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第二十二話:封印の扉

 ゴゴゴゴ……ッ!


 地下室全体が震え、天井の燭台がガタガタと揺れる。魔力の奔流が空気を満たし、壁に刻まれた魔法陣が淡い光を放っていた。


 セリオは剣を抜き、目の前にそびえる巨大な扉を睨む。漆黒の石でできたその扉は、まるで呼吸するかのようにわずかに脈動していた。


「……ただの地下室じゃなかったみたいね」


 リゼリアが眉をひそめながら、扉に手をかざした。魔法の波動を探るように目を閉じ、しばらくの沈黙の後、静かに呟く。


「……これは、かなり古い封印魔法ね。おそらく魔界がまだ統一される前の時代……数千年前のものかしら」

「数千年前、だと?」


 セリオは驚きの声を漏らす。そんなに昔から封印されていたものが、この館の地下に眠っていたというのか。


「ええ……それに、この封印、完全には機能していないみたい」


 リゼリアが扉の表面を指でなぞると、触れた部分が淡く光る。そして、その光は次第に弱まり、やがて完全に消えた。


「……崩壊しかけているのか?」

「そうね。このまま放置していたら、いずれ扉が開いてしまうわ」


 リゼリアが顔に手を当てて考え込む。セリオは剣を握る手に力を込め、改めて扉を見上げた。


「……この先に何が封じられている?」

「それが問題なのよね。魔力の波動だけで言えば、かなり強力な何か……でも、はっきりとは分からないの」


 リゼリアの声には珍しく困惑の色が混じっていた。彼女ほどのネクロマンサーでも正体を見極められないということは、ただの魔道具や生物ではないのだろう。


「……いずれにせよ、このままでは危険だ。扉を開けて確かめるしかないな」


 セリオがそう言うと、リゼリアはわずかに目を細めた。


「本気なの?」

「ああ。封印が完全に解けてからじゃ遅い。今のうちに何があるのか確認して、対処できるならしておいたほうがいい」


 リゼリアはため息をつくと、呆れたように肩をすくめた。


「……お前って、本当にこういうのを放っておけない性格なのね」

「騎士だった頃の癖が抜けないだけだ」


 セリオが淡々と答えると、リゼリアは苦笑した。


「分かったわ。じゃあ、一緒に開けましょう。二人なら、何とかなるでしょうし」


 そう言ってリゼリアは魔力を集め、扉に手をかざした。セリオも剣を構え、扉が開かれる瞬間に備える。


 ゴゴゴ……ガコンッ!


 重厚な音とともに、封印の扉がゆっくりと開き始めた。


 ——そして、その向こうに広がる光景に、二人は息を呑んだ。


 暗闇の中にうごめく影、無数の魔法陣、そして異様なほどの魔力の渦。そこに何が眠っているのか、まだ誰にも分からなかった。

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