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第三十一話:死者の支配者

 エルミナとの戦いが終わり、セリオは静かに剣を収めた。周囲には魔力の余韻がまだ漂い、大地には彼女の攻撃による爪痕が生々しく残っている。

 しかし、彼はそれを気にすることなく、ゆっくりと夜の空を見上げた。


(俺が、魔王の座にふさわしいか……)


 エルミナはそう言ったが、セリオ自身はそのつもりはない。むしろ、彼は魔族の世界の覇権争いに関わるつもりなどなかった。


 ——だが、それを許さない者たちもいる。


「お前、また厄介ごとを背負い込んだようね」


 くぐもった声とともに、紫色の魔法陣が地面に浮かび上がる。その中心に現れたのは、リゼリアだった。

 アルビノのエルフ特有の白い髪が夜の闇に映え、紅い瞳がセリオを鋭く見つめる。


「エルミナと戦ったときに何を言われたの?」


 セリオは彼女の問いに少し考え、正直に答えた。


「"俺が魔王にふさわしいかどうか見極める"と言われたよ」

「……ふふん、あの女らしいわね」


 リゼリアは腕を組み、どこか楽しそうに微笑んだ。


「で? どうするの、お前?」

「どうもしないさ。俺は……ただ静かに生きたいだけだ」

「そう? でも、エルミナはそれを許さないわよ。あの女は、"この魔界の未来"をお前に託すつもりでいるんだから」


 リゼリアの声には、わずかに苛立ちが混じっていた。


「……俺にそこまでの価値があるとは思えない」

「あるわよ。少なくとも、私はお前を選んだ」


 リゼリアは一歩近づき、セリオを真っ直ぐに見上げる。その瞳には揺るぎない意志が宿っていた。


「私はお前を何度も蘇らせた。でも、そのたびにお前は"人間としての記憶"しか持たずに目覚める……それが何を意味するのか、考えたことはある?」


 セリオは答えられなかった。


「お前の魂は"死"を拒んでいる。でも、それと同時に"生"を受け入れることもできていない。だから、お前は何度も記憶を失って蘇る」

「……俺は、ただ……」

「——お前は、まだ"死んでいない"のよ、セリオ」


 リゼリアの声は静かだった。しかし、その言葉には確かな真実が宿っていた。

 セリオは、自分の手を見つめた。生前のような温もりはない。アンデッドとして蘇った今の自分には、鼓動もなければ血の流れも感じられない。


 ——それでも、自分は"存在"している。


「……俺は、一体何なんだ?」

「それを知るために、私はお前を蘇らせたの」


 リゼリアはふっと微笑むと、ゆっくりと背を向けた。


「お前の答えが出るまで、私は待つわ。でも、その間に"魔界"の方が待ってくれるかしらね?」


 彼女の言葉には、微かな警告の響きがあった。

 リゼリアは思い出したように立ち止まり、セリオを振り返る。


「……さ、屋敷に戻りましょう。今のままではお前も暮らしにくいでしょう? リフォームの続きをしなければ……」


 リゼリアに促されるまま、セリオは館に戻る。

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