表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

第三話 ~あの日見た、昼の星~


11月26日


今日から冬の兆しが強くなってくるとの天気予報。

それを聞いて、完全防備で挑む赤菊誠。


「くっそ、あの予報士、絶対信じねぇ」


全く冬の兆しなんて見えない。

確かに寒いけど、昨日ほど寒くない。

昨日より寒くないのに、冬の兆しが強くなるというのはどういうことだろうか。

あれって昨日のニュースだったのかな、録画してたやつ?


どうでもいいや。文句は終わりにしよう。キリがない。


少し暑い思いをしながら、学校に到着。

二年生の教室は三階中二階。三階は一年生。

その三階のほうから、急ぎ足で人が降りてきた。


「あ、誠先輩?」


よく見たら花梨だった。


「あれ、どうしたの。そんなに急いで」

「いえ、大事なものを忘れてしまって・・・帰るところです」

「え!?今から帰っても間に合わないでしょ」


授業開始まであと15分。朝のホームルームを無視したとしても、間に合わない。


「大丈夫です。・・・走れば、たぶん」

「そ、そっか。頑張って。あ、暑いからマフラー外した方がいいよ」


花梨は昨日の帰り道に着けていた白いマフラーを巻いていた。


「・・・そういえばこれ、菖蒲先輩から貰ったんですよ?」

「ん、うん。昨日聞いたかな」

「あ・・・・そ、そうでしたね!ごめんなさい!急ぎます!」


あわあわと焦りながら、大きい音を立てながら階段を下っていく。

それにしても、今の顔はなんだったのだろう。


「あ・・・・」


その時は見たこともない、いつもの花梨とは違う顔。


状況が悪かったからかな。気にすることないか。

大事なものってなんだろう・・・。


放課後。

天文学部の部室に入る手前、ドアの前まで来ると声が聞こえた。


「これは言った言葉。うん。あとは、12月の流星群・・・」


12月の流星群?


「花梨。12月の流星群、見たいの?」


ドアを開けた瞬間、花梨に尋ねてみる。


「ひやぁあっ!な、ま、ま、誠先輩!?」

「あぁ、ごめん。そこまで驚くとは思わなかった」

「いやいやいや!その、えーっと、なんでもないです!忘れてください!」


そそくさと手元にあったものをしまうと、椅子に座り直して俺を見つめる。


「なにしてたの?」

「え?べ、勉強してました!はい!」

「勉強?そっか、冬休みの課題とかもうやってるの?」


この学校の課題は割と早めに出され、冬休み前に終わらせてしまう者が多い。

そうすれば、冬休みが有意義に満喫できるからな。

夏休みと違って、冬休み中に授業があるなんてことはもうない。

ただし、補修があるもの以外は。


「そ、そうです!」

「大丈夫?わからないところあったら、教えてあげるけど」

「本当ですか!教えっ・・・いえいえ!大丈夫です!結構です!」

「そう」


相当、焦っている様子だったが特に気にすることはしなかった。

いつもの席に座る。


「俺も、課題やるかな」


それ以外やることがない部活だし。


「せ、先輩。先輩はこの本読まないんですか?」


花梨が見せてきたのは、星の図鑑。この部が天文学部であるがために置かれてある本だ。

全部で4冊あり、それぞれの季節に分かれている。


「読んだことあるよ。ぱらぱらっとね」

「面白いですよ、この本。特に冬の星」

「へぇ、冬の星が好きなんだ」

「冬に見る星って、なんだかロマンチックじゃないですか」

「そ・・そうかな」

「寒い季節に震える二人の身体。そして暗闇に染まる空。その中で唯一、照らしてくれる温かき光。二人の心もやがてほんわかと包まれてくるんです。どうですか?」

「な、なるほど・・・」


花梨の言葉には力があって、とても「はい」以外の回答は避けられなかった。


「私、好きな人と満天の冬の星を眺めてみたいです」

「あたため合いながら?」

「そうですね。いいなぁ、憧れちゃいます」


確かに、星を眺めながら好きな人といると、いつも以上に星が綺麗に見える。

そんな気がする。

菖蒲と屋上で見たときは、星が「頑張れ」とでも言うかのように強く煌めいていた。


「先輩は好きな人いますか?」

「うーん、今はいない・・・って、それも昨日話さなかった?」

「え、えっと、もう一度確認っていうことで」

「そ、そうなの?いないと、思う」

「そうですか」


その後、花梨は遠くを見ていた。まるで、夏の頃の俺を見てるようだった。


昼の星。俺は、昼間に光ってる星を見たかった。

ずっと、肉眼で見れる日を待っていた。

眺めてれば、いつか見えるんじゃないかって。


あの時、少しだけ夕暮れかかった空の奥に見えた気がした。

空の奥、彼方宇宙で、光った星を今、自分の目の奥で感じ取った。


あれは、今思い返してもなんだったのか思い出せない。


ただ、目の奥で光った何かを見たんだ。あれが昼の星だったのだろうか。


「先輩。冬の星。私が魅力を教え込んであげますね」

「え?」

「先輩も天文学部なら、星をもっと好きになって、もっと知らないと」

「いやでも・・・」

「まず、この星は・・・」


強引に花梨は話を始める。図鑑を広げながら、丁寧に教えていく。


星を少し知ろうと思っていたところだ、ちょうどいいだろう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ