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24 犯人

 リリエラーデ様の眠る寝室には、彼女の世話をするための侍女が入室することを許されていた。

 今も水差しを手に持った侍女服の女性が、リリエラーデ様の眠りを妨げぬよう静かに部屋へと入ったところだった。

 寝台の脇にある小さな机に持ってきた水差しを置く。そして、水差しと一緒に持ってきていた吸い飲みに水を移し、中のものが溶けるように容器をゆっくりと回しよく攪拌してから、寝台に横たわるリリエラーデ様に飲ませるように口元へ近づけた。


「そうやって、今度は毒で確実に殺す気ですか」

「なっ!」


 自身とリリエラーデ様以外に人がいるとは思いもしなかったのだろう。

 女性はびくりと肩を震わせ、恐る恐るといった風にこちらに顔を向ける。その顔は青ざめ驚愕の色に染まっていた。

 僕は彼女が入ってくるまで、衣装棚の陰に身を潜めていたのである。


「すぐ死ぬものと思っていましたか?だとしたら気が気ではなかったでしょうね、侍女長」

「で、殿下がどうしてこちらに……いえ、なんのことでしょうか?殺すなどと……」

「リリエラーデ様の意識が戻ってしまったら、すぐにバレてしまいますからね。あなたが毒見した際、故意に見過ごしたことがあったと」

「何をおっしゃっているのか解りかねます」


 侍女長は幾分か冷静さを取り戻したのか、毅然とした態度でそう言い切った。僕は話をしながらも少しずつ侍女長との距離を詰めていった。


「リリエラーデ様は皆と同じものを食べて倒れた。ですがどこにも毒が入っているということは無かった」

「ええ、そうですとも」

「同じものを食べてはいけなかったのではありませんか?」

「……」


 沈黙は時に事実を雄弁に語る。侍女長がこの事件に何の関与もしていない、あるいは何も知らないのならこう答えるべきだ。


「それはどういう意味か、と訊かないのですね」

「ーーっ!」

「それはそうでしょうね。侍女長はリリエラーデ様に、毒見を任されるほど信頼されていた人物だ。当然どんな理由で毒見が為されていたのかも、知っていたことでしょう」


 侍女長は眉間に皺を寄せながらも、反論の言葉を口にすることはなかった。


「母上……正妃が持ち込んだ焼き菓子、リリエラーデ様が小麦を使った料理を食べてはいけないと、知っていた上で何故食べさせたのですか」

「……それをどこで」

「今朝、リリエラーデ様の意識が戻った時に、教えていただきました。今はただ処方された薬で眠っているだけです」

「そう、ですか」

「何故、リリエラーデ様を殺そうとしたのですか」


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