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25 身勝手な供述

 

 目を覚ましたリリエラーデ様の話によれば、侍女長はリリエラーデ様が幼い頃から仕えてきた侍女だったそうだ。だからこそ疑問が尽きない。リリエラーデ様は誰かの恨みを買うような人物には思えないから。

 言い逃れはできないと悟ったのか侍女長の態度は一変し、その顔は酷薄な笑みに歪んだ。


「ふふ、小麦が食べられないですって?そんな我が儘、それが通る身分があったから許されたのよ。私の娘は食べるものも満足にとれず死んだっていうのに!」

「それがリリエラーデ様と何の関係があるのです?」

「関係ですって?ああ、あなた様も高貴な身分でらっしゃるから、贅沢三昧で苦労など知らず、我々の言う言葉などわからないのでしょうね。娘は……娘が飢えでどんなに苦しんだか。可哀想に。最期はあんなに痩せて……」

「あなたの娘はアルミ領内で亡くなったのですか?」

「違う、嫁ぎ先よ、他領の。何?関係無いとでも言うの?リリエラーデ様はこの国の妃よ。下々の者が苦しまないよう、暮らしを保証するのが上に立つ者の義務でしょう。それを、いくつになっても好き嫌いのひとつも直さないで」


 何となく侍女長の言いたいことはわかった。なんとも身勝手で呆れてものも言えない。逆恨みにもほどがある。

 しかし、となると新たな疑問が一つ生まれた。


「あなたは、リリエラーデ様の食べられないものが、ただの好き嫌いでなく死の危険があることを知っていたはずだ。小麦でできた菓子を食べさせて殺そうとしたのだから」

「……殺そうだなんて、別に毒でもないのに。ただのお菓子をちょっと食べただけで、まさかそこまでとは……」

「ならその吸い飲みに入れた毒は?まさかご自分で事前に用意していたなどとは言わないでしょう?」

「……」

「誰に渡されたのですか」


 リリエラーデ様を恨みに思うまでのその過程が、誰かに何かを吹き込まれた故のものかは知らないが、第三者からの殺害の依頼を受けたことは明白だ。

 初めは小麦を使った菓子を誤って食べてしまった事故として処理させるつもりだったに違いない。

 しかし即死するには至らず、これが事故ではないとすぐに気づかれてしまうものであったため、追い打ちをかけるように毒を盛らせようとした。その何者かの思惑が働いているのはわかる。

 侍女長は僕の質問には答えることなく、次の瞬間、近くの水差しを手に取ると壁にたたきつけ、割れて先の鋭くなった破片をリリエラーデ様に向かって振り下ろした。その動きに一切の迷いはなかった。


「ぎゃあっ!」


 彼女に近づいていた僕は凶刃がリリエラーデ様に届く前に、風を操る力で侍女長を吹き飛ばす。悲鳴とともに侍女長の身体は扉近くの壁に叩きつけられ、意識を失ったのかピクリとも動かなくなった。

 一連の大きな音に気付いた衛兵たちが部屋に駆け込んでくる前に、僕は窓から脱出した。

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