第二十一話:魔界流・料理の極意?
畑での収穫を終えたセリオは、館へと戻ってきた。
籠の中には、先ほどの魔界ナス(仮)や、赤黒いトウモロコシのようなもの、発光するキノコなど、見たこともない作物が入っている。
「さて、これをどう調理するか……」
セリオは館の厨房へ向かった。
もともとここは貴族の住んでいた館だけあって、広々とした空間に、魔法で動く調理器具なども備えられている。
しかし、魔界の食材の調理法はよく分からない。
「……適当に火を通してみるか」
セリオは魔界ナスをまな板に乗せ、包丁を手に取った。
だが——
ブンッ!
「またか」
さっき収穫した時と同じように、ナスが暴れ出す。
セリオはため息をつきながら、ナスのツルを押さえつけた。
(収穫した後も動くのか……面倒なやつだな)
試しに魔力を少し流し込んでみると、ナスはピクリと震えたあと、大人しくなった。
「……なるほど、魔力を込めると沈静化するのか」
納得しつつ包丁を入れると、今度はスムーズに切ることができた。
「ふふ……悪戦苦闘しているわね」
突然、背後から声がかかった。
振り返ると、リゼリアが転移門を使って館へ戻ってきたところだった。
彼女はセリオの手元を見て、小さく笑っている。
「お前が料理とは、珍しいことをしているのね」
「ここに住む以上、自分で食事を用意するのは当然だろう」
「……そうね」
リゼリアは近づくと、まな板の上の魔界ナスを一瞥し、小さく首をかしげた。
「でも、それを普通の料理の仕方で食べられると思っているの?」
「どういう意味だ?」
リゼリアは魔界ナスの切れ端を指で摘み、魔力を込めるように撫でた。
すると——
パチッ……パチッ……!
切れ端から細かい火花が散る。
「これはね、魔力を持つ食材だから、普通に加熱すると爆発するのよ」
「……爆発?」
「ええ。火を入れる前に、一度魔力を完全に抜く必要があるわ」
リゼリアは手際よく、ナスの切れ端を魔力で包み込むと、余分な魔力を吸い取るようにしていく。
すると、火花が収まり、普通の野菜のようになった。
「これで大丈夫。さあ、もう一度やってみなさい」
「……お前、本当に何でも知ってるな」
「当然よ。魔界で生きるための知識は、ちゃんと身につけておくべきだわ」
リゼリアに指導されながら、セリオは魔界の食材の扱い方を学んでいった。
人間界の料理とはまるで勝手が違うが、少しずつコツが分かってくる。
しばらくして、ようやく食材の下処理を終えた二人は、ナスを使った料理を作り上げた。
シンプルに焼き上げた魔界ナスは、見た目は普通のナス料理に近い。
セリオが一口食べると——
「……意外と、普通にうまいな」
「でしょう? 魔界の食材は、正しく調理すれば絶品なのよ」
リゼリアは誇らしげに微笑んだ。
こうして、セリオの魔界式スローライフに、新たなスキル——魔界料理が加わることになったのだった。




