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幻術師ヴァニーユのアリア  作者: RIM


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5.訓練初日

 このかくれんぼにおいて、雷造の魔術師は三つのルールを提示した。


 一、結界内でかくれんぼをすること。


 二、何の魔術を使っても基本的には良しとする。


 三、ただしヴァニーユは攻撃魔術を禁止とする。




 昔、ヴァニーユもライラックとの特訓でかくれんぼをしていたことがある。


 これはその時のルールと同じであった。


 ただしあの頃ヴァニーユはまだ六歳頃であり、まさかこの歳になって十七歳の男とかくれんぼをする日が訪れようとは……人生は不思議なものである。




「清澄の幻術師殿も、その《《かくれんぼ》》の経験があるのか?」


「あります……。あの頃のルールでは、師匠が攻撃魔術を使わない代わりに、私ががあの手この手で捕まえようとしていました。……まぁ、結局どうにもならなくて、索敵魔術を覚えることになりましたが」




 ヴァニーユの得意魔術は風魔術と幻術、そして今は光属性魔術の具現化も出来るが、幼い頃のヴァニーユは風魔術でやたらめったら周囲に風を送り付けるのが精一杯だった。


 けれど、そんな方法ばかりでは上手くいかないものである。


 適当に魔術を撃っても意味が無いことを心の底から理解させられ、それからようやく索敵魔術を身に付けたのだ。


 結局、索敵魔術を身につけるのに二、三年程かかったことをヴァニーユは思い出し、彼が師匠から教わることが出来るようになるまでに一体どれくらいかかるやら、そして自分がどれくらい付き合わされるやらと考えると……気の遠くなるような話であった。




 あの英才教育のお陰もあり、ヴァニーユの魔術のコントロールは非常に上手く、彼女の得意な幻術にも活用されている。


 幼い頃はまだ魔力が少なかったので時間がかかったのもあるし、サーシャに関しても気長に考えることにしよう。




「到着しました。ここで訓練を行います」




 ライラックに分析を含めて一任されてしまったヴァニーユは、まずは彼の魔術がどのような形をしているのか、知る必要があった。


 ヴァニーユたちは共に森林の奥へ入ると、ライラックがそこに結界を張り、切り株に腰を掛ける。


 腰の弱いおじは訓練が終わるまでそこから動く気はないようだ。




 結界を張ったことにより、サーシャがどのような魔術を使ったとしても、もうこの結界の外へは飛んでいく心配はない。


 かくれんぼの範囲はこの結界内であり、決して広すぎはしないが、目に見える範囲でならいくらでも木の影に隠れられる程度の広さはある。




 ヴァニーユは幻術で自分をもう一人つくりサーシャの前へ置くと、自分は隠れてライラックの元へ行き、一緒に幻術とサーシャのやり取りを見守ることにした。


 ライラックもそれを咎めはしないので、よしとする。




「確認ですが、サーシャ様は雷属性魔術を学びたいのですか?」




 サーシャは幻術のヴァニーユの目をまっすぐ見つめて、ニカッと笑い、快活に答えた。




「あぁ、そうだ! 雷造の魔術師殿は、雷で動物や竜などを造れるだろう? 幼い頃から憧れがあってな。魔術の竜がばくりと敵を食べて倒し、世界に平和をもたらす絵本を読んで育ったものだ!」




 なるほど、典型的な男の子のロマンというやつだろうか。


 ヴァニーユは幼い頃からライラックの魔術を見てきたけれど、あれをかっこいいとか憧れたりとか、そういう気持ちを持ったことはなかった。


 ロマンとは、よくわからないものである。




 サーシャはアルカナ学園の高等部に在籍しているようで、現在は雷属性魔術の習得を目指している。


 アルカナ学園は小中高一貫の学園で、貴族も多く通っている魔術学校だ。


 ということはこの人は貴族の可能性が高い……のだろうか、恐らくは。




 「めんどくさいな……」と思うヴァニーユだが、サーシャが正体を明かしていないということは、その方が都合のいい何かがきっとあるのだろう。


 ちなみにヴァニーユはユーリス学園の中等部に在籍しているので、彼とは別の学校である。




「まず、魔力の話をおさらいしましょう」




ヴァニーユはそう彼に話すと、幻術で木を模した人形を作り出した。


この人形を使って説明をしていくつもりである。

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