のこされし子供達 まさこの願い
私には子供のころから未来を見通す力があった。
子供の頃は、この力で多くの人を助ける事ができると思っていたが、すぐに現実を思いしらされた。
その力を狙う者達のやっかいさを。
悪事を考えるものには、未来を知るものなど邪魔にしかならない。
悪事をなそうとするものにも、より確実に悪事をなすための指針を与えかねない。
だから私は、せっかくのその力をふるわずに、秘密にしながら過ごしてきた。
とはいっても、それに気が付いたのは力をつかいすぎて、故郷を追われてからだが。
行く当てもない私は、旅を続けて歌を歌ったり、芸をしながら生きていた。
女の一人旅だから、危険はつきものだが、そこは未来を見通す力で何とか危機をしのいできた。
しかし、それでもどうしようもない危機というものは存在している。
どうあがいても、怪我をするという未来を予知したのは、険しい山道を歩いていた時の事。
嵐の中、雷鳴とどろく中で、人里は遠い。
それは絶望的な状況だった。
事実、雷に打たれた私がそのままであれば、獣に食われるなど、体の熱を奪われるなどして、物言わぬ屍となっていただろう。
けれど、そうはならなかった。
偶然私と同じように山道を歩いていた男が、通りかかり、私を助けたのだ。
運び込まれた村でお世話になった私は、今度ばかりはと自分の力で村の力になる事にした。
しかしやはり、それはすべき事ではなかったのだ。
私の未来を見通す力を、村の繁栄や危機をしのぐために使おうと考えた者達は、一人や二人ではなかった。
村ぐるみで監禁された私は、表面的には丁寧な扱いを受けたが、その実はひどいものだった。
2年、3年と経つ頃はまだ、その村から脱出しようと考えていた。
しかし、5年、6年が経つ頃には身動きがとれなくなっていた。
私の周りに集まるたくさんの子供達。
様々な能力を持ったその子供達を放っておいて、自分だけ自由になるなどできるはずもない。
私と同じ名前をつけた我が子は、きちんと生きていけるだろうか。
私以上に、未来を見通す力が強いのだから。
だから私は、それからもその村に幽閉され続けた。
そんな生活が長年続き、精神的な苦痛が、体を蝕んだのだろう。
私は、幽閉されてから十数年後に命を落とす。
二度と村の外に出られないままで。
故郷を追い出される前までとは言わない。
せめてもう一度、自由に旅をしていた頃のように、外を歩きたかった。