第十八話
オルマン湖を観光し終わった二人は宿に帰ったのであった。
エリーはいつ戻ってきたのは知らないがとてもご機嫌なようだ。
「ここも満喫したしそろそろ次の町にいくか」
オルマンから出る前に一度ギルドに行ってギルドマスターに挨拶でもしてくるか。
俺は市街地の中心にある大きな建物に入った。
彼は椅子を立ち、後ろを向いて何か名残惜しそうに言った。
「そうか、もう逝ってしまうのか」
「間違ってますよ、まだ死にませんから」
「と、とにかく、行く前に少し頼みごとがあるんだが......」
彼の話によるとこの町の近くにゴブリンやコボルトなどの魔物が拠点を築き動きが活発になってきているらしくそれを止めて欲しいとのことだった。
正直面倒だ。
早く王都に行きたいんだがなぁ.....
「わかりました、引き受けます」
「おおありがとう!恩に着るよ」
ギルドマスターであるシュール直々にその場所に案内してくれた。
「なんだこれ......」
そこにあったのは森の中にそびえ立つ巨大な氷の山だった。
中にはゴブリンが氷漬けにされて微動だにしない。
「どうやらゴブリンは一匹残らず氷の山の中に閉じ込められているようですね」
氷が溶けだしているのか周りの土は水分を含みとても気持ちが悪い感触だ。
「これでもう依頼の仕事は終わりですか?終わったなら帰りますよ」
「ま、まってくれッ!まだ拠点は数多くある!」
その後彼に連れていかれた拠点は全部何らかの形で壊滅しており、俺達が出る幕はなかった。
「な、何故魔物の拠点が全滅しているんだ......」
「氷漬けに消し炭になった荒野、竜巻でも来たかのような建物の損壊......人間に出来る芸当ではないな。」
「一体何のためにしたんでしょう」
「ほ、本当に誰がやったんだろうなぁ.....」
ん?妙にエリーの様子がおかしいな。
目が泳いでいるしいつもと違って顔を逸らしている。
「おいエリー」
「な、なんだッ!?」
「どうした?なんだか様子がいつもと違うような......」
「我はいつもどうりだぞ!?」
あ、これ犯人コイツですわ。
そもそもこんなことできるような魔力総量が多い魔物はここら一帯にはいないし、やったとすると俺たちがオルマン湖観光している間か。
でも俺のやること減ったし結果的によかったんだけどね。
「ま、いいや。」
「シュールさん、もう仕事は無いですか?」
「ああ、態々(わざわざ)呼びつけてすまなかったな」
「いえいえ、これくらいのことなんて事はないですよ。ではまた来るときがあったら挨拶に向かいます」
挨拶を済ませた俺たちはその場を後にした。
結構な箇所を連れまわされたので日もだいぶ傾いていた。
「エリー」
「な、なんだ!?」
「べつになんでもないよ。」
「どうかしたんですか?」
「いやー随分と強い魔物がここら辺にいるんだなっと思ってさ」
あんなは顔を逸らし吹けない口笛がスースーとあたりに響いていた。
その後近くの人目につかない林でエリーにドラゴンに戻ってもらい、俺とアンナは背中に乗り次の町を目指した。
すっかり、日も落ち月が綺麗な夜になった頃。
俺たち二人と一匹のドラゴンは次の町であるポタージュに来た。
だが街の門前まで来るともう門は閉まっており、中には入れなかった。
「今夜は野宿か?我は別に良いぞ」
「いや、野宿はしないよ。魔法で雨風凌げる場所を造るよ」
とりあえず街から少し離れた場所に洞窟風の穴を掘り、その中で寝ることにした。
入り口はエリーが魔法で物理結界を張ってくれているおかげで魔法攻撃以外は入ってこないから安全。
そろそろ王都にも近づいてきたのかな。
アンナにもエリーにも出会えたし社畜人生よりも数百倍楽しい。
でも最近アンナがあまり話してくれなくなったな......
そんなこんなで皆寝たかと思われる頃、アンナは一人起きだした。
「ドウシタ、アンナ」
どうやら元の姿に戻っているようだ。
洞窟の入り口から入ってくる月明かりは漆黒の体を綺麗に映し出していた。
「最近悩むんです。本当にこれでいいのかなって」
「ドウイウコトダ?」
「私みたいな奴隷がこんな普通の人みたいに扱われていて良いのと思ってしまって......」
最近あまり話してくれなくなった理由はこう言うことだったのか。
「ソコマデ悩ム必要ハ無イトオモウゾ」
「主ハオ主ノ事を奴隷として買ったがパートナーとして扱ってくれているではないか」
「そうでしょうか......」
俺は王都についたときに、アンナを奴隷から開放しようと思う。
そして彼女が許してくれるなら一緒にのんびり暮らしたい。
「とにかくお主はやりたい事をすればいい。それも駄目なら、精一杯主に尽くすといい」
「......がんばります。精一杯尽くして自分のやりたい事を探してみます!」
どうやら上手くいったみたいだな。
二人の会話が終わった後俺は、すぐに深い眠りに落ちていったのだった。
そして洞窟に朝日が差し込み、起きると俺の上にはアンナが乗っかっていた。
柔らかいお尻の感触、今にもエクスカリバーが岩から引き抜けそうだ。
「なにをしているんだ?」
「誠心誠意シュート様に尽くそうと思いまして」
倒れ、重なり合う二人。
「これからも私の心と体は全部シュート様のもの、ですからねッ」
一夜で随分と様変わりしたものだ。
だがそこには足りないものがあった。
重なり合ったのはいいんだがそこにあったのは俺の胸板とアンナの胸板だった。
そう、胸が足りなかったのだ。
こればっかりは将来に期待ということで。
かくして俺たちは準備を済ませ洞窟を出た。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
二週に一度という事になってしまい申し訳ございません......
次回からはちゃんとだして行こうと思います。




