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第四十話:夜明けの反撃

 魔族たちの悲鳴が闇夜に響き渡る。


 リゼリアの黒き魔力が炸裂し、敵の陣を吹き飛ばした。地面には無数の骸骨の手がうごめき、逃げようとする魔族たちの足を掴み取る。


「な、何だこの魔術は……!」

「くそっ、エルミナ様の情報と違う! こんな大規模な防御魔術が施されているなんて……!」


 リゼリアの結界と召喚したガーゴイルたちの猛攻により、敵の隊列は崩壊しつつあった。


 ——だが、それでも戦意を失わない者がいた。


「愚かな……! 貴様らの抵抗など無意味だ!!」


 燃え盛る畑の向こう側から、漆黒の甲冑をまとった巨大な影が現れる。


「融合体……!」


 セリオは目を細めた。

 現れたのは、人間と魔族の融合によって生み出された存在。エルミナが実験的に作り出した戦士だ。もとは人間の騎士だったのだろう。だが、その顔は半ば獣のように歪み、爪は鋭く変異している。


「お前たちに選択肢はない……降伏するか、死ぬかだ……!」


 融合体の魔族は大剣を振り上げ、セリオへと突撃する。


「……降伏するつもりはないな」


 セリオは静かに剣を構えた。

 融合体の大剣がセリオを叩き斬らんと振り下ろされる。


 ——しかし、その刃が届くことはなかった。


「っ……何!?」


 融合体の足元から黒い鎖が絡みつき、動きを封じる。


「お前たち、いい加減気づきなさい」


 屋根の上からリゼリアが冷たく告げる。


「ここはセリオの館。私の支配する領域なのよ。お前たちの好きにはさせないわ」


 融合体の魔族が必死にもがくが、リゼリアの呪縛を破ることはできない。


「——終わりだ」


 セリオが一閃。


 銀色の剣が煌めき、融合体の首を刎ねる。


「ぐ、が……」


 融合体は最後に苦悶のうめきを漏らし、その場に崩れ落ちた。

 敵の総大将とも言うべき存在が倒れたことで、残りの魔族たちは完全に戦意を喪失した。


「くそっ……撤退だ!」

「エルミナ様に報告を……!」


 魔族たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


 戦いは終わった。


 館の周囲には敵の死体が散乱し、焦げた畑からはまだ煙が立ち上っている。


「……間に合ったな」


 セリオは剣を収め、息を整えた。


「セリオ、大丈夫?」


 リゼリアが屋根から降りてくる。彼女の顔には安堵と……少しの怒りが滲んでいた。


「私との約束は守った? 無茶はしないって……」

「……守ったつもりだが」

「嘘つき」


 リゼリアはセリオの腕を引き、傷口を確かめる。大したものではなかったが、やはり小さな切り傷がいくつかあった。


「治療が必要ね」

「この程度なら大丈夫だ」

「いいえ、ダメよ。私はお前がまた死ぬのを見たくないの」


 リゼリアの真剣な眼差しに、セリオは少しだけ目を逸らした。


 ——戦いは終わった。だが、まだこれは序章に過ぎない。


 エルミナの思惑は潰えたわけではなく、彼女は必ず次の手を打ってくるだろう。

 そして、今の戦いを見た周囲の魔族たちは確信した。


 ——この館に住むアンデッドの勇者は、単なる亡霊ではない。


 新たな魔王候補となる資格を持つ者なのだと。

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