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「7年目、6月中旬『図書館』の記録」

視点は戻って。

『トラックに轢かれかけて死ぬかと思いましたよ;;』

『ヤバー!!無事で良かったbbbてか今日なんか事故多くね???』


 本気で死ぬとは思ってはなかったが、先程の事故を先輩に報告してみる。

 正直、本当に死ぬときはあんな風に自覚できないうちに死ぬのかもしれない。


 図書館の広い机に、終わっていない課題の山を広げてみたものの、再開してしまった先輩とのLINEの手は止まらなかった。


『あと、大学の図書館に緑色のスーツにシルクハットの人居てます!ヤバくないですか??』


 真後ろで大きな声を上げたのが印象的だったが、その見た目の異国感も日本ではあまりにも馴染みはなく、先程から周囲の注目を集めている。

 そんな彼は時々こちらを見てる様子で、図書館なのにただ腕を組みながら座っている。

 大学付属の図書館に来てるってことは多分大学の関係者なんだろうけど、どう見ても不審者感が否めない。


『寒い!って大声上げてたんですけどずっと図書館で何もしてないんですよ??』

『マジメに不審者じゃね?関わんないほうが良いっしょ>□<』

『やっぱそうですよねー;;』


「先輩もそう思うよなぁ…」


『でも面白そうだから大学まで見に行こうかなb』


 先輩の好奇心は健在だなと返信を考えていると、


「ちょっとそこのあなた」


 唐突に横から声をかけられる。

 そちらに目を向けると、冷房の風に微かに揺れる水色のストレートボブに、銀色の細身なヘアピンで前髪を留めた女子の、薄いグレーの瞳がこちらをきつく睨んでいる。


「机に課題広げたままずっとスマホいじってますけど、勉強する気がないならせめて片付けて頂けるかしら」

「あー…」


 真っ白な襟付きのシャツ、灰色のベスト、紺色のストレートパンツ、黒いローファー。

スマートな体型に背筋をピンと伸ばした凛とした佇まいの美しさに、一瞬見惚れてしまいながら、同時に厳しい意見を受けて返答に困ってしまい目を泳がせる。

 その視線の先が、異質な雰囲気を持っていた先程の男で留まる。


「あの人は座ってるだけですけど指摘しないんですか?」


 思わず目に付いたシルクハットの男に注意を逸らそうとする。


「あの方は机を無駄に散らかしてはいませんから、外は暑いですし休憩の為に利用していてもおかしくありません」

「はぁ…」


(涼みに来てる割には冷房に文句言ってた気がするけど)


 特に何も言い返す言葉が思いつかず気の抜けた返事をしてしまう。

 それを聞き逃せなかったのか、女性はむっとした表情で食って掛かる。


「あなた、その態度何ですか?ここは読書や勉強する志の持ち主が集まる場ですよ?あなたみたいな人が居ると周囲のやる気も削がれて空気が悪くなるんです」

「いや、図書館でそんな怒ってる方が空気悪くなるっしょ…」


 カチンと怒りの音が聞こえるような雰囲気、顔を真っ赤にしてこちらを睨む女性。

 周囲の空気が不自然なほど、更に異様に冷えたように感じる。


「やー若いねお二人とも」


 突如、いつの間にか寄って来ていたシルクハットの男が間に割って入ってきた。

 近くで見ると、やはり外国人のような顔立ちと黄緑色の短い巻き毛に更に目を引く。


「わたくしがお二人の言い分を聞きましょう、ここではメイワクになりますから一度外へ…」


 急かすようにそう促され、荷物を片付ける間もなく三人で図書館を後にすることになった。

三者三様。

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