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第十二話

 「うぅ、違いますよぉ、この人との関係ははそんなんじゃないんですぅ...」


 朝起きたら何故か俺の隣で寝言を言いながらスヤスヤと眠るアンナの姿があった。


 確かに俺は寝る時にはちゃんと自分のベッドに入り寝たはずなんだが......。


 辺りを見て確認するとやはり俺は自分の寝た場所の一番窓側の場所だった。

 となるとアンナが自分で俺のベッドに...


 「あぁ、おはようございますぅシュートさん」


 アンナは目を擦りながら目を覚ました。


 「何故アンナが俺のベッドで寝ているんだ?」

 「うーん、よくわからないですぅ」


 そして一体いつから起きていたかは知らないが窓から外を覗いているエリーがいた。

 エリーは少し笑いそうなのをこらえてこちらを見てくる。


 「おい、まさかお前が犯人か?」


 睨みながら疑いの視線を向けているとにやけているエリーは答えた。

 

 「スマンな、少し面白そうだったのでシュートの寝床にアンナを運んだのだよ」


 エリーは笑いをこらえきれずにクスクスと笑い始めた。


 「あぁ、そうかお前が犯人なんだなぁ」

 

 俺は左手に魔力を集め、エリーの方へ向ける。


 「わ、悪かった!悪かったからその集めている魔力をこちらに向けてないで欲しい!」

 

 俺は沸騰している熱湯を思い浮かべ、魔法を解き放った。

 魔法で作り出された熱湯はそのまま水鉄砲のごとくエリーに降りかかった。


 「ギャァァ!熱いぃ!」

 「次やったらお前が吐いたような火炎を出すからな」


 そんな何気ない朝を迎え、俺たちは再び王都に向かうため準備を進めた。



 宿の外はいつも通り騒がしく、活気に満ち溢れていた。

 ダンジョンに挑む準備をしている冒険者や、そのダンジョンで稀にドロップする魔物の部位を商人達が売っていたりと様々だ。


 ドロップした品が希少で高値で買い取られていると知っていたら床に落ちた物を拾っていただろうに。

 もったいない事をしてしまったな。


 でも今日はいつもとは違う別の騒がしさがあった。


 「聞いたか?あの話」

 「ああ、王都で神の使徒を異世界から召喚したって話だろ?」


 か、神の使徒?何なんだ神の使徒って。

 もしかしてあれか?1から13ぐらいいて、なんか巨大な兵器とかで戦うのか?


 「なぁ、神の使徒ってなんなんだ?」

 「そんなの神がこの下界に遣わした者、まぁ勇者とかのことだろう」


 なんでもその異世界から呼び出された使徒達は勇者クラスの力を持っているらしい。


 「勇者か、我も久しぶりに戦ってみたいものだ」

 「お前が戦った勇者ってどのくらい強かったんだ?」

 

 エリーは遠くを見つめてなんだか懐かしそうに答えた。


 「そうだな、我が戦った勇者はかなり強力な相手だったが今のシュート程では無かったな。

  剣でチクチクとむず痒かったら、その剣を軽くへし折ったな」

 

 勇者の剣をむず痒いって。しかもそれを軽くへし折るって......

 その剣を作った職人が聞いたら心が折れていそうだ。

 

 でもそうなると俺は並の勇者よりは強いみたいだな。


 「あ、そうだ、その勇者はシュートと同じように魔法を使っていたぞ。

  ただ何か小さな声で言った後魔法が発動していたし、かなり効率の悪そうな魔法だった」


 勇者が魔法か...まぁアンナが話してくれたおとぎ話にも魔法を使える勇者が出てきてたからな、でも本当に魔法が使える人がちゃんといたんだな。


 「さて、次の町はここからどれくらいかかるんだ?」

 「聞いた所によると馬車に乗って1週間ほどかかるところにあるみたいですよ」 

 

 どうやら事前に調べてくれてみたいだ。俺が褒めて頭をなでてやるとアンナは照れくさそうに頬を少し赤らめた。

 それにしても馬車で1週間か。これまでは歩きや走りでギリギリ日没までにはつける距離だったんだけどな。


 「とりあえず冒険者ギルドに行こう」


 俺たちは次の町までの馬車の護衛の依頼がないか冒険者ギルドに探しに行った。

 

 「あ、丁度いいのがありましたよシュートさん」


 アンナが壁に貼られていた依頼書をはがして見せてきた。

 ふむふむ、次の町のオルマンまでの馬車の護衛か。一週間の護衛で銀貨50枚か。

 まだ金についてまだよくわからない。

 これが妥当な値段なのか?アンナが選んでくれた依頼だから多分大丈夫だろう。


 俺はこの依頼書をカウンターへと持っていく。

 

 「すいません、これを受けたいのですが」

 「はい、少々お待ちください」


 受付にいたのは黒色で長い髪の女性だった。

 小柄で物静かそうでどこか忙しない姿はとても可愛らしく、どこか守ってあげたくなるような感じだった。


 「では冒険者カードを呈示してください」

 

 俺は指示に従い、冒険者カードを渡す。

 やっぱり小柄な女性もなかなかにいいものですなぁ。

 歳はまだ10代後半だろうか、まだ実っていない果実もこれからを考えると―

 

 などと受付の女性をずっと見つめていると隣から何か殺気じみた視線を感じた。


 「シュートさんはああいう女性がタイプなんですか......?」


 アンナが物凄い黒いオーラを発しながら俺に聞いてきた。

 俺はそれに苦笑いで答えるしかなかった。



 「はい、では依頼を完了できましたらギルドに行ってカードを呈示してください。

  そうすれば依頼金は受け取れますので」


 俺は話を聞いた後、集合場所である次の町の方面の門の前に向かうことにした。



 

 「お、来たか。お前が最後の護衛の冒険者だな」

 

 話しかけてきたのは鉄と思われる金属で所々を覆ったいかにも戦士という傷がいたるところにある冒険者だった。


 「よろしくお願いします」

 「ああ、よろしく頼むぜ」


 全部で3つのグループで人数は俺たちを含めて11人ほどで三個ある馬車を護衛するらしい。

 

 「1つにつき1グループか......」

 「一週間ですか、やっぱり少し遠いですね」


 今まで馬車の護衛なんてしたこともないし、ましては野営も一度もしたことがないので不安だらけだ。


 「まぁそう気張るなよ、短い付き合いだが一緒に頑張って行こうじゃねぇか」

 「は、はい、そうですね。頑張ります」


 かくして俺達は次の町に行くために馬車の護衛任務に就いたのであった。



 ~一日目~


 俺とアンナとエリーは一番後ろの馬車の護衛になった。

 ちょくちょくゴブリンやコボルトなどが出てきたが俺達が出る暇もなく前のベテラン冒険者達が倒してくれているので案外暇だったりする。


 「はぁ、なんで我がわざわざ一週間も地面を這いつくばって次の町へ行かなければならない」

 「ドラゴンが急に現れたら皆驚くだろ?とにかく我慢してくれ」


 エリーは退屈そうにとぼとぼと歩いていた。

 このままだと魔物と戦闘になった時に大暴れしそうで恐ろしいな。


 そんな感じで馬車にゆられている間に日も落ち、森の近くの平原で野営することになった。

 

 「うぅ、寝ている間に襲われたらどうしましょうシュートさん」


 アンナは怖がっている様子で俺に聞いてくる。

 どうやら彼女は暗い所が苦手らしい。なんでも奴隷が入れられている檻を思い出すらしく嫌らしい。目があまり見えていなくとも嫌なものはやはり記憶に刻まれるものなのであろう。


 「大丈夫だよ、近くにちゃんと冒険者もいるしいざとなったら俺が守るよ」


 数秒後言った後で恥ずかしいことを言ってしまったと思い、慌てて弁解しようとする。

 アンナもすこし照れているように視線を泳がせている。


 「全く、我がいるのだから少しは安心すればいいというのに。我はかの偉大なエリシュ―」


 自分の正体を言おうとしたのでエリーの口を押さえた。



 「こら、今ここでそういうことを言うんじゃない、正体がバレたらどうする!」

 

 危うくエリーの正体がばれてしまう所だった。


 「とにかく主とアンナよ、我がいるのだ。安心して寝るといい」

 「ありがとうございます。エリーさん」

 「エリーでよいぞ、アンナ」

 「はい、ありがとうございます!エリー」


 さて、先程からこちらをチラチラと視ているような視線を感じるな。

 あれは多分先程俺に話しかけてきた冒険者のパーティーか?

 

 「おいエリー」

 「なんだ?シュート」

 「モンスターなら構わないが人は殺すなよ?」

 「その辺は我も十分に分かっている」


 多分寝込みや何やらでこの二人に手を出しても返り討ちにされるだろうから多分大丈夫だろう。

 いざとなればエリーもあのレーザーみたいな火炎で何とかしてくれるだろうし。


 エリーは寝なくても大丈夫と自分から言っていたことだけあって俺たちが眠っている間、魔物や危険から守ってくれてるそうだ。


 いろいろと初体験なことが多くて今日は一段と疲れたな。

 俺は外で馬車にもたれる形で彼女の隣で眠りに落ちた。

 毎週金曜日の深夜に出せたらなと思います。(一時とか二時ぐらい)

 これからもよろしくお願いします!

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