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第十話:選ぶべき道

 セリオは、沈黙の中で考えていた。


 自分は何者なのか——人間だった騎士なのか、それとも今のゴーストとしての自分なのか。


 リゼリアの言葉が脳裏に響く。


 「お前の魂は、まだ“人間”としての自分に執着している」


 確かに、そうなのかもしれない。


 目の前にいるリゼリアが何度も自分を蘇らせたことも、その度に記憶が失われていることも、すべてが事実だ。


 ならば、今の自分は本当に“セリオ・グラディオン”なのだろうか?


「……俺は」


 口を開きかけたその瞬間、扉が激しく叩かれた。


「リゼリア様!」


 若い魔族の兵士が駆け込んできた。息を切らしながら、慌ただしく続ける。


「外で人間の軍が動いています! 先遣隊かもしれません!」

「……また?」


 リゼリアがため息をつく。


「どのあたり?」

「北東の山道です。偵察隊を送るべきかと」

「いいえ、まだ様子見でいいわ。数は?」

「十数名ほどですが、装備からして精鋭かと……」


 リゼリアは静かに目を閉じる。


「……セリオ、お前はどうするの?」

「どうする、とは?」

「人間の軍よ。お前の“元の仲間”かもしれないわね」


 その言葉に、セリオの心がざわめく。


 ——元の仲間。


 人間だった頃の自分が、共に戦った者たち。かつての同胞。


「……お前は、どうするつもりだ?」

「このまま静観するわ。余計な戦いは避けたいもの」


 リゼリアは淡々と答える。


「でも、彼らが先に攻撃してきたら、容赦はしないわ」


 当然の対応だった。


 魔界は人間にとって敵。向こうが攻めてくれば、迎え撃つしかない。


 セリオは、自分の胸の奥にあるわずかな迷いを振り払った。


「……俺も行こう」

「いいの?」

「ああ」


 人間としての過去に縋るつもりはない。


 自分が何者であろうと、今は魔界にいるのだ。


 そして、リゼリアが言ったように、ここが自分の“新しい生”になるのなら——


 戦うことで、その答えを見つけよう。


 セリオは静かに剣を手に取った。

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