表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/89

第八話:死者の見る夢

 暗闇の中に、青白い光が揺らめいていた。


 どこか懐かしく、どこか遠い記憶のような——そんな光景だった。


 セリオは、夢を見ているのだと気づいた。


 目の前に広がるのは、人間だった頃の世界。城壁都市の広場、石畳を踏みしめる音、人々の喧騒。そして、騎士として剣を振るっていた自分の姿がそこにあった。


 ——ああ、これは生前の記憶だ。


 そう理解すると同時に、夢の中の自分は剣を構え、目の前の敵を見据えていた。


 白い髪のエルフの少女——リゼリアだった。


 彼女は、敵だった。


 魔族の勢力に加担し、死霊を操る危険なネクロマンサー。王国の命令で討伐対象となった存在。


 セリオは、剣を振るった。


 その感触も、手応えも、今さら忘れるはずもない。


 リゼリアは微かな笑みを浮かべながら、血に染まった自らの身体を見下ろしていた。


「やっぱり……お前は強いのね」


 その言葉を最後に、彼女は崩れるように倒れた。


 セリオはその場を立ち去った——はずだった。


 だが、夢の中の視点は変わらず、リゼリアの身体を見下ろしている。


 ——違う。


 これは、自分の記憶ではない。


 それに気づいた瞬間、リゼリアの亡骸が、ゆっくりと動いた。


 身体を起こし、淡く光る魔法陣に手をかざす。


「……お前を、私は手放さない」


 か細くも、強い決意に満ちた声。


 その瞬間、セリオの意識は急激に引き戻され、夢は終わった。


 目を開くと、天井が見えた。


 寝台の上に横たわったまま、セリオはゆっくりと起き上がる。


「……今のは」


 己の記憶ではない。リゼリアの記憶——いや、彼女が見せたものか。


 静かな部屋の片隅で、リゼリアが椅子に座っていた。


「おはよう、セリオ」


 微笑む彼女の顔を見ながら、セリオは一つ息をついた。


 この世界に蘇る前のことを、もっと知る必要がある。


 ——何故、リゼリアは俺を蘇らせ続けているのか?


 その答えを探すために、今はまだ、眠るわけにはいかない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ