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「7年目、6月中旬『氷壁』の記録」

追うは因縁の相手。

 駅前と同様に、マネキンのように動かない人々を避けながら、駅の廊下を駆け、逃走者を追う。

 駅の内部は先程まで照明が点いていたが、爆発音と共に暗闇に飲まれ、窓から注がれる月明かりだけを頼る。

 視界は悪いが、前を走る二人のうちの一人、中庭で出会ったあの男だけは見失っていなかった。


「待ちなさい!」


 腕を伸ばし、「男の前方」に「氷の壁」を「作り出す」。

廊下の空気が急速に冷えて固まっていき、みるみる男の進路を阻んだ。


「いてっ!」


 流石に自分からぶつかっていった障害物は反射しようがなかったのか、白髪男は壁に阻まれた勢いで尻もちをついた。


「もー!邪魔しないでよ!ってさっきの水色女子じゃん」


 月明かりが氷に反射し、男と自分の姿が暗い廊下の中で浮き出される。


「君もボクのチームに入る?…って一応聞くけど、そんな空気感じゃないよね、どうにも」


 半ばわかってましたよと言うように、肩を竦めながらこちらに話しかけてくる。


「あなたが「魔法犯罪」を繰り返さないように拘束します!大人しく降伏しなさい!」


 こんなことを言って、簡単に従うとは思えないが、回答として目的を提示する。


「ナニソレ、警察ごっこ?まぁ君には似合いそうだね」


 なんとなしに馬鹿にしているような表情にムカつく。


「では、いきます!」


 「靴の踵の底」に「氷」を「張り」廊下を素早く滑り、急接近する。

 そして、男の目の前でつま先でブレーキをかけ、腰を落とし、右足の上段蹴りを放つ。


 かつて習っていた空手に魔法を絡めた鋭い蹴りが、氷の欠片を輝かせながら男の頭を襲う。

 が、男は微動だにせず、弾かれたように足にダメージが返ってくる。


「おー!カッコイイ!痛くもないけど」


 挑発的な態度に思わず舌打ち混じりになりつつ、距離を取り直し体勢を整える。


(魔法自体を反射するわけじゃなく、物理的な現象も弾けるのね…)


 けれど先程、氷の壁にぶつかった際にはわずかでもダメージがあったということは、この能力自体が無敵なわけではないはず。


(動的な現象はその動きを返せるけど、静的な物体は反射のしようがないのでは?)


 確証はないが、やってみないとわからない。


 目を瞑り、集中力を高める。

 周囲に、氷の草原を作り出すイメージをすると、自身の足元から氷でできた草花が廊下の床中を張り巡らせていく。

 さらにそれを不規則に隆起させ氷の柱をいくつか生成し、舞台を整える。


「…君、さっきよりすごいじゃん、やっぱり仲間にならない?」


「なりません」


 男の提案を真っ向から断り、改めて戦闘の姿勢を構え直した。

毅然と涼し気に。

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