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「7年目、6月中旬『後輩』の記録」

よく知った後輩。

 この場に駆け付けたハヤテは水色女子に飛び掛かり、ボクの逃げる時間を作ってくれたように見えた。

 けれど、どう逃げるか考えてるうちにハヤテは水色女子を解放してボクに呼び掛けていた。


「先輩、今そっちに行きます」


 そう告げるハヤテの姿を氷の草原に反射する月明かりが散らされ隠すように跳ね回る。

 ふと心なしか、ハヤテが来てから視界の明るさが増したように感じる。


「大丈夫、こっちは自力で何とかする…」


 ボクの言葉が終わる前の、その刹那に視界が真っ白に、そして真っ暗に、気が付けば視覚が奪われていた。


(どういうことだ??)


 一瞬の出来事、それを考える間に何者かの気配を背後に感じるが、そのままボクは羽交い絞めにされる。

 視界の通らないボクは、それに抗う為の判断を遅れてしまったが、次に発せられた声で全てを察する。


「コオリナ!俺を凍らせろ!!」


 後方から耳元で大声を放ったその声の主は、よく知った後輩のものだ。


「…なるほど」


 納得している間に、ボクを拘束する彼の身体が急速に冷えて行く。

 ボク自身を凍らせようとしても反射するが、ボクを拘束する別の生身の人間には反射の影響が及ばない。

 視界を取り戻すころにはハヤテは氷像と化し、ボクは完全に動けなくなっていた。


「光になれる能力…面白いじゃん…♪」


 ボクの反射が魔法を跳ね返す能力なら、光だって跳ね返す。

 だが、視覚は「光」の反射を脳に送り情報を得る。

 もし、ボクの能力が常時光を反射してるなら視界は普段から真っ暗になることになる。


 つまり「鏡」で「光」を反射してもしなくても、ボクは視界を奪われるという結果に行き着く。

 どう転んでも、視界は奪われるし、ハヤテが光の速さで動けるなら、ボクに反射されようがすぐに体勢を立て直して背後に回り、生身の肉体に戻って拘束するのは瞬時に行えるわけだ。


「流石ボクの後輩だ♪」


 ちゃんと警戒心を持てば、目くらましくらいなんとかできたはず。

 だが、相手はいつもしょうもないような遊びの提案でも付き合ってくれる、ついてくるばかりの後輩君。

 そんな君への偏見があったから、完全に油断した。


 けど、だからこそこの予想外の結末はボクの期待をいい意味で裏切ってくれた。


 水色女子は自分で行った行為なのにも関わらずに、こうなった結果に驚いたように、こちらを見たまま絶句して立ち尽くす。

 この作戦は完全にハヤテのアドリブで、捨て身のものだったということだ。


 彼女の後方の暗い廊下の影から、カエル紳士とその仲間と思われる人達が現れ、遊びの時間が終わりを告げる。


「ボクの負け、ちょっとは楽しかったよ♪」

それでも飽きは来ない。

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