第二十三話:露天風呂を作る
「浴槽を小さくするのはいいとして……せっかくだから外風呂を作らない?」
リゼリアがそう提案したのは、館の浴室の改装を進める最中だった。
「外風呂?」
「ええ。この館には広い庭があるし、温泉を引けば気持ちのいい露天風呂になるわ」
「……なるほど」
セリオは考え込んだ。
確かに、浴槽を小さくして空いた魔力を利用すれば、庭に温泉を作ることは可能だろう。
風呂が広すぎることには困っていたが、庭で湯に浸かるのは悪くない。
「それで、どんな風呂を想定している?」
「そうね……岩風呂みたいな感じかしら?」
リゼリアは指先をひらりと動かし、庭の一角に湯気の立つ岩風呂の幻影を作り出す。
幻想の温泉には、大きな岩が配置され、木々に囲まれた魔界風の露天風呂が映し出された。
「雰囲気はいいな」
「でしょ? それに、どうせ作るなら近隣の魔族にも開放するのはどうかしら?」
「……なんだと?」
「この館の周囲には、最近住み着いた魔族がいるでしょう? 彼らにも自由に入浴させてあげたら、関係が良くなるかもしれないわよ?」
「……あまり落ち着かない気がするが」
セリオは思わず苦笑した。
ただでさえ最近、館の周囲に魔族の集落ができつつある。
そこに住む植物系の魔族たちは、畑仕事を手伝う程度には友好的だが……
風呂まで共有するとなると、また違う問題が生じそうだ。
「でもまあ……近隣の魔族との関係を深めるのは悪くない」
「決まりね!」
リゼリアは楽しげに微笑み、さっそく露天風呂の建築に取りかかることになった。
※
数日後——
「……おい、リゼリア。少し開放的すぎないか?」
完成した露天風呂を目の前にし、セリオは眉をひそめた。
そこには黒曜石の岩で囲まれた広い浴槽があり、温泉の湯気がゆらゆらと立ち昇っている。
しかも、周囲には大きな木々が茂り、自然の景観と一体化したような風情のある風呂に仕上がっていた。
問題は——
「想像していたよりも……広すぎるな」
「貴族の館なんだから、これくらい豪華でもいいでしょう?」
リゼリアは満足げに頷く。
「それに、この方がみんなで入れるでしょ?」
「……みんな?」
嫌な予感がした。
——そしてその予感は的中する。
完成した露天風呂には、館の周囲に住み着いた魔族たちが次々と入浴しに来るようになったのだ。
植物系の魔族が気持ちよさそうに湯に浸かり、
時折、小さな魔族の子どもたちが水を跳ねさせながら遊んでいる。
「……まるで共同浴場だな」
セリオはため息をつきながらも、静かに湯に浸かった。
確かに少し騒がしいが、温泉自体は快適だった。
リゼリアはそんな様子を見ながら、満足げに微笑んだ。
こうして館の新たな設備「露天風呂」が完成し、近隣の魔族たちに解放されることになったのだった——。




