない所を探せばいい。
ヤツが持っているスキルは隠蔽と探索阻害だと思われる。
エリーが話していたが隠蔽は自分の魔力の気配を限りなく薄くし、探索阻害で気配を完全に消していると推測できるといっていた。
魔力は気配にも関係があり、魔力総量が多ければ多いほど気配は強くなるがエリーなどは対策をちゃんと行っているため余程の人で無いとまず彼女がドラゴンということは気付かないらしい。
とにかく、魔力探査に引っかからないまるで穴が開いているかのような所があるはずだ。
あったッ!
ここから大体二十メートル先に魔力探査に引っかからない空間がある!
「アンナこっちだ!」
「えッ、あっはい!」
俺はアンナの手を掴みその場所へと走っていく。
十メートルほどになっても一角白兎は気付いてないと思っているのかその場から動かない。
「せいッ!」
俺は手に持っていた短剣をヤツがいるであろう場所に投げた。
「キャァァ!」
まさか攻撃されるとは思っていなかったのか一角白兎は盛大に叫び声を上げ辺りの森に木霊する。
短剣が刺さってもやはり一角白兎の姿は見えない。
常時発動の名は伊達じゃないみたいだ。
「キュアッ!」
ヤツは氷系の魔法が得意なようで立ち止まっていると俺たちの真下から氷柱を繰り出してくるので非常に面倒だ。
さて、どう攻撃しようか......
「アンナ、一旦距離をとって体勢を立て直すぞ」
「はい!」
とは言ったもののどうしようか。
相手の姿は見えないが短剣が浮いているのは見えているし攻撃は案外容易だ。
「氷結の牢屋!」
「キュッ!?」
俺の放った魔法によって一角白兎は氷のブロックの中に閉じ込めた。
これで死ぬのかどうかは分からないがひとまずはこれでいいだろう。
「キュアァァァ!」
「ッツ!?」
後方から突然氷柱が飛んで来て、俺の背中に突き刺さる。
「大丈夫ですかシュート様ッ!?」
「あぁ、だ、大丈夫だ、多分」
「全く大丈夫に見えないんですけど!?」
俺に当たった氷柱は俺を完全に貫いており、かなり痛い。
だが痛みと言うよりは傷が熱を発しているように熱い。
「氷、氷結の、牢屋!」
位置は魔力探査で大体分かっていたのでそこら一体をすべて凍りで包む。
鳴き声が聞こえる間もなく一角白兎は氷の中に幽閉されていった。
「と、とりあぜずエリーを読んできて、く、れ......」
「シュートさん!?駄目ですこんな所で眠っては駄目なんです!起きてください、起きてください!」
アンナが必死に呼びかけてくれているのは分かるがどうにも意識が回らない。
一体俺は今なにを考えているんだ。
そして意識は段々と遠のいていった。
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