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第二十九話:試される者

 エルミナ・ヴァルグリムは門の前に立ったまま、静かにセリオを見つめていた。

 その真紅の瞳は、彼を値踏みするように鋭く輝いている。


「セリオ・グラディオン。五度も蘇ったあなたが、どれほどの存在なのか……見極めさせてもらうわ」


 彼女の声は柔らかだったが、その奥には揺るぎない意志が感じられた。

 セリオは小さくため息をつき、リゼリアの方をちらりと見やる。


「……リゼリア、お前はこのことを知っていたのか?」

「ええ、もちろん。エルミナはずっとお前に興味を持っていたもの」


 リゼリアは淡々とした口調で答えたが、その表情には微かに苛立ちが浮かんでいた。


「でも、お前に見極められる筋合いはないわ。セリオはお前のものじゃない」

「ふふっ、まるで私が彼を奪いに来たみたいな言い方ね」


 エルミナはくすくすと笑い、優雅に髪をかき上げる。


「安心して、リゼリア。私はただ、次の魔王に相応しいかどうかを確かめたいだけよ」


 その言葉に、セリオは少しだけ眉をひそめた。


「次の魔王?」

「ええ。今の魔王は長くはもたない。いずれ新たな王が必要になる。その候補の一人が、あなたというわけ」

「……俺は魔王になるつもりはないんだが」

「本当にそうかしら?」


 エルミナは挑むような目を向ける。


「あなたは騎士だった。そして今はアンデッド。だというのに、未だに剣を振るう。あなたが本当に望むものは、静かな余生なのかしら?」


 セリオは言葉に詰まる。

 確かに、彼はもう死んでいる。生前の使命も、人としての人生も終わったはずだ。

 だが、それでも彼は剣を手放さなかった。


「……俺はただ、自分を失いたくないだけだ」

「それがあなたの本心なら、それを証明してみせて?」


 エルミナは微笑みながら、一歩前へ進み出る。

 次の瞬間、彼女の足元から漆黒の魔力が噴き出した。


「試してあげるわ、セリオ・グラディオン。あなたが本当に『ただの亡霊』なのか、それとも——魔王に相応しい力を持つ者なのかを」


 空気が張り詰める。


 リゼリアがセリオの袖を引いた。


「セリオ、どうするの? お前は戦うつもり?」


 セリオは一度だけリゼリアを見やると、小さく息を吐いた。


「……どうやら、戦うしかなさそうだな」


 ゆっくりと剣を抜く。


 魔界の暗い森の奥に、静かな風が吹いた。


 次の瞬間、戦いが始まる——。

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