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第二十話:地下室の亡霊

 闇に包まれた穴の奥から、異形の影が這い出してきた。


「グォォォ……!」


 呻き声とともに姿を現したのは、半ば朽ちかけた魔族の亡霊だった。骨と皮だけになった腕をゆっくりと持ち上げ、黒い瘴気を纏わせる。


「……また厄介な相手だな」


 セリオは剣を構え、相手の動きを探る。


「この館の元の主かしらね」


 リゼリアは冷静に観察しながら、亡霊の特徴を分析する。魔力の濃度からして、相当な年月をこの場所に留まり続けていたようだ。


「成仏させる気はあるのか?」

「そのつもりだけれど……普通の浄化魔法は効かないわよ」

「なら、斬るしかないな」


 セリオは地面を蹴り、一気に間合いを詰める。亡霊が黒い腕を振り上げると、瘴気の刃が形成され、セリオに向かって振り下ろされた。


「チッ……!」


 セリオは剣を横に振り、瘴気の刃を弾く。しかし、完全に防ぎきれるものではなく、周囲の空気が歪み、館の床が焦げていく。


「やれやれ、ずいぶんと執念深いわね」


 リゼリアが杖を掲げ、紫色の魔法陣を展開する。すると、館の壁に刻まれた古い魔術文字が淡く光り始めた。


「これは……?」

「おそらく、館そのものに施された結界ね。この亡霊は、この館に縛られているのかもしれないわ」


「なら、結界を利用すれば……」


セリオは瞬時に判断し、リゼリアに合図を送る。


「やってみるか」

「任せなさい」


 リゼリアが結界の魔力を操ると、館全体が淡い紫色の光に包まれる。亡霊の動きが鈍くなり、その身体が霧のように揺らめいた。


「今よ、セリオ!」


 セリオはその隙を突き、一閃。蒼白い光を纏った剣が亡霊を両断した。


「グォォ……!」


 悲痛な叫びとともに、亡霊の身体は霧散し、館の中は再び静寂に包まれた。


「……ふう。片付いたか」


 剣を収め、セリオは安堵の息をつく。


「ええ、これでようやくリフォームの続きを進められるわね」


 リゼリアは淡々と言いながら、指を鳴らす。結界の魔力が収まり、館の歪んだ空気も少し落ち着いたようだった。


「ところで、この亡霊の元の持ち主だった魔族……何か残してないか?」


 セリオは地下室を覗き込みながら問いかける。


「そうね。もしかしたら、何か役に立つものがあるかもしれないわ」


 二人は慎重に階段を降り、今まで封じられていた地下室の探索を始めた。そこには、思いがけない発見が待っていた——。

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