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第二十一話:目覚める力

 地下室の扉がきしむ音を立てながら開いた。セリオとリゼリアが慎重に足を踏み入れると、そこは広々とした空間になっていた。石造りの壁には古びた燭台が並び、長い年月を経てなお、その威厳を保っている。


「これは……随分と手の込んだ造りね」


 リゼリアが壁の魔法刻印を撫でながら言った。


「貴族の館にしては、地下がやけに大きいな。まるで……」


 セリオが言いかけたその時だった。


 ゴゴゴゴ……ッ!


 突如、地下室の奥から強烈な魔力の波動が放たれた。空気が震え、壁に刻まれた魔法文字が淡く輝き始める。


「何だ、これは……っ!」


 セリオが思わず身構える。まるで生き物のようにうねる魔力が空間全体を包み込み、黒い霧となって天井へと昇っていく。


「……封印が解けたのかしら」


 リゼリアは眉をひそめながら、地下の奥に目を向ける。そこには、一対の巨大な扉があった。


「何かが……眠っていた?」

「ええ。そして今、目覚めかけているみたい」


 リゼリアが慎重に歩みを進める。セリオもそれに続くが、近づくにつれて足元が重くなっていくのを感じた。


「……普通の魔力じゃないな」

「ここに封じられていたのは、ただの魔道具や遺物じゃなさそうね」


 リゼリアがそう言った瞬間——


 ズンッ!!


 圧倒的な魔力の奔流が解き放たれ、地下全体が光に包まれた。


          ※


 ——魔王城・エルミナの間。


「……ッ!?」


 魔王城の玉座に座っていたエルミナが、突然顔を上げた。


 彼女の紅い瞳が揺らぎ、周囲の空気がぴりつく。まるで何かが覚醒したかのような、異様な波動が魔界全土に広がっていた。


「……今のは、何?」


 彼女は玉座から立ち上がり、ヴァルゼオに視線を向ける。


「フン……俺も感じた。随分と濃い魔力だったな」


 壁にもたれかかっていたヴァルゼオが薄く笑う。その目には、わずかに興味の色が浮かんでいた。


「この距離でも感じるほどの魔力……」


 エルミナは玉座の前に進み、宙に魔法陣を描く。黒紫の光が揺れ、魔界の地図が浮かび上がった。そして、ある地点が強く光を放っているのを確認する。


「……魔界の辺境、あの古い館……」


 エルミナの表情が険しくなる。


「あの館に、これほどの魔力を秘めたものが眠っていたとはね……」


 ヴァルゼオが口元を歪めた。


「滅びた魔族の館など、普通の魔族は見向きもしない。となると……」

「セリオの仕業、ということかしら」

「面白くなってきたな。セリオのやつ、また何か厄介なものを掘り起こしたんじゃねえのか?」

「可能性は高いわね……」


 エルミナは鋭い瞳で魔力の波動を探りながら、次の手を考える。


「……放ってはおけない。何が目覚めたのか、確かめに行くわよ」


 彼女の命令が下り、魔王城の影が静かに蠢き始めた。

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