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幻術師ヴァニーユのアリア  作者: RIM


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8.魔力測定

 サーシャは魔水の入った瓶を両手で持ち、意識を集中させる。


 ヴァニーユとサーシャが瓶の中を覗き込んでいると、みるみるうちに魔水が青みがかっていくのが見て取れた。




「普通なら大体三十秒程で、色の変化は止まります、が」




 ヴァニーユはその色の変化に、自分の目を疑った。


 想像よりはるかに速い勢いで瓶の中の色が変わっていくではないか。


 この勢いならば、彼が誇らしげに「深い夜空の色だ」と話したことも本当のようだろう。




「あまりにも変化のスピードが速いですね」


「そうか?」




 当の本人はというと、なんの違和感も感じていない様子だった。


 瓶の中の魔水の色は、既に青空の色まで到達し、同時にみるみる暗がりを広げていく。


 空のような青さは魔力の量、広がる闇は濃度である。


 本当に彼の話していたような深い夜空の色に仕上がるまでには、さほど時間はかからなかった。




 そしてその色のまま、変化は止まったのだ。




 切り株に座っていたライラックが立ち上がり、ゆったりとした歩みでヴァニーユたちの元へと来ると、顎を擦りながら「ほぅ」と息を吐いた。




「このような色は久方ぶりに見ましたなぁ」


「この魔水か瓶、壊れていませんよね?」


「こういった者は少ないが、確かにごく稀におる」




 ライラックはサーシャを見上げて、少し眉を潜めて言葉を選ぶようにしてから、口に出した。




「だが、このタイプは魔力のコントロールが非常に難しい」




 そのライラックの言葉を受けたサーシャは地面を睨みつけるようにしてから、目を瞑る。


 今まで見てきた姿とは少し様子が違うように思えた。


 師匠の言う「コントロールが難しい」という所に、なにか思う所があるかのように、彼はふぅっと息を吐き出し、口を開く。




「……雷造の魔術師殿の言う通りだ。コントロールがなかなかうまくいかず、困っている」


「魔術とは、例えば雷ならば、魔術の出力や量が一定ではないと、正確に機能しないことがある」




 そう説明しながら、ライラックは短く詠唱をし、体内のオドを用いた雷属性魔術で、手のひらの上に球体を出した。


 紫がかった闇色の球体の周りには、ピリピリとした電気が走っている。


 雷属性魔術は、見やすいように青〜紫の色を使って教える事が多い。


 戦闘時は光に近い色を使う魔術師もいるそうだと、以前ヴァニーユはライラックから聞いたことがある。




 ライラックの魔術を見たサーシャは「おぉっ!!」と声を上げ、少し体を乗り出すものだから、ヴァニーユはヒヤッと肝が冷えた。


 勢い余ってそのビリビリを食らわないか、こちらとしてはハラハラする。


 頼りなさげのようでいて頼り甲斐しかないおじは、サーシャにもヴァニーユにも理解しやすいように説明をした。




「サーシャ様のように量も濃度も高い者は、このように一定の魔力を継続的に細く出し続けるということが、非常に難しい。この魔術はオドの少ない初級魔術師でも使えるようになっておりますから」


「おぉ、なるほど……!! このように全くブレのない生成魔術は初めて見たぞ!! 雷は特にこれが難しいのだ!!」




 師匠は魔術を使っているこの瞬間は、本当に頼りなさげなおじには見えない。


 このおじ、実は昔は教壇に立っていたことがあり、子供たちに魔術を教える機会も多かった為に、説明がとてもわかりやすいのだ。


 ただしヴァニーユとのかくれんぼの時のように、心を鬼にして自身で考えさせるようにして身につけさせることもある。


 ただの優しいおじではない、アメとムチを使い分けられるおじなのである。




「己の中にある膨大なオドを制御しながら、必要量のみを出し、コントロールせねばならない。それは大きな負担がかかる上、自身の感情の揺れにも弱い。貴殿程の魔力量では、簡単に暴発することでしょうな」


「なるほど……暴発の原因はそれだったのか」


「暴発したことがあるのですね……?」




 基本的に魔術師は、少量〜中程度の魔力を持つ者が多く、初心者で暴発する事は少ない方なのだ。


 なぜなら、魔術が発動しないことの方が圧倒的に多いからである。




「仕組みがわかったならば、後はヴァニーユに任せるとしよう」


「……え」




 そこまで師匠の説明を聞いたヴァニーユは、「え、それをまさかこれから私がコントロールを身につけさせるのですか? 正気で?」と強く思ってしまった。


 英傑で清澄の幻術師と呼ばれているヴァニーユですら、ここまでの魔力は持っていないので、今後どうしていけば良いのか全く想像がつかないのである。


 正直、不安しかない。




 本当にかくれんぼでどうにか出来るようになる問題なのだろうか?


 ヴァニーユは今後どのように進めていけばいいのかシュミレーションをしようとするが、魔力量も濃度も高い相手の対応など初めてで、想像もつかない。




「まぁ、まずは一度かくれんぼしてみてから考えてみようじゃないかね」




 そう言い残してまた切り株の方へと戻っていった師匠を横目に見て、いざとなったら師匠をちゃんと巻き込んで知恵を借りることにした。




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