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第二十話

 エリー、アンナと別れた俺は早速王都の散策に乗り出した。


 「やっぱりいろいろあるんだな」


 王都では魔法の研究がされているらしく、杖なんかも露店で売っていた。


 

 「ガルマ先生、王都では魔法は一般に認識されていますよ......」



 王都の魔法とガルマ先生の魔法って違うのかな。

 そんな疑問を抱きながら散策を続けた。

 

 

 と言うか店を出た時から後ろから着いてきている三人組は一体誰なんだ?

 この感じだとあいつらは魔術師か。


 

 空いている時間に脳内にあるロックが解除されている知識のほとんどは使えるようになった。

 空間把握(コーロスグラスプ)魔力探知(マナブラアス)で位置はもう分かっている。



 とにかく進んでいくと魔法道具なる物を売っている露店がありそこで俺は立ち止まる。

 別に用は無かったのだがある商品が何故かとても気になってしまった。


 

 「ん?これは......葉巻?」

 「最初からそれを選ぶとは随分お目が高けぇじゃねぇか」


 

 店に寄った人全員に言っていそうなそんな言葉を掛けられた後、床に座っている彼はしたから覗き込むように不適に笑った。



 「それは蛇神(じゃしん)の葉巻って言ってな。ここらじゃ有名な蛇神様の一部を混ぜて入れてあるらしいんだ」


 

 何でも彼の話ではこの葉巻はその蛇神が愛用していた物らしく、不思議なことに何度吸っても消耗しないらしい。

 どうやら葉巻が消耗する代わりに自分の魔力が消費されるみたいだ。差し詰め電子タバコならぬ魔力タバコみたいなものか。


 

 この葉巻は蛇神が愛用していた。

 その蛇の名前はジャック、ここら辺では有名な神様だと言う。

 そしてその蛇はこの国で復讐(・・)の象徴として用いられている。



 その蛇はかつては普通の白蛇だったが百年という長い歳月を生きたため、次第に神へと近づいていった。

 そんな神が何故復讐の象徴となったか、それは彼の周りにいた仲間は全員皆殺しにされたからである。


 森の中でひっそりと暮らしていたがとある一体の邪神によってその森ごと焼き尽くされてしまった。

 なんとか生き延びた彼が見たのは森の焼かれる残酷な風景とそこにいたであろう蛇の炭の塊だった。


 

 そんなこんなでこの蛇神は邪神に復讐を果たせたのだった。

 そして、彼はいつしか復讐の象徴として語り継がれるようになったと言う。


 

 「とまぁこんな感じだ。長くてすまなかったなぁ、とにかく一回吸ってみろ」

 

 

 俺は彼に銀貨五枚を渡し、商品を受け取る。


 

 「そういえば葉巻吸ったことないな......」



 そもそもタバコすら吸ったことがない俺には葉巻なんてハードル高すぎじゃないのか?

 どこかの工作員は「芳醇な香りに豊かな風味。立ち昇る濃厚な煙はもはや官能的とすらー」と言っていたような......



 とにかく葉巻を吸ってみることにした。

 魔法で指の先から火を出し、葉巻に火をつける。



 とりあえず一回吸ってから口から離す。

 葉巻から出た風で揺れる煙、ほのかに先からこぼれ落ちる魔力の粒子。



 そして彼はある異変に気が付く。

 


 「あれ、これ、時間が止まってる!?」


 

 空を羽ばたく無数の鳥たちは隊列を崩さずにその場に留まっている。

 先程の賑わいが嘘のように消え、静まり返る通り。



 どうやら本当に時間が止まったみたいだな。

 

 だが空に浮かぶ雲は動いている。

 

 風も吹いているし、木々もざわめいている。



 「時間が止まったというよりは動物の行動が停止・・されたみたいだな」



 魔法を調べてみると回廊操作と位置固定という魔法が使用されていた。


 この魔法は微弱ながら身体に宿している魔道回廊に何らかの操作をし、意識、老化もろとも全て止めてしまう魔法らしい。

 

 位置固定の魔法はその名の通り回廊操作で停止している者の位置を固定するみたいだ。

 地球の自転、公転共もちゃんと計算されているらしく、止まった瞬間秒速四七五メートルで吹き飛ばされる心配も無いようだ。


 

 「さて、俺の後をコソコソと付いてきた三人組に挨拶をしなきゃだな」


 

 止まっている彼らの後ろに着き、もう一度葉巻を吸う。

 一服した後、すぐに魔法は解け人間や動物たちはなんら変わりなく動き出す。


 「どこに消えやがったッ!」

 「分からない。新手の魔法か?」

 「ねぇ、どうするの?」


 あたりを見渡す彼ら。

 だが後ろにいるとは思っていないらしく、俺の存在には気付いていない。


 

 「やぁ、ここで何をしているのかな。私に何か用事でもある?」

 「ッツ!?」

 

 とりあえず声をかけてみた。

 突然後ろから話しかけられたもので三人組はかなり驚いたらしい。


 彼らは後ろに跳び距離をとった。


 

 「で、何の用かな?」

 「......」



 三人とも黙り込んでその場を微動だにしない。

 怖がっているのか女のこの方は足が震えているようにも見える。


 

 「チッ、俺たちだって魔法を学んだんだ!」

 「力は円環する―」


 

 急に頭の中に情報が入り込んでくる。

 これは―呪文か!


 感じから言って炎系統の魔法か?



 「放て、火球ファイアーボール!」



 相手から放たれた火球はどんどんとこちらに迫ってくる。

 


 ―迫ってくるのはいいのだが、呪文で大体の意味が分かってしまったので避けるのは容易かった。




 ヒョイ。




 ~ボフンッ


  

 ある程度進んだ所で火球は速度が落ち、ボフンッと言う音を立てて消えたのであった。



 「なに!?俺の魔法を避けただと!」


 

 確かに不意打ちではあったが呪文を言っている時間があれば普通に避けられる気がするのだが。

 そもそも呪文は本当に必要なのだろうか。



 「ガルマ先生。あなたの魔法の研究成果は王都にも勝っていましたよ」



 ガルマ先生の教えてくれた魔法のほうが使い勝手いいし、呪文もないから楽でいい。

 丸一日くすぐりの拷問があるけど。



 と言う感じでしばらくの間、にらみ合いをしていると後ろから



 「なにをしてるんですか、シュート様?」

 「主、我は腹が減ったぞ」



 王都の散策を終えた二人が帰ってきたのだった。



 「なんか後ろから着いてきてたからなにしてるんだろうなーって」

 「よく分からないですけどどうすれば?」

 「とりあえず帰ろう」


 「ま、待て!」



 そんな感じですんなり帰ろうと思った時、やっと動いた彼らによって俺たちは止められる。


  

 「まだ話は終わってないぞ!」

 「話も何もまず本題にすら入ってないじゃないか」


 

 と言う訳で、彼らから呼び止められる声を無視して宿を探すことにした。



 「金貨一枚になります」

 

 俺は金貨一枚を払い、部屋へと案内してもらう。

 


 白いシーツにふかふかなベッド、お風呂まで完備されている。

 さすがは金貨一枚、値段のだけある。


 「わぁ、すごいですね」

 「今日はもう疲れた。俺は風呂に入って寝る」


 俺はさっさと風呂を済ませて寝ようかと思ったが久々の風呂でつい名が風呂をしてしまった。

 おかげで体は火照っている。


 

 「では我も行ってくるぞ」

 「私もいきます!」


 

 二人ともお風呂は初体験らしい。

 浴室からなんだかとっても騒いでいる声がする。


 

 「しかし、もう王都か......」


 

 通してもらった部屋は三回なので部屋の窓からは夜の綺麗な町並みが見える。

 

 そんな夜景に見惚れているといつの間にかお風呂から上がった二人がベッドで寝ていた。

 

 「俺も寝るか」


 

 部屋の明かりを消し、ベッドに入る。

 

 今日はいろいろあったが楽しかったな。 

 そろそろ次の目標を考えなければ。


 いろいろ考えている内に俺は深い眠りに落ちていたのであった。  

 ここまで読んでくださりありがとうございます!

 やっと二十話までいきました。

 これからも投稿できるように頑張っていきますので応援よろしくお願いします。

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