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「7年目、6月中旬『勧誘』の記録」

物語の本題に入ります。

 静かな好奇心を持つ瞳と、怪訝さを隠さない異なった目付きを並べるお二人は、共に静かにこちらの言葉を待っている。


「では、改めて…」


 小織 凛凪くんのリアクションで少し調子は狂ってしまったが、ようやくお二人を話の土俵に上げることができた。

 現実が覆るショックを受けるのは仕方ない、わたくしもこの姿を得た瞬間には、同じく複雑な感情だったのだから。


 あえて一拍取り、お二人の注意が完全にこちらに向くのを見計らう。


「魔法が何なのか実のところわたくしにもわからないことばかりなのです」

「えっ…」


 引っ張った先で、何か壮大な物語を待っていたのか、お二人は愕然とした表情に陥る。

 ですが、そのリアクションで良い、過度な期待は後に失望に変わりかねる。


 わたくしが語れるのは、あくまで魔法についてわかってることだけ。

 期待はふるいにかけておく方が話しやすい。


「現在わたくしの所属する組織では目下、魔法の研究中なのです」


 お二人は依然として言葉を失ったまま静聴している。

 再び両者から猜疑心の目が向けられてるようなので目的から明かすことにする。


「わたくしの役割は、日常生活を送る人類の様子を観察し、素養のあるものを組織へ勧誘すること、つまるところスカウトです」


 大げさに腕を広げ、お二人を迎えるようなジェスチャーをしながら、こちらに興味を引こうと振舞ってみる。

 が、お二人の集中力は薄れている様子で、星見 疾風くんに至っては手元の機械(確かスマホといったかな?)に目を向けてポチポチと触っている始末。


(そこまで露骨に興味をなくすとは)


 少しばかり肩を落とす、このお二人は秘密結社などは好みではないようだ。

 しかし、めげずにオホンとわざとらしく咳をしこちらに注意を向けさせる。


「魔法、使い方を知りたくないかな?」


 そう尋ねると、星見 疾風くんは待っていた様子で再びこちらに目線を向ける。

 彼は未知への興味と怪しいものの間に線引きがあるのだろう。


 反面、小織 凛凪くんはつまらなそうにこちらをジト目で睨む。

 こちらは一律して信じられないものに対する警戒心が強いと見れる。


 これまでのやり取りでおおよその趣向が読める、あとは話の組み立て方のみ。


「現在、組織の研究では魔法を科学的に確立するための定義として『属性』『型』『指向』の三つを構成要素に仮定し訓練を行っています」


 人の指で3を示すポーズをお二人に向けて、解説を進める。


「詳細は省きますがこれらは『「魔法」を「どこ」に「どう」する』という三つのプロセスが正しく行われた際に魔法が発現するという理解になります」


 複雑な話をしてもこのお二人はついてこないと判断し、魔法の発現の手順を簡単に説明して星見 疾風くんを指差す。


「星見 疾風くんの魔法は「白属性」「自己指向」、型はおそらく「変性」か「付与」で『自身が光になる魔法』を扱える」


 トラック事故の一瞬の出来事の為、確定は難しいが推測まではできる。

 続いて、身体を捻り小織 凛凪くんを差しこちらも推察を語る。


「小織 凛凪くんの魔法は「青属性」「制御型」「領域指向」の片鱗が見えたが、発現に至っていなかったのでいずれかのプロセスが欠けたのでしょう」


 顎に手を当て、わざとらしく思考を巡らせるジェスチャーをしてみる。

 そして意味深く指を1本立て、宙をかき混ぜ、目線の前に制止させる。


「恐らくは、あの場の空気をコントロールしたいという考えをしていた、と見受ける。」


 ここにきて、表情を変えなかった小織 凛凪くんが眉をピクリとさせる。

 おおよその推理が当たっており、こちらの話に少しは興味を持ち始めた証拠である。


「さて、魔法のお話はここまでです」


 お二人の興味を引いたところで話を打ち切る。


「えっ?」


 唐突な話題の幕引きにお二人は完全にこちらのペースに踊らされている。

 わたくしの目的はお二人に魔法を教えることではない、次のステップまでこちらに興味を持たせることなのだから。


「これ以上はトップシークレット、お二人が組織に準じ協力を約束して頂けないと明かせません」


 わざとらしく口元をニヒルにゆがませ、お二人の反応を待った。

お楽しみはまだこれから。

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