表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/89

第三話:館の周囲の新たな住人

 セリオは館の塀を越え、静かに森の中へと足を踏み入れた。空気がわずかに湿っていて、ほのかに植物の香りが漂っている。足元には柔らかい苔が広がり、以前よりも森の生命力が増しているように感じられた。


 だが、それ以上に気になるのは、周囲に満ちる魔力の波動だった。館から放たれた魔力に惹かれ、何者かが集まってきている。


(リゼリアの言った通りか……)


 しばらく進むと、木々の間に奇妙な変化が見られるようになった。枝や葉が絡み合い、まるで生きているかのように揺れている。その奥から、かすかに複数の気配を感じた。

 セリオは慎重に歩みを進めた。

 やがて、小さな開けた空間にたどり着く。そこには数体の魔族がいた。

 彼らは人の形をしていたが、肌は樹皮のようで、ところどころに花や葉が生えている。髪の代わりに蔦が垂れ下がり、目は深い翠色に輝いていた。


 セリオが現れると、魔族たちは一斉に彼を見つめる。敵意は感じられないが、警戒心がうかがえた。


「……ここに住みつくつもりか?」


 低い声で問いかけると、一体の魔族がゆっくりと前に出た。


「この土地は、心地よい」


 ざらついた声が返ってくる。


「私たちは争いを望まない。ただ、ここで根を張り、共に生きたい」


 セリオは魔族の様子を観察した。彼らの姿には攻撃的な意図は感じられない。むしろ、周囲の環境と調和するように存在している。


「……好きにしろ。ただし、俺の館には勝手に入るな」

「わかった」


 魔族は静かに頷いた。


 ひとまず、この森の新たな住人が敵でないことは確認できた。セリオは背を向け、館へ戻ろうとする——その時だった。


 不意に、遠くから鋭い魔力の波動を感じた。


(……何かが近づいてくる)


 先ほどまでの魔族たちとは明らかに異なる、荒々しく殺気を孕んだ気配。セリオは顔を上げ、そちらへ向かうことを決めた。


「……面倒なことになりそうだな」


呟くと、足早に森の奥へと進み始めた——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ