第六話 「THE・ MORD」
結構早めの投稿です。
春人side
午後8時くらいだろうか。
薄暗い夜道を僕は歩いていた。
理由としては、特にすることがなかったから暇潰しに、という程度だったが。
家にいても面白いことなど何もなく、学生の言う「課題」とやらも僕には縁がない。
そもそも、僕は学校に行っていないのだから。
世間一般で言うなら、僕の歳は高校生である。
しかし、とある事情から僕はそれを放棄した。
「にしても、本当に退屈だね。」
前居た所では退屈など感じたことが無かったせいか、どうもこのような時間には慣れない。
その時の癖で能力を常に働かせている故、外部刺激が零に等しいというのが原因かもしれないが。
僕は、特殊な能力を持っている。
コードは《反射》、全てを受け流し干渉することを拒絶し続ける力。
自分自身に加わる力の大きさや向きを計算し反射対象にすれば、核兵器だろうが破ることは不可能だ。
今は最低限移動に必要な刺激を残し全てを対象に加えている。
よって今ならいきなり「お命頂戴っ!」と斬りつけられても自身には何も起こらない。
故に、多勢に囲まれていることに気づくのに時間が掛かった。
「―――――っ!!」
一人の男が何かを叫んだようだが、そんなものは耳に入らない。
僕はそこで立ち止まり、星が瞬く夜空を仰いだ。
「成る程、山奥ならこういうのも乙だね。」
その言葉を引き金にするかの様に、数人の男達が飛び掛かってきた。
躱す気はない、ただその場に立っているだけ。
その筈なのに、男達は放った一撃を自らが受けその場に倒れていく。
恐らく、知らなかったのであろう。
慌てふためいた残党のうち何人かは構えを直し、体の各所を緑色に光らせた。
緑の紋章、それは能力者の証。
何処で手に入れたかは知らないが、異能力の持ち主が混ざっていたようだ。
ハァ、と。
僕の口から思わず溜め息が漏れた。
それは彼等に対する呆れか、星空による感嘆か、
僕にも定かではない。
ただ、視界が昼のように白く光った後、倒れ込む多勢の姿が飛び込んできた。
「……あ、終わった?」
そう口に出し辺りを見回すと、こちらを睨む男が一人いることに気がつく。
男の体は震えており、手には刀が握られている。
刀、それこそ今の時代ではあまり使われていないが、立派な凶器だ。
その得物は見たところ鈍だが、人を殺めるくらいはゆうに出来ることだろう。
間違いない、この男は僕を殺す気でいる。
そう確信した途端、口元がニヤッとするのを感じた。
そして男に向き直ると僕は、
「凶器を使うってことは、それ相応の覚悟はあるんだよね?」
「ひ、く、くそおぉぉぉっ!!」
言うと同時に男が斬りかかってきた。
肩から心臓を薙ぐ軌道を描くことは想像できる。
僕はそれを遮るように左腕を出した。
刀が当たる、その瞬間。
「――」
本当に小さな、近くでも聞き取れるかどうかという声で僕は何かを呟いた。
そして、刀の速度、重さ、加わる大きさ、その他全てを計算し《反射》した。
「っあ!!?」
男の短い悲鳴が漏れる。
それもそのはず、予想外の向きに跳ね返った力は腕ごとあさっての方向に刀を弾いたのだ。
僕は人差し指で額に触れた。
《反射》を使い、血液の循環の向きを変える。
すると男の体は鮮血と共に弾け飛んだ。
ぐちゃり、と果物を落としたような音が夜道に響く。
「…………」
返り血を浴びた僕は無表情のままその場を去ろうとした。
「いやぁ、また派手にやりましたね。」
唐突に、間の抜けたような女性の声が沈黙を切り裂いた。
パチパチ、という拍手と共に近づいてくるその人は、とてもこの惨劇の後には似合わない。
空色の服を着た女性は、そこに居るだけで僕よりも異質の存在だった。
「君、誰?」
「あら、やだなぁ、忘れちゃったんですか?」
そう言うと彼女は一回転してみせた後、僕を正面から見据えて微笑む。
しかし、口調を変えずに告げる。
「思い出してくれるまで返せませんよ? 春人先輩。」
拓「うわぁ……こえぇよ春人。」
俺も書いてて恐怖を覚えた。
拓「もう別の意味でも無敵な気が……」
やめとけ、お前が死ぬぞ。
拓「だな」
さてと次回予告だが、
拓「コレだな。えーと、次回は重要人物登場。
春人との戦闘開始、ってこれまたかよ。」
都合上このままのノリだ。
拓「グロシーン有かもなので注意。」
それじゃあ今回はこの辺で。
拓「次回、また逢おうな。」