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water survival

今日は7月6日30℃を越す猛暑日だ。まだ、梅雨明けをしていないが晴天だ。

今日の4時間目は『水泳』体育の一貫だ。私は水泳が大嫌いだ。

水泳の嫌いなところは、沢山ある。

1.日に焼ける。

2.普通の体育の倍疲れる。

3.眠くなる。

4.鼻に水が入る。

5.25m泳げない。

最後のは、努力していないだけなのだが...

1~4の事があるから、5が出来ないのだ。

何故みんな軽々しく泳ぐことができるのだろうか、私は足をいくら動かしても前に進まない。

「女子早く着替えろー。」

私は、友達と一緒に更衣室に入った。

「水泳とか、だるくない?」

「めんどくさいよねー、髪の毛濡れるし。」

「暑いから、気持ちよくてよない?」

「泳ぐの楽しいよね~。」

「タイム競争しようよー。」

「うん、いいね。楽しそう。」

女子更衣室では、色々な会話が飛び交っていた。

水泳が楽しいだって、んなわけねぇーだろ。水に入って体を動かすのが楽しいだって?

私には、考えられない。

いよいよ、水の中に入ることになった。プールサイドに腰を掛け、膝、心臓付近、肩、頭の順番で水をかける。

「今日は、クロールの練習だ。」

先生はその一言を残して、屋根付きのベンチの方へ足を進めていった。

「あの先生って結構テキトウだよね。」

「ま、楽だからいいんじゃね。」

私は1コースの手前側の水の中に飛び込んだ。黒色のゴーグルを着けて手を伸ばした。思いっきり壁を足でける。蹴伸びは成功したようだ。太ももから足をばたつかせる。手で水を掻く。

うぅぅぅぅううう息が苦しい。顔を上げ必死に空気を吸おうとするが、息が苦しいので顔を上げる力なんてもうない。ぶぅはあ はぁはぁはぁ… まだ、半分も泳げていない。ただ単に、体力(肺活量)が足りないだけ?なんか、もうどうでもいいや。私はコースロープに掴まりながら歩く。

もう一度手を伸ばし水の中に思いっきり入る。手足をさっきと同じように動かす。手を後ろに動かした時に無理やり息継ぎをする。2回目はなんとか、息継ぎが成功したようだ。その勢いで、前へ進む。あともう少しで手が届く...ん、意識が朦朧とし始めた。目の前の壁が何重にも重なって見える。

ゴッツン 頭の中がぐちゃぐちゃになった気がした。

「美和ちゃん、大丈夫?」

いっ息ができない! 私は飛び上がった。

ザブンッ

「わあ、美和ちゃん。どうしたの?」

「うぅぅ、なんか意識が朦朧として…」

「え、大丈夫。出れる?」

「うん、大丈夫だよ。」

自分でも何を見て何を考えていたのか全く思い出せなかった。

よいしょ、プールサイドに手を掛け腕の力で体を持ち上げた。さっき、声をかけてくれた子は見学をしている由亜ちゃんだ。

私は、水から出るとプールサイドを歩き先生が座っているのと反対側の屋根付きベンチに座った。

疲れた人は休んでいいことになっている。私は、一回泳ぐと必ずここに座っている。

私は、遊びでもプールに入ることはない。学校のプールよりは楽しいのだろうが、わざわざ水に入る必要性がない。私は、ニュースなどが好きだから、新聞は毎朝読んでいる。いいニュースも悪いニュースも好きだ。色々知ることができるからだ。夏の新聞は、「猛暑日」「熱中症」「プール」「川」「海」という字をよく目にする。プールで遊んでいたところ、排水口に入っていってしまった。という事件も少なくはない。増水した川で流された。という事件は6月後半から多くなってくる。梅雨も関係しているのだろうが、大きくまとめればプールも川も海も『水』だ。私は水が嫌いなわけではないが、こういう事件を見ていると自然と水を毛嫌いするようになる。だから、私は『水泳』という授業が嫌いなのだ。

今日はこのままここに座って過ごそう。

・・・・・・

5時間目自習だった。みんな疲れて寝てしまっている。私も寝ちゃおう。私は手を机の上に乗せ顔を隠すようにして寝た。隣の人も前の人も寝てるからいいか...。

―――――――――――――


小学校3年生。水泳の授業。

「今から宝探しゲームをします!」

先生が輪っか型のバトンを水の中に沈めた。私は、ゴーグルをつけ水の中に潜った。

あそこに青いバトンが落ちてる。私は、バトンをどんどん拾っていった。

真横で友達が水の中に勢いよく飛び込んだので私の水泳帽がとれてしまった。

あ、私は赤色の水泳帽を追いかけた。帽子を掴んだ。よかった…

ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ

帽子とともに腕が排水口に吸い込まれていく。息ができないので水面から無理やり顔を出した。

腕は吸い込まれ続けるので変なふうに腕が曲がる。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

私は手から水泳帽を放してしまった。

先生も異変に気づいたらしく、ほかの生徒をプールから出し先に着替えさせた。

腕がどこまで入っているのかわからなかったので、排水口を止めることが出来なかった。

水を減らすしかなかったのだ。周りの排水口が勢いよく水を吸い込んでいく。あまりにも強く締め付けられていたので何かに腕の皮膚が引っかかった。

なかなか減らない水の中に血の赤色が広がっていった。


―――――――――――――

うぅぅぅ。目を開けるとあと5分で授業が終わるところだった。

周りを見渡すとまだみんな寝ていた。私は意識もせずにワイシャツを袖を捲り腕を見た。

そこにはくっきりと傷跡が残っていた。私は、無理やり忘れようとしていた。

なんで私が水泳の授業が嫌いなのか、はっきりとした証拠とともに思い出した。


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