新たな一歩。
尖角です。
サークルでこういう作品を書くのは初めてかも。
ですが、尖角のアカウントでは何度かあるので、もしかしたらどこかで見覚えがある人もいるかもしれないです(笑) でも、少しは内容違うから;
ではでは、宜しくお願いします。
この夏、 お前は帰らぬ人となった。
それは、別に音信不通だとか、
俺のところには帰ってこないって意味じゃない。
純粋に、ただ、 お前は死んでしまった。
「また今度」 「また今度、お祭り 行こうね」
「花火 綺麗だったね」 「楽しかったよ、ありがと」
お前は笑いながら、そう俺に言ったね。
嬉しかったよ。 お前の笑顔が見れて。
最初は、ただの友達だった。
いや、もっと前の話では、ただのクラスメートだった。
なのに、何気ない会話が徐々に増え、 そして、俺等は友達になった。
俺は、お前という友達を持つことができて幸せだった。
俺は、お前が近くにいてくれる ・・・それだけで十分だった。
だけど、いつからか、それだけ満足できなくなった。
――胸の中で膨らみ続ける想い。
この想いは叶わないのかな?って何度も何度も悩んだ。
『恋』という名の深い深い海に溺れそうになって、
それでもお前が大好きだから、何度も もがき苦しんだ。
それは、俺を縛り付ける鎖。 とても重たかった。
お前が大好きすぎて、 誰よりもお前が大好きで、
でも、この気持ちを知られるのは嫌で、 目をそらす。
お前から声をかけられても、適当に返事をしてかわす。
お前に嫌われるのが嫌で、俺はお前を自ら遠ざけ続けた。
――それは、お前と向き合う資格はなかったから。
いや、それは単に、俺がそう思い込んでいただけ。
俺はただ、 お前を失うのが怖かったんだ。
そんな風に、自分勝手な恋をしていた俺に、お前は言ったんだ。
「悩んでいるなら、相談して? 私は、見方でいるから」
「あっ、だけど、 あなたが間違ってたら指摘するからね?」
お前は、俺を元気付けたくて、 そう笑ってみせた。
そして、 俺はついに我慢できなくなった。
もう、これ以上、この気持ちを抑えることはできない。
そう思って、俺は溢れるこの想いをお前に打ち明ける。
「実は、俺、 お前のことが好きなんだ」
「お前は、俺のこと・・・どう思ってる?」
あれは、今から8年前。 中学2年の夏休みだった。
そんな感じで、付き合うことになった俺とお前。
お前があの時、「私も」と言ってくれた感覚は、今も色褪せてはいない。
お前はの方は、どうだったろうか?
俺に告白されて、少しはドキドキしたのだろうか?
もう、今では訊けなくなってしまったことだけど。
覚えているかな? あの秋の日のことを。
紅葉を見に、ドライブに出かけたはいいけど、
車がパンクして、1時間くらい「どうしよー」って。
お前は焦る俺に「大丈夫だよ、 まだまだ時間はあるから」って言った。
俺は、それを聞いて安心した。 お前と来てよかったって思った。
それと同時に、 改めて“俺にはお前しかいない”と思った。
お前を選んでよかったと思った。 俺は今でも後悔していない。
だけど、そんなに大好きだったお前は、 もういない。
21歳。 お前は、とても若かった。
交通事故で死んでしまって、 なんで俺はそこにいなかったのか。
誕生日まであと1ヶ月だったのに。 結婚まであと半年だったのに。
なんで、俺は大学を辞めて結婚を選ばなかったんだろう。
なんで、「結婚は俺が大学を卒業したらな」って言ったんだろう。
なんで、俺はお前の初めてを貰わなかったんだろう。
結婚してからって、今思えば馬鹿馬鹿しい。
何を考えてたんだ、一体。 戻りたいよ、昔に。
だけど、いくら後悔したって、
昔に戻れないのは知っている。
お前が帰ってこないのだって知っている。
逢えるのは夢の中だけだってことも知っている。
本当に胸が苦しい。 お前に会いたいよ・・・。
だけどな、俺はお前を追いかけないよ。
俺は、お前の分まで生きて、 お前の分まで楽しんで、
お前の分まで悲しんで、お前の分まで色んな経験をして、
この世で知らないことは何もないってくらい俺は生きて、
そして、俺は笑って死ぬんだ。 俺は、そう決めたから。
だから、俺が死ぬまで待っていてくれないか?
俺が死んだら、色んなことを話すから。
また、一緒に笑えるから。
だから、それまで少しの辛抱だ。
俺はお前を胸で抱きながら、 明日を生きていくことにするよ。
愛してる、 またな。
お読みいただきありがとうございました(^^♪
次話、愛莉さんです。 引き続きお楽しみください。




