最終話 ~私も好きです、先輩~
花梨は軽度の記憶障害だった。
もしかしたら治るかもしれないと、彼女は言った。
「なら、部活引退しても部室行くよ。花梨も来てくれるよな?」
「もちろんです!でも、何をするんですか?」
「そうだなぁ・・強烈ななにかを記憶に付けさせるっていう手もあるな」
「ショック療法っていうわけですね・・」
そんなことを話しながら、星のない夜空を眺めていた。
いつの間にか、流星群は終わっていたらしい。
結局、花梨の思いや願いは崩してしまってけれど。
こうして今、笑い合えているから問題はないだろう。
「じゃぁ、先輩が卒業しても来てくれますか?」
「え、ここに?」
「はい!新しい部員とともに会ってくれますか?」
「そうか・・新しい部員か・・大丈夫なのか?」
「何がですか?」
「何がって・・この部活、実際非公式というかなんというか」
花梨のお姉さんの力がいつまで続くかわからない。
「大丈夫ですよ!ちゃんと集まって、活動すれば公式ですし。私のように星が好きな人はいっぱいいると思います!」
「その自信を信じていいなら。来るよ。またここに」
「そしたら今度こそ、流星群をみましょうね」
「あぁ。わかった」
時間が過ぎるに連れ、どんどん肌寒くなってくる。
自然と俺と花梨の距離は触れ合う距離だった。
花梨は俺の肩に頭を乗せる。
「おわっ・・ちょ、花梨?」
わぁ、いい匂い・・じゃなくて!
くそっ!なんかこれもう、好きになってしまいそうだ。
いや・・別に構わないんだろうけど。
それは花梨にも失礼だ。
「先輩・・私は、先輩のこと。好きなままでいいですか?」
「好きなまま・・?」
「そうです。私は今日を全力で楽しみました。泣きました・・だから、もう忘れようと思ってっ」
「どうして?」
「どうしても、です。手帳には書きませんっ。」
「そうすると、ちょっと困るかも・・」
「困りますか?」
花梨の上目使いは最強だった。
「いや・・いいよ。それでも。もしかしたら、俺も気が変わるかもしれない」
「ほんとですか・・?」
「保証は全くできない」
「ふふっ・・期待しちゃおうかな。未来の私に」
「未来に・・か」
「・・・今日のこと。忘れる代わりに、お願いがあるんです」
目を瞑り、眠るように頭を添える。
「好きって言ってくれませんか」
花梨のその言葉に、俺は頭を撫でながら全力で告白をした。
「好きだよ、花梨」
頭は花梨のマフラーのように真っ白だったけど。
なんだか笑えてきて。
「私も好きです。誠先輩」
これも悪くないかなって、思えちゃってさ。
――私を好きになった罪だ、ばーか!
そういう菖蒲が目に浮かんだんだ。




